日本ヒューレット・パッカード(HP)は、データセンターの消費電力を抑える新製品・ソリューションとして、水冷システム「HP モジュラークーリング システム Generation2(HP MCS G2) 」、「HP BladeSystem c7000向け直流電源モジュール」、空調を管理する「HPダイナミック・スマート・クーリングソ リューション(HP DSC ソリューション) 」を発表した。システムの全体を捉える視点で、消費電力の低減化を包括的に進展させることを目指す。

今回の施策は温暖化防止など、地球環境に配慮した情報技術を目指す「グリーンIT」具現化の一環となる。

消費電力の低減化について同社の考える基本概念は、処理性能の維持と省電力の両立だ。たとえば、同社のサーバ製品「HP Proliant DL380 G5」の消費電力は256Wだが、他社には消費電力が108W程度の製品もある。同社エンタープライズ ストレージ サーバ事業統括 ISSビジネス本部 プロダクト・マーケティング部の山中伸吾氏は「1台対1台で比べれば他社製品の方が消費電力は低いが、当社の製品と同等の性能を求めようとすると、他社製品は4台必要になり、合計ではそちらの方が消費電力は高くなってしまう。ただ単に消費電力を抑制するだけでは十分とはいえない」と話す。

エンタープライズ ストレージ サーバ事業統括 ISSビジネス本部 プロダクト・マーケティング部の山中伸吾氏

サーバの消費電力の内訳をみるとプロセッサが30%、メモリが11%、HDDが6%など、「チップレベルで最適化できる部分」は全体の56%を占める。だが「その他」も44%もある。これらは、パワーサプライによる変換ロス、冷却ファンの効率性、電力供給ラインでの損失といった要因によるものであり、「システムレベルで最適化できる部分」だという。そこで、同社のグリーンIT戦略は低消費電力のCPU、メモリの搭載といった「チップレベル」に始まり、ブレード化、仮想化によるシステム統合、データセンターの冷房効率の向上までを視野に入れている。

「HP MCS G2」は、同社が2006年6月に発表した水冷ラック「HP MCS」の後継機種と位置づけられ、冷却能力が従来の30kwから35kwに増強されるとともに、1ユニットで最大2台の42Uラックを冷却することができる。これにより、最大70台のラックマウント型サーバ、あるいはサーバをフル搭載した「HP BladeSystem c-Class」エンクロージャ6台を冷却することが可能だ。冷機冷気を水平方向に均等に放出することで、ラックの上部に熱が滞留することを防いでいる。また、水冷ユニットとラックは完全に別々の筐体に分けられており、水漏れの心配はないという。

消費電力の合計が3,600kwのサーバをデータセンターに収容した場合を同社が米国で試算したところ、従来型では720ラックが必要で、1平方フィート当たりの建築費は1,500ドル、必要な面積は1万800平方フィートで、建築費合計額は1,620万ドルであった。これに対し水冷ラックを導入すると、同じく120ラック、2,490ドル、3,000平方フィート、747万ドルになる。1平方フィート当たりの建築費こそ高くなるが、ラック数と設置面積を大幅に削減できるため、合計額は低く抑えられる。

「HP BladeSystem c7000向け直流電源モジュール」では、「HP BladeSystem c7000」を直流電源で利用可能にする電源モジュールと、同モジュールに対応するパワーサプライを発売する。電力会社から供給される電力は交流であり、一般的なシステムは交流電源で動作する。だがCPUなどは直流が必要で、従来の方式では交流を一旦直流に変換、さらに無停電電源装置などのため交流電源に変換、最終的にサーバ内で交流を直流に変えていたという。そのため、データセンターに直流電源の設備が存在する場合は、直流電源DC-48Vを直接利用することで変換箇所を削減でき、ロス部分がなくなり消費電力を抑えることができる。

製品名 標準小売価格
HP モジュラー クーリング システム Generation 2 336万円から
HP BladeSystem c7000 DCパワーモジュール 11万5,500円から
HP BladeSystem c7000 DCパワーサプライ 23万1,000円から