さて、問題になっているのが、新築ではなく、すでに建てられてからしばらく経つ住宅だというのは前回、記事を書いたときから全く変わっていない。そのような住宅では、いきなり地上デジタル放送用の機器を購入してきて、「映らない」というケースよりも、購入したいのだが「映るかどうかわからない」というケースのほうが多いのではないだろうか。

実は、そのままで地上デジタル放送を受信できるケース、というのも結構多い。まずは、CATVに加入している世帯。CATVでは、地上デジタル放送の電波をケーブルに再送信しているが、その方式には「トランスモジュレーション方式」「周波数変換パススルー方式」「同一周波数パススルー方式」の3種類がある。

トランスモジュレーション方式は、地上デジタル放送の電波を、CATVで使用している変調方式に変換して送信するというものだ。この場合、受信機1台に対して1台のSTB(セットトップボックス)が必要となる。同一周波数パススルー方式は、もとの地上デジタル放送の電波を、そのままケーブルで再送信するというもの。この場合、地上デジタル放送に対応した受信機さえあれば、受信が可能になる。周波数変換パススルー方式の場合、変調方式はもとのままだが、地上デジタル放送の電波を、別の周波数に変換して再送信するというものだ。テレビやビデオ機器などで、CATVパススルー方式対応と明記されていれば、この方式に対応していることになる(実際、現行の機種はほとんど対応している)。

「デジタルハイビジョン受信マーク」。これが付いている機器は、デジタル放送の受信に対応している

次に、受信設備が対応している場合。自宅のアンテナやブースターなどに「デジタルハイビジョン受信マーク」が付いている場合は、地デジに対応した機器が使用されていると考えてよいだろう。ただし、地デジに対応した機器が販売されるようになったのは、ここ2~3年のことなので、それ以前に施工/改修された物件では期待できない。

それよりも古い住宅でも、壁のコンセントがU/V混合タイプの場合、使用されているアンテナから壁のコンセントまでの線は、5C-FV以上というケースが多いだろう(これは戸建て住宅の場合、集合住宅の共用配線には、もっと太い線が使用されているケースが多い。そこから各部屋のアンテナコンセントまでは戸建て住宅と同様)。これならばUHFにも対応しているので、アンテナ/ブースター/分配器などが地デジの帯域に対応しており、なおかつ、UHFのアンテナが正しい向きを向いていれば(直接波だけとは限らないため、送信所の方向を向いていないケースもある)、地上デジタル放送を受信できる可能性がある(もちろん、ノイズの多い環境では受信できない)。

ただし、複数の部屋にアンテナコンセントがある場合、それが送り配線になっていると、ある部屋では映るが、別の部屋では映らないというケースも。この場合、すべての部屋で映るようにするには、屋内配線の改修が必要になる。

それよりも古い住宅で、アンテナコンセントに、VHF用とUHF用とが別々に存在している場合は、アンテナから壁のアンテナコンセントまでの配線はせいぜい5C-2V程度というケースが多いはずだ(そのあと改修されていなければ)。また、場合によっては、3C-2Vだったり、ひどい場合には300Ωのフィーダー線が鴨居の上を這っていたりというケースもまだ残っている。

これらの線は、地上デジタル放送の受信に適していない。いくらなんでもフィーダー線の場合は置いておくとして、同軸ケーブルでは、低損失で、かつシールドのしっかりしたものが求められている。アンテナコンセントは、簡単に開けることができるので、その中を見て、実際にはどのようなケーブルが使用されているのかを確かめてみるというのもよいだろう。