45nm High-K Process

ところでPenryn世代は、大幅に動作周波数が上がるようだ。今年初頭の特集記事で、「海外の幾つかのニュースサイトによればWolfdaleは3.5GHz以上で4GHzまで、Yorkfieldは3.33GHz~3.73GHzと伝えられている(ので表にはそのまま書いている)が、幾らなんでもこれは無茶である。」と書いたわけだが、実際はというと、Quad CoreのPenrynが既に3.33GHzの動作デモを行っている現状では、Dual Coreが4GHz、Quad Coreで3.73GHzという話は割と現実的な雰囲気である。これを支えるのが、High-Kを使ったトランジスタである(Photo14)。まずこのあたりについて、2日目の基調講演に続いて行われたTechnology Insightにおける説明をベースに簡単にご紹介したい(Photo15)。

Photo14:こちらはPenrynのセッションで示された、大雑把な説明。とりあえず高速化と低消費電力(低リーク電流)をHigh-K Gateで実現できたことのみが示されている。

Photo15:説明を行ったMark T. Bohr氏(Intel Senior Fellow, Technology and Manufacturing Group, Director, Process Architecture and Integration)

IntelがPenryn世代で導入する45nmプロセスは、概ね20%の速度向上と大幅な消費電力削減を果たしている(Photo16)。これを実現したのが、High-K GateとMetal Gateの組み合わせである。まずHigh-K(高誘電率材料)とは、単純に言えば「厚みを保ったまま大量の電流を流せる素材」である。従来はここにSiO2(酸化シリコン)を使っていたが、トランジスタの微細化に伴い、この厚みがどんどん薄くなってきた。65nmの世代だと1.2nm、原子数個分というところまで厚みが減らされてきている

Photo16:消費電力はダイナミックなスイッチング電流に加え、リークも大幅に削減できたことが効果的に作用している。

ここで問題なのが、トンネル効果と呼ばれる性質で、要するに絶縁しているにもかかわらずそこから電流が漏れてしまうという現象だ。これは要するに絶縁膜が薄すぎるのが問題なのであって、厚みをつければこの現象は改善されるが、今度はスイッチングスピードが遅くなるという問題が出てくる。これを解決するのがHigh-Kと呼ばれる素材で、厚みを保ったままでも大電流を流す事が可能になっている。これにより高速化と低リーク電流性を両立することができた。ただ、High-Kを通常のシリコンと組み合わせると、厄介な副作用があることも知られており、これが今までHigh-Kの採用を妨げる要因になっていたが、今回はSiliconの代わりにMetal Gateを組み合わせることでこの副作用を抑えることに成功している(Photo17)。

Photo17:左が従来のトランジスタ、右が45nm世代のトランジスタ。High-K材料はハフニウムをベースにしているそうだが、詳細は未公開。

ちなみにYieldは従来と比べても圧倒的に良い(Photo18)とされており、早期に製品投入が可能になることを伺わせるものだった。

Photo18:縦軸は欠陥密度(単位面積あたり、何個位の欠陥があるか)を対数表示したもの。既に90nm世代の最初の量産レベルを超えるところまでYieldが向上しており、2007年第2四半期中には安定した量産レベルに達するであろうことが伺える。

さて、話をPenrynに戻す。ベンチマークでも示された通り、Dual Core/Quad CoreのPenrynが既に3.33GHzとConroeを上回る動作周波数で安定動作している状態だから、実際にはまだ余力はあると思われる。Intelは2006年のIDF Spring 2006で、今回と同じようにまだ正式発表前のConroeを使ってのベンチマークを示したが、この時持ち出されたのはE6700相当の2.67GHz駆動のもの。同じように考えると、Quad Coreでは現在の3.33GHzから一段高速な3.67GHzになっても不思議ではないし、TDPに余裕のあるDual Coreは更にもう一段高速な4GHzに達するというシナリオはかなり現実的に思える。こうなると、IPCそのものがConroe世代と大きく変わらなくても、30%以上の動作速度アップが期待できるわけで、これとL2の容量アップやFSBの高速化と併せることで、4割近い性能アップが実現できるというのはあながち無茶な説明でもないのだろう。