米AMDは15日(現地時間)、これまでコードネーム「RV670」と呼ばれていた新GPU「ATI Radeon HD 3800」シリーズを発表した。現行の「HD 2900」(R600)がベースとなっているミッドレンジGPUで、TSMCの55nmプロセスで製造。消費電力が大幅に削減されたほか、PCI Express 2.0、DirectX 10.1に新対応した。
「ATI Radeon HD 3800」シリーズは、GPUとしては初めて55nmプロセスを採用した製品となる。トランジスタ数は6億6,600万個と、現行ハイエンド製品の「HD 2900 XT」からほぼ横ばいながら、微細化により、ダイサイズは半分以下の192平方mmに削減、消費電力も大幅に低減された。同社によれば、HD 2900 XTの2倍のワット性能を実現したという。
同社は今年5月に、HD 2000シリーズのGPUとして2900 XT、2600 XT/PRO、2400 XT/PROのラインナップを発表しているが、「重要な150~250ドルの価格帯が抜け落ちてしまった」と米AMDプロダクトマーケティング・ディレクターのDavid Cummings氏。HD 3800はこの隙間を埋めるもので、「ハイエンドの性能をミッドレンジの価格で提供する」(同)という。
HD 3800シリーズの説明を行った米AMD デスクトップ・プロダクトマネジメント プロダクトマーケティング ディレクターのDavid Cummings氏 |
同社の新ラインナップ。上から、「エンスージアスト」「パフォーマンス」「メインストリーム」「バリュー」と4つにセグメント分けされる |
HD 3800シリーズのGPUとしては、「HD 3870」と「HD 3850」の2種類が用意される。搭載グラフィックカードの価格帯は、上位モデルのHD 3870(512MB)が219ドル、下位モデルのHD 3850(256MB)が179ドル。またHD 2900 XTに代わるハイエンド製品としては、デュアルGPU製品となる「HD 3870 X2」を来年1月に発表予定であることも明らかにされた。
このHD 3800シリーズのGPU名称について「?」と思った人もいるかもしれないが、日本AMDによれば、より分かりやすいように命名法を変えたという。これまでは、XTやPROといった記号が末尾についたが、これを廃止。数字のみでGPUの位置付けを表すようにした。なお現状では、末尾の「70」はXT相当、「50」はPRO相当だという。
アーキテクチャはHD 2000シリーズと同様の統合型シェーダを採用。ストリームプロセッサ数はHD 2900 XTと同じ320ユニットで、コアクロックはHD 3870が775MHz以上、HD 3850が670MHzとなる。メモリは、HD 3870がGDDR4 512MB、HD 3850がGDDR3 256MB。ただし、メモリバス幅はどちらも256bitに縮小されている。
新旧GPUの比較GPU | HD 3870 | HD 3850 | HD 2900 XT |
---|---|---|---|
ストリームプロセッサ | 320個 | ← | ← |
コアクロック | 775MHz以上 | 670MHz | 740MHz |
メモリバス幅 | 256bit | ← | 512bit |
メモリタイプ | GDDR4 | GDDR3 | ← |
メモリ容量 | 512MB | 256MB | 512MB |
メモリクロック | 2.25GHz | 1.66GHz | 1.65GHz |
製造プロセス | 55nm | ← | 80nm |
トランジスタ数 | 6億6600万個 | ← | 7億個 |
ダイサイズ | 192平方mm | ← | 408平方mm |
ボードの消費電力 | 105W以下 | 95W以下 | 215W以下 |
PCI Express | 2.0 | ← | 1.1 |
DirectX | 10.1 | ← | 10 |
UVD | ○ | ← | × |
ATI PowerPlay | ○ | ← | × |
ATI CrossFire | 最大4枚 | ← | 最大2枚 |
バスインタフェースがPCI Express 2.0に対応した点も特徴。同社からの正式発表はまだだが、すでに新チップセット「AMD 790FX」を搭載したマザーボードが一部メーカーから発売されており、これが2.0に対応している。HD 3850を使ったテストによると、PCI Express 1.1→2.0になることで、既存ソフトでもパフォーマンスは10%前後向上したという。
マルチGPU技術のCrossFireは最新の「CrossFireX」となり、最大4枚(4GPU)までの組み合わせが可能となった。オーバークロック機能の「ATI Overdrive」も、マルチGPUでの動作に対応。また、グラフィックカードを4枚利用して、最大8画面までのディスプレイ出力も可能だが、この場合はCrossFireを利用することはできない。
日本AMD・土居憲太郎氏によるフライトシミュレータの8画面デモ。「誰がこんな風に使うのか? とは聞かないでください」と同氏 |
グラフィックカードの4枚差し。デモ機ではHD 3850が使われていた。電源が気になるところだが、ここでは1,000Wのものが搭載されていた |
さらに、Windows VistaのSP1で提供される予定の「DirectX 10.1」にも対応したほか、ビデオ支援機能「UVD」(Unified Video Decoder)、省電力機能「ATI PowerPlay」といった機能も追加されている。搭載グラフィックカードは、ASUS、GIGABYTE、HIS、Info-Tek(GECUBE)、MSI、Sapphire、Tul(PowerColor)などのパートナー各社から発売される予定。