リボンUIを見ると、実はコマンドの数が足りないことに気づくだろう。たとえば図形や表を挿入した時のデザインを決めるコマンドがどこにも表示されていないからだ。これは、そのコマンドを実行して、図形や表を選択した時に初めてタブが追加表示される[コンテクスチャルタブ]を採用したからだ。
こうすることによって、普段必要のないタブは隠れ、リボンがスッキリとするので、必要なコマンドを余計に探し回る必要がなくなるわけだ。
逆にリボンUIは、多くのコマンドをアイコン化していることで、既存のツールバーとメニューバーのUIに比べて広いエリアを占有してしまう。モニタの高解像度化が進み、ある程度画面を占有しても問題にならない、という判断もあるのかもしれないが、画面をもっと広く使いたい場合は、設定で非表示にすることもできる。
このようなリボンUIの仕組みは、もちろんいきなりできあがったわけではなく、マイクロソフトが試行錯誤を繰り返しながら作り上げていったものだ。マイクロソフトには米国をはじめ、アプリケーションのユーザービリティを調査するラボがあり、リボンUIを作り上げるために、ここでユーザーにテストしてもらい、その反応をふまえながら開発を進めていた。
調査を行うユーザビリティラボは、米国だけでなく日本にもあり、2007 Office Systemの開発に限らず、1994年の開設から2006年10月までで、のべ1,800人にさまざまなアプリケーションのテストしてもらっているそうだ。この2007 Office Systemに関してはのべ102人がラボでテストしたという。
こうしたユーザビリティテストなどの結果から、たとえば前述の[表]のコンテクスチャルタブでいえば、開発当初4つのタブが追加表示されるようになっていたが、7~8人がテストした段階で、ユーザーにとって使いづらいインタフェースであることが分かったそうだ。表示されるタブが多かった割に、表の罫線の編集コマンドが表示されないなど、そもそもインタフェースとしては不備があったようだ。
ベータ1の段階ではこれを解消し、コマンドを整理して使いやすさは向上したが、今度はコンテクスチャルタブそのものの存在が気づかれにくかったのだという。そのため最終的にはリボンのデザインを大幅に変更し、コンテクスチャルタブに気づきやすくした。
このようにしてマイクロソフトでは、ユーザーがスムーズにそれぞれの機能を使えるようになるまで研究を重ねてこのリボンUIを開発したのだ。