曲玲年氏

曲玲年氏は1955年の生まれで、現在は北京中関村に本社を置く新興IT企業、博彦科技(北京)有限公司--Windowsのローカライゼーションなどで知られるソフトウェア企業--高級副総裁の職に就いている。

天津大学電子工程系を卒業後、地元の国営企業(天津電子計算機廠)に就職、副廠長にまで昇進、その後IBM天津公司に董事副総経理としてヘッドハントされ、7年近くを其処で過ごしている。

本稿の趣旨を考えたとき、その後彼が天津NECで5年ほどのキャリアを積み、さらに北京軟件産業促進中心(政府系組織)の副主任--同時期に、北京 863軟件孵化器有限公司董事長、中国/印度軟件合作弁公室主席代表、北京軟件出口中心総経理などを兼任--という要職を経て、現在の地元ITベンチャー経営者になったという点に注目したい。

彼は国営企業、米国企業、日本企業、政府機関、民営企業という、およそ中国のIT業界でいえば、ほとんどの「立役者」で経験、実践を積んできた人物、なのである。また、彼は理工系出身でありながら、実際のキャリアは人材管理、マーケティング、財務管理、政府対応といった、企業活動の根幹にかかわるマネジメントを経験している。

これらの点を鑑み、筆者は、曲玲年氏こそ、日本企業の中国における経営ローカライゼーションの問題点を議論するには最適の相手と考えたのだった。

それではまず、そもそも「中国市場をどう見るべきか」、という点から始めよう。