続いて、須賀氏と伊藤氏によりはてなの会社・サービスについて対談が行われた。

須賀: はてなは日本を代表するWeb2.0企業だと言われるが?

伊藤: たまたま、時代の流れと自分たちのやってきたことが一致し始めた状況で、正直なところ実感がわかない。2.0の定義というのは、最近のシステムやサービスの特徴をまとめたもので、その意味では有意義。ただ、最初はテクノロジーの話だったのが、最近はマーケティング(の話)になって、意味がわかりにくくなってきたように思う。

須賀: サービスを作る上でダメ出しも遠慮無くするとのことですが、それでヘコんだりは?

伊藤: します。身内に言われるのが一番キツイ。ただ、いいものをつくったときはほめる、ダメならダメでメリハリを付けるのが大事。日本人はほめるのがヘタだから、みんな自分がダメだと思ってしまいがちだが、必ずいいところはある。成果の発表を金曜の夕方にビールを飲みながらやるなど、ほめる雰囲気作りには気を遣ってマネジメントしている。

この他、サービスを作ることに関してのマネジメントや、組織としてのあるべき姿などについて意見が交わされた。

サーバの"手作り"と2.0の関係

後半は聴講者から寄せられた質問に答える形式で進められた。

日本のWeb2.0における広告収益についての質問には、須賀氏が「マーケティング自体は確かに伸びている。だが、誰もが利益を得ているのではなく、集客力を持つコンテンツがPVを上げている状態。弱肉強食の状況が益々鮮明になっていくのでは」と回答した。

また、サーバの管理を自分たちで行うべきかという問いに対して、伊藤氏は「事業(内容)によるが、Webサービスを事業にするなら自分たちでやるべき。例えば負荷が上がったときにそれをどうさばくかということをしていかないと、自分たちに技術が得られない」と述べた。

須賀氏によると、はてながサーバを手作りしていることについて、今なら買った方が安いのでは? と質問したところ、伊藤氏は「コストの問題だけでなく、会社の中に技術を持っていたいという欲求が高かった」と回答したそうだ。ロースペックのマシンでいかに速くサービスを動かすかというところが強みで、伊藤氏は「これがなければ全く文化の違う会社になっていたかもしれない」と付け加えた。

現在、はてなのサーバはハウジングという形式で、さくらインターネットのデータセンターに預けられている。データセンターが車で機器を持って行ける場所にあることや、回線が安いことが選択の決め手になったという。また、実際にさくらインターネットによるサービス紹介も行われた。

さくらインターネットは国内最大規模102Gbpsのバックボーンを保有。米SNS「フレンドスター」のパフォーマンス低下によるユーザー喪失や、最近の動画系サービスの増加の事例を挙げて、安定した回線の必要性を解説した

最後の質疑応答では、Webサイト管理者やベンチャー企業経営者、Webサービス開発エンジニアの方などから様々な質問が寄せられた。

合宿やサーバ手作りなど、変わったことをする会社といわれるはてなだが、その実「継続する・(情報を)共有する・ほめる」など考え方は至って常識的、むしろ理想論とも取れる。どんな"2.0的"サービスであれ、自分が宣言し、実行・継続することでビジネスが成り立つ。その意味では、これまでのビジネスと何ら変わりはない。

伊藤氏の言葉を借りれば「今、普通にやっていれば2.0になる」わけで、"2.0的"サービスを始める敷居は低い。実態の見えないまま膨らんだ「Web 2.0」という言葉の裏で、いかにしてサービスを継続し育てるか、提供する側の考え方が問われていると言えそうだ。