「Transparent Cockpit」~東京大学大学院情報理工学舘研究室~ゼータ・ガン○ムの全方位ディスプレイコクピットの新しい形?

乗り物のコクピットの視界は、その操縦席から窓ガラスを通した視界に限定され、見えていない部分の情報は、操縦経験やその他のセンサーからの情報などを元にして操縦者の脳内処理で機体感覚を補っている。とはいえ、視覚情報が多ければ多いほど正確な機体操縦ができるわけで、その目的のために操縦者を中心とした全方位視界を実現する技術として開発されたのがこの「Transparent Cockpit」だ。

乗り越えるべき様々な技術的な課題はともかくとして、基本的な概念は単純だ。

機体の外側に取り付けられた様々な方向のカメラからのリアルタイム映像を、操縦者の頭部の動きにシンクロした形で、一人称視界に補正して被験者に見せる、という流れになる。

このシステムでも、前出の「TORSO」のように、被験者はHMDを被るものの、「TORSO」とは異なり、HMD側の映像だけではなく肉眼で見るリアル視界の両方を見ることになるのが最大の特徴。

実はHMD側にはプロジェクタが搭載されており、被験者の視界に対して、プロジェクタ映像が投射されるようになっている。ちなみに、開発元では、HMD(Head Mounted Display)ではなくHMP(Head Mounted Projector)と呼称していた。

プロジェクタからの映像はどうしても暗くなりがちなので、これを補うために、操縦席側の内装パネルには再帰性反射素材と呼ばれる光の入射方向に効率よく光を反射する素材を用いることを想定しているそうで、展示されていた試作システムでも、の素材でできたスクリーンを被験者を取り巻くように設置していた。

ヘリコプターのシミュレータ映像で体験させてもらったが、カメラからの映像だけでなく、実際の視界がちゃんと得られるのが新しい感覚で、あくまでメインの視界はリアル視界で、カメラ映像は補助情報として捉えられるので信頼性というか安心感がある。

もしかすると、巨大な機体の高精度な操縦技術に将来応用されることがあるかもしれない。

CGによるイメージ図

システム概念図

システムの究極目標はこんなイメージ

Transparent Cockpictシステムを自動車に実装した例

実際に展示されていたシステム。「TORSO」と同じ研究室で開発されたシステムで、HMD(HMP)側のトラッキングにはTORSOと同じ、ポテンションメーターの仕組みが利用されている