シーメンスとソフトバンクモバイルは1日、HSDPA方式に対応した組み込み用通信モジュール「HC28」の販売を開始したと発表した。シーメンスが開発・製造したモジュールをソフトバンクモバイル向けにカスタマイズしたもので、モジュールの販売はシーメンスが自社ブランドで行い、ソフトバンクモバイルは携帯電話ネットワークを提供する。
W-CDMA/HSDPA(850/1900/2100MHz)およびGSM/GPRS/EDGE(850/900/1800/1900MHz)に対応した通信モジュールで、各種業務用機器などに組み込むことで最大3.6Mbps(HSDPAを利用した場合の下り速度)の高速データ通信が可能。寸法は34×50×4.5mm、従量は約10gと小型軽量。
ソフトバンクモバイル取締役副社長 松本徹三氏 |
同日開催された製品発表会でソフトバンクモバイル取締役副社長の松本徹三氏は、通信モジュールの応用例として、業務車両の位置や車室内の温度などを遠隔で管理する「動態監視」と、電子マネー・クレジットカードなどの決済や、商品の在庫管理・発注などを移動端末で行う「汎用通信ユニット」を挙げ、当面はこれら2分野についてシーメンスのモジュールを使って注力していきたいと話す。
従来、このような通信モジュールは製造メーカーから携帯電話事業者が一括して仕入れ、それを組み込み機器メーカーに通信契約とセットで卸すというのが一般的な流通ルートだった。しかし今回の発表では、モジュールはシーメンスが組み込み機器メーカーに直接販売し、ソフトバンクモバイルは純粋にネットワークのみを提供する立場とされている。こういった事業モデルを選択した理由については、専門的な通信機器ベンダーであるシーメンスが機器メーカーに直接サポートを提供したほうが優れたソリューションが開発できるためとしている。松本氏は従来の事業モデルを指して「こういう(事業者がいったん買い上げる)ルートでやっていてはうまくいかない」と述べ、携帯電話は今後単に2点間を接続するという役割でなく、その先に控えるシステムと連携したソリューションの一部として機能するものとなるので、通信モジュールの分野では顧客にとって最高の開発・サポート体制を提供することが重要と強調した。
契約数の見込みや目標、料金体系などについては、どのような機器に組み込みどういった使い方をするかによって大きく変わるため、一概に言えないとして具体的な言及を避けた。また、今回シーメンスとの提携では動態監視と汎用通信ユニットに注力するが、ソフトバンクモバイルとしては通信モジュールを使用した携帯電話事業を「全方位で展開する。スキがあるところはどこへでも行く」(松本氏)としており、NTTドコモやKDDIが提供している通信モジュール内蔵ノートPCのような商品も、将来的には登場の可能性はあり得るとした。
シーメンス日本法人社長のペーター・ツァップ氏、Siemens AGオートメーション&ドライブグループ ワイヤレスモジュール事業部プレジデントのノーバート・ムーラ氏は、組み込み向けの通信モジュールでシーメンスは世界シェアトップであることをアピール。今回のモジュールは国際的な標準に沿ってグローバル向けに開発されたものであり、日本国内ではソフトバンクモバイルのネットワークを使用しながら、そのまま世界でシームレスに使えることが大きなメリットであると説明した。