つい先ほど終わってしまった2007年も、例年同様、さまざまな製品がリリースされた年でした。家電チャンネルでは、連日新製品をウォッチしています。昨年を振り返るという意味で、2007年に発表された新製品のなかから、印象に残った製品を、各メーカーの広報担当の方に伺ってみました。広報の方が印象に残った製品というのは、それだけ各メディアなどからの問い合わせが多かった注目製品ということになるはずです。また、筆者が個人的に印象に残った製品も取り上げてみたいと思います。

ビエラでリンクでホームエンターテインメントの新しい方向性 - 松下電器産業

松下電器産業は、家電総合メーカーですし、さらに多くのグループ企業も抱えています。それらすべてに問い合わせるわけにもいかないので、今回は、松下電器産業本体のパナソニックとナショナルのそれぞれの広報担当の方に伺ってみました。

ます、パナソニックですが、「今年のパナソニックのAV機器を象徴するという意味でいうのなら、『ビエラにリンク』ということになるでしょう」という回答でした。また、「HDMI連動は、すでに当たり前の機能です。ビエラにリンクは、VIERAやDIGAを中心にして、さまざまな機器がハイビジョンのままで連携するというものですが、昨年の4月に発表した『PZ700』シリーズからスタートし、こちらも、普及期に入ったといえるでしょう」とのことです。

少々わかりにくいのですが、ビエラリンクとビエラにリンクとは別もので、ビエラリンクはHDMI連動のみを指し、ビエラにリンクは、HDMI連動と、それ以外のSDメモリーカードやDVD、ネットワークなどを介して、デジタルカメラやムービー、ドアホンなどと連係する機能も含まれているということです。

続いてナショナルです。「エアコンの『Xシリーズ』でしょうか。どうしても、最近発表した製品の印象が強くなるのですが……」という回答です。Xシリーズは、10月9日に発表された最新モデル。今年のエアコンのトレンドは、部屋全体ではなく、人のいるエリアだけを検知して空調する機能でしょう(昨年までは、三菱電機の「霧ケ峰ムーブアイ」のみが搭載)。Xシリーズの搭載する「いるとこサーチ」は、人のいる場所と、その運動量を検知し、快適な体感温度をキープするというもので、季節による体感温度の変化にも対応します。もちろん、「いるとこサーチ」以外にも、自動掃除機能や、空気清浄機能などを搭載する、いわゆる全部入りエアコンです。

さて、筆者の印象に残った製品ですが、パナソニックもナショナルも実は全く同じでした。

「PZ700」シリーズから採用された「ビエラにリンク」は、HDMIのCECにとどまらず、SDメモリーカードやネットワークなどでもフルHDでつながる

人のいる場所だけでなく、動きの量も検出する「いるとこサーチ」を搭載。体感温度設定、カレンダーとも連動可能で、季節をとわず自動運転が可能な2008年モデル「Xシリーズ」

有機ELテレビで話題をさらった - ソニー

ソニーの広報担当の方の回答は、「有機ELテレビの『XEL-1』です。取材の件数も記事にするメディアも多く、普段はあまりこういった製品を取り上げることがない、一般誌やテレビなどでも幅広く取り上げられました」というはっきりしたものでした。また、「新製品といっても、既存のデバイスを組み合わせたうえで、新しい機能を追加するといったものが多いのですが、XEL-1は、今まで使ったことのないデバイスを使って、新しい製品を作るという、非常にソニーらしい製品だったと思います」とのことです。

有機ELテレビは、4月に行われた「Display 2007」で国内初公開されたのですが、その時、何よりも驚かされたのが、このモデルを年内に発売すると発表したことでした。会場はとんでもない人だかりで、撮影にも苦労したことを記憶しています。

ところが、筆者の一番印象に残った製品はXEL-1ではなく「NAS-M55HD/75HD/95HD」という、ネットジュークの新モデルでした。これは、DLNAのクライアントとサーバーの両方の機能を搭載しており、また、従来のネットジュークからのデータの移行も可能という、ネットジュークとしては、ある意味完成形ではないかと思わせる製品ですが、普通に考えれば、有機ELテレビの方がインパクトの強い製品だったといえるでしょう。

「Display 2007」に参考出品された有機ELテレビ。あり得ない薄さと鮮明な映像。そして有機ELというデバイスに注目が集まった

ある意味完成形とも思わせるネットジューク最新モデル「NAS-M95HD」

実力の高さに人気が追いついてきた? REGZA/VARDIA - 東芝

東芝も、デジタル機器と家電製品と、それぞれ担当の方に話を伺いました。まずは、AV機器ですが、「一機種にというと、難しいのですが、反響の大きさなどから、やはり、『VARDIA RD-A301』ということになるでしょう。発売日からまだそれほど日が経っていませんが、量販店などでの出足はかなり好調」とのことです。RD-A301は、HD DVDレコーダーですが、HD Rec機能の搭載により、唯一、片面1層のDVDメディアに2時間のフルハイビジョン録画が可能なモデルであるうえ、Wデジタルチューナー、DLNAサーバーなど、レコーダーとしての機能も充実した製品です。それでいて、10万円程度という、店頭での販売価格では、この年末の注目モデルとなっても不思議ではないでしょう。

続いて、家電製品です。「12月1日に発売された『リーチin』タイプの冷蔵庫が、冷蔵庫の新形態ということで一番印象的な製品でした。また、販売台数が多かったという点では、『真空圧力炊き』シリーズのIH保温釜『RC-10VSA』『RC-18VSA』」ということです。

リーチinは、冷蔵室の中に野菜室を組み込むというスタイルで、野菜室(室と言ってよいのかは不明ですが)のドアは透明で、冷蔵室のドアを開けると中が確認できる構造。さらに、冷蔵室と冷凍室とで別の冷却機を装備し、冷蔵室には冷凍室の霜取りの際に発生する水分をミックスした「保湿冷気」が行きわたり、高湿度がキープされるというものです。「真空圧力炊き」シリーズのIH保温釜は、炊いた米を試食して納得しました。

2006年の冷蔵庫が、棚の移動による使い勝手の向上といったように、一見地味なポイントを特徴にしている製品が多かった反動なのか、2007年に発表された冷蔵庫には、一つ突き抜けたような製品が多く見られるようです(リーチin以外にも、日立の真空チルドルームや、シャープの新・冷気流テクノロジーなど)。

さて、筆者の印象に残った製品は、AV機器では、REGZAのZ3500シリーズ、家電製品では、冷蔵庫や炊飯器ではなく、ドラム型洗濯機の「TW-2100VE」「TW-3000VE」でした。Z3500シリーズは、倍速10bitパネルと新映像エンジン「パワーメタブレイン」の搭載、ネットワーク対応の強化などを特徴としたフルHD液晶テレビです。H3000シリーズとは異なり、HDDは内蔵されていませんが、USBやネットワーク経由でHDDに録画が可能なので、実質的な使い勝手は向上しているといえるでしょう。担当者の方によると「1機種ということなのでRD-A301にしましたが、Z3500シリーズも、非常に印象に残った製品」とのことです。

「TW-3000VE」は、ヒートポンプに加え、2006年に発売された「TW-1700VD」が採用していた、衣類のしわを減らすハイブリッド乾燥も取り入れたモデルです。ランドリールームの冷暖房も可能というとんでもない洗濯乾燥機ですが、担当者の方にいわせると「前年モデルに冷房を搭載したときの方がインパクトは強かった」とのことです。

DVDにフルハイビジョンで2時間録画可能なHD DVDレコーダー「RD-A301」。高機能なわりに低価格。HD DVD普及の起爆剤になるか?

倍速10bitフルHD液晶を搭載し、ネットワーク上のドライブにも録画が可能な「レグザリンク」対応モデル「Z3500」シリーズ

ショーケースのように中が確認できる野菜室「リーチin」を装備した冷凍冷蔵庫「GR-X56FT」「GR-X53FT」

「真空αエンジンII」の搭載で、米の味を引き出す「RC-10VSA」

ヒートポンプ+ハイブリッド乾燥のドラム型洗濯乾燥機「TW-2100VE」。エアコン搭載の「TW-3000VE」もラインナップ