Samsung電子やLG電子など、本来ライバル関係にある韓国の大手ディスプレイメーカーが手を組むこととなった。

韓国政府の産業資源部は、Samsung電子、LG電子、LGフィリップス LCD、Samsung SDIといった韓国の大手ディスプレイパネルメーカー4社とともに、特許協力や共同R&Dなどを盛り込んだ「8大相互協力」課題を用意。ディスプレイ事業の「大-中小(企業)同伴発展戦略」を推進することで合意した。

ディスプレイに強いというイメージがある韓国。今回の戦略はこうした韓国の地位をより強固にする目的のほか、技術力とブランド力を持つ日本勢や、生産力の高い台湾勢の追い込みに対応する狙いで発案されたものだ。

この戦略により、ディスプレイ関連の大企業および中小企業が手を取り合い、韓国全体のディスプレイ産業の振興に取り組んでいく。具体的には大企業間の提携によって技術競争力をいっそう高め、大企業と中小企業の提携によって部品素材の国産化率を高めていきたい考えだ。

産業資源部の戦略

産業資源部による8大相互協力課題は、「協力基盤の構築事業」「大企業対大企業の協力事業」「大企業と中小企業の協力事業」という3分野の基本方針があり、これに沿って共同R&Dや特許協力といった8つの具体的課題が属している。

8大相互協力課題の内容は、「競争力を低下させる要因」(産業資源部)となっているこれまでの慣行を打破し、相互に協力することで、大企業だけでなく中小企業の育成も図っていく方針となっている。競合する企業間では是正提案をすることすら難しかった業界の慣行を改善すべく、産業資源部が間に入った格好だ。

基本方針 8大相互協力分野 内容
協力基盤構築事業 1: 相互協力委員会結成 相互協力の推進状況の点検、新規課題の提案など、政策機能を遂行
2: ディスプレイ産業発展ロードマップの共同作成 これまで短期的分析に終わっていた、LCD、PDP、OLEDといった3分野に対して、今後10年間の詳細工程別の技術を分析した「ディスプレイ発展ロードマップ」を作成
3: 共同R&D推進 特許共有、大型コンソーシアム結成してのR&D、研究拠点機関における共同R&Dを推進。とくに多大な時間と費用が必要な技術については、多様な業者が参加しての共同研究開発を行う
大企業 対 大企業協力事業 4: 特許協力 大企業においては、海外企業と活発に行っていたクロスライセンスを、韓国内の企業同士で進める。そのため特許協議体を結成。ここでの情報共有や共同R&Dによって新規発生した特許に対し、共有システムを用意して企業間で共有する
5: パネル相互購入 韓国の200以上の装備・材料業者中、Samsung電子やLG電子に納品できるのは、2社の系列会社になっているたった20社程度という構造を打破。系列の壁をなくし、自由な部品購入を可能にする
6: 標準化 パネル・装備・材料といった分野別に、市場標準化、国家標準化、国際標準化を推進する。このため標準化協議体を結成する
大企業 対 中小企業協力事業 7: 装備・材料評価支援事業 主要な大企業が、中小企業が開発中もしくは開発完了した装備の性能を評価し、その結果を認証書形式で発給し交付。中小企業の信頼性を確保し、育成を進める
8: 「垂直系列化」慣行の打破 大企業と中小企業が提携して共同開発した装備材料は、通常3年間他企業に販売禁止という「JDP販売制限」規定の緩和。他社の装備や材料購入を推進し、厳しい「縦のつながり」を打破する
出典: 産業資源部
翻訳: 佐々木朋美

ディスプレイ業界、東アジアで競争激化

現在、LCDやPDP、PLEDといったディスプレイの生産は、韓国や日本、台湾、中国といった東アジアに集中している。なかでも韓国は3分野において世界市場の占有率1位を誇る「ディスプレイ大国」だ。

しかし品質競争力や部材・材料の供給率では日本が依然、韓国を上回っており、価格競争力では台湾や中国が優位に立つなど、韓国もうかうかしていられない状態が続いている。

2006年のLCD、PDP、OLED分野における、世界の世界市場の占有率(売上額基準)
出典: 産業資源部
翻訳・資料作成: 佐々木朋美
(以下の資料も同)

価格、技術、品質の競争力を、韓国を100として比較したもの

LCD装備の国産(韓国)化率の現状

LCD材料の国産(韓国)化率の現状

そこで産業資源部では、韓国全体のディスプレイ産業の底上げを狙ってこうした大々的な政策を立ち上げた。ちなみに今回この政策によって協力することとなった大手4社の中には、海外企業との協力がある企業がほとんどだが、今回はあくまで韓国企業との、韓国における提携・協力ということを軸に進められる政策となっている。

現時点で世界1位のディスプレイ生産国である、韓国の大手4社が手を組むという戦略が順調に進んでいけば、世界市場でさらに大きなパワーを発揮することが予想される。