本来、情報は主観的で、身体的なもの
――サグールは他の検索エンジンとどこが違うのでしょうか?
グーグルなどの検索エンジンは、ページのランキングそのものです。サグールでは、キーワードに対して、よりインタレストなものを表示するようにアルゴリズムを開発しました。
つまり、グーグルなど他の検索エンジンは、そのキーワードを全く知らない人が検索するのに適していますが、サグールは、そのキーワードをある程度知っている人が、より詳しい、深い情報を知りたい、という場合に適しているのです。
――冒頭でおっしゃっていた、「本来、情報は主観的で、身体的なもの」という考えとつながっていますね。
あるキーワードを全く知らない人は他の検索エンジン、もっと深く知りたい人はサグール、といった具合に共存できたらと思っています。
試しに、(取材者の名前である)「石田哲也」を検索してみましょうか。まず、グーグルで検索してみましょう。
(同姓同名が多いのでいろんな「石田哲也」の情報が出てきた)
今度はサグールで検索してみましょう。あ、ありますね。「マイコミジャーナル」で書いた記事じゃないですか。石田哲也のキーワードで出てくる情報の中で、最も面白いのがこの記事なんじゃないですか。2番目もそうですね。すごいじゃないですか。
正確に言うと、他にももっと面白い石田哲也はいるかもしれません。ですが、ネット上では、この記事を書いた石田哲也が一番面白いと、サグールのアルゴリズムが判断したんじゃないでしょうか。
仲間と楽しい人生、自分は単純にラッキー
(最後に、ネット業界を志す後輩たちへのメッセージを頂戴した)
今までいろいろ話してきましたが、俺のような生き方をしたら楽しいよ、というのがメッセージです。自分は単純にラッキーだったんだと思います。仲間とともに何か新しいもの、面白いものを作って、それが世の中に出て行って、いろいろな人に喜んでもらえる、そうした人生を選択できたからです。
それが結果として世界中の人が喜んでくれたり、世界に変革を起こすことができるのなら超エキサイティングな人生で、それが人生の目標になって単純に楽しい。これがメッセージです。
取材者の感想
元新聞社経済部記者として、数多くの経営者を取材してきたが、猪子氏には、インタビューを開始した当初からその型破りな雰囲気と態度に圧倒された。だが、話が進むにつれ、その雰囲気と態度には内実があり、その背景となっているのが、誰よりも仕事に情熱を傾けていることから来る自信だと分かってきた。
それはそうだろう。高校時代に受けた驚きと夢を、そのまま形にしようとずっと努力しているのだ。誰しも夢や希望は持つことはできるが、それを実現するためにどれだけのことをやっているのか、自らを振り返っても、自信はない。
インタビューの中で猪子氏が言った「こうあったらいいと思ったら、進むのが一番楽。何もしないなんてありえない」と語ったのは、恐らく真実だ。この情熱と信念こそ、猪子氏とチームラボの原点だと思う。
「新・電子立国で見た驚きをそのままに」というタイトルの背景にある猪子氏の燃えるような情熱を、記事を読んだ読者の方に少しでも感じていただけたら、幸いである。
猪子寿之(いのこ・としゆき) チームラボ株式会社 代表取締役社長
1977年、徳島市出身。2001年、東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。04年、東京大学大学院情報学環中退。大学では、確率・統計モデルを、大学院では、自然言語処理とアートを研究。ニュースポータル「iza! (イザ!)」(Web of the year 2006 新人賞、Web人 of the year 2006を受賞)、オモロ検索エンジン「sagool(sagool.jp)」、不動産物件検索ポータル「いえーい!(ie-ei.jp)」などのWebの企画開発や、検索エンジン、レコメンデーションエンジンなどの開発・販売を行う他、アート活動として、水墨空間「花紅(ハナハクレナイ)」などで、海外などの展覧会に多数参加。「au Design project」で、2007年のコンセプトモデルとして、新しいインタフェースの概念の携帯電話「actface」を発表し、「第11回文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品」に選ばれる。