シマンテックは4月19日、同社のアイデンティティ・イニシアチブ(Symantec Identity Initiative)に基づいて開発中の「Norton Identity Client」のプロトタイプによるデモをプレス向けに紹介した。

同社では「オンラインのあらゆる場面で個人ユーザーを保護する」ことを目指す「セキュリティ2.0」構想の実現に取り組んでいるが、アイデンティティ・イニシアチブはその中軸を担うものだという。同社では次世代のアイデンティティ管理のコンセプトとして「Identity 2.0」を掲げているが、その中核となる考え方は、「サイト中心のアイデンティティ管理(1.0)から、ユーザー中心(2.0)に」というものだ。個々のユーザーがどのサイトにどの情報を公開するかを自覚的に制御していくことを支援することが大きな目標となっており、そのための具体的なツールがNorton Indetity Clientとなる。

サイト中心からユーザー中心の考え方に変化

Symantec Identity Client

また、同社ではアイデンティティ管理をセキュリティ関連の追加の新機能としてではなく、さまざまなアプリケーション/サービスの基盤となるプラットフォームと位置づけている。Norton Identity Clientは今後1~2年を掛けて開発し、リリースされる予定であり、現時点ではまだコンセプト・デモのレベルだ。

説明とデモを行なった同社シニア リージョナル プロダクト マーケティング マネージャの風間彩氏は、アイデンティティ保護の意義として、「個人ユーザーにとっては安心感を高め、必要な情報だけを選択して送ることが可能になり、サービス提供企業にとっては、安心感が高まることでオンライン・サービスを利用するユーザーが順調に拡大することが期待できると同時に、個人情報保護を求める法規制等への対応も容易になる」としている。

公開されたNorton Identity Clientのプロトタイプは、見たところ洗練されたパスワード・マネージャといった感じのツールとなっている。アイデンティティ管理機能とレピュテーション(評判)機能が統合されており、サイトに対して公開する個人情報を適切に管理すると同時に、サイトに対する評価を提示することでユーザーがサイトに対して個人情報を公開することの可否を判断することを支援する。サイトのログイン画面の入力フォームに自動的に情報を入力するなどの支援機能も備える。また、ユーザーはカード形式で整理されたアイデンティティ情報のセットを複数用意しておき、サイトごとに提供する情報セットを使い分けることができる。

公開されたNorton Identity Clientのプロトタイプ

Norton Identity Clientが提供する機能は、デモを見る限りあくまでもユーザーがアイデンティティ管理を容易に実行できるように支援することで、アイデンティティが保護されることを保証したり、情報漏洩が起こらなくするような仕掛けが含まれていたりはしない。ただし、現時点ではユーザーの記憶に頼った管理が中心であるため、実用化されればメリットは大きいものと思われる。

サービスを提供するサイト側でもNorton Identity Clientの存在を前提とできればメリットも大きいだろう。アイデンティティ情報の適切な管理は特定企業のレベルではなく、業界全体の大きな課題となっているため、多数の企業が参加するアライアンスという形態や、あるいは何らかのかたちでの標準化も今後は必要となってくるのではないだろうか。また、アイデンティティ管理ではLiberty Allianceなどの業界団体も既に活動しており、主に技術面での環境整備に取り組んでいる。こうした既存技術との連携についても明確な方向性が打ち出されることを期待したい。

概要

風間彩氏