ご飯の上に具をのせれば、いろんな料理が「丼」になる。そうした特徴もあってか、その土地ならではの食材をのせた丼は「ご当地丼」などと呼ばれ、いろいろな地域にてオリジナルの味でもてなされている。もちろん、同じ丼でもその土地によって見た目も味も異なるもの。そんなご当地丼たちを訪ねてみた。

北海道には肉も魚も

北海道は魚介類の宝庫! ウニ、エビ、ホタテ、イクラ、カニなど、たくさんの食材が頭に浮かんでくるだろう。そんな海の幸を好きなように盛ってつくれる「勝手丼」というものが、釧路漁港そばの釧路和商市場にある。市場内の提携店を巡ってネタを選べるので、デカ盛り丼も高級丼も思いのまま。

「勝手丼」は好きなネタを好きなだけ

「盛りすぎに注意! 北海道・釧路に来たなら絶対盛るべき「勝手丼」とは?」

一方、日本一のサンマ水揚げ基地である根室では、新鮮なサンマの刺し身をドカっとのせた「サンマ丼」なるものもある。こちらはサンマが旬を迎える秋を目指して訪れたいところ。

生サンマが豪快にのる「サンマ丼」

「北海道根室市の隠れた極上メシ、生サンマが豪快にのる丼とのおいしい出合い」

北海道は魚介類だけじゃない! 豚丼発祥の地とされる帯広市には「帯広豚丼」が郷土料理とされている。肉をバラ、ヒレ、ロースから選べる店もあれば、つけダレ、かけダレの2種類を駆使してオリジナリティーを追求している店も。要は、調理した豚肉をご飯の上にのっけておいしく食べられたらOKなのである。

ガッツリ系の「帯広豚丼」

「北海道のスタミナ食といえばこれ! 「帯広豚丼」は普通の豚丼とどう違う?」

ソースカツ丼の名産地はいろいろ

丼の定番とも言えるカツ丼だが、ご当地丼には卵とじではなくソースをかけた「ソースカツ丼」なるものがある。そんなソースカツ丼をご当地丼にしている地域はひとつではない。

まずは福島・会津のソースカツ丼から。大正時代から親しまれてきた味ではあるものの、誕生の由来は不明のよう。5月20日現在、加盟店は17店舗あり、会津のガンコおやじたちがプライドを持ってその味を守り続けている。

会津のソースカツ丼は特に定義はないよう

「会津が誇る「伝統会津ソースカツ丼」には、店主の愛情がたっぷり!」

代わって今度は長野・駒ヶ根。「ソースかつ丼の肉は豚肉のロースを基本とし、120g以上とする」などと9つの「駒ヶ根ソースかつ丼規定」があり、5月20日現在、36店舗が提供している。

駒ヶ根のソースカツ丼には9つの定義がある

「長野「駒ヶ根ソースかつ丼」は、会津若松などのソースかつ丼と違うの?」

福井もまたソースカツ丼で知られる街。カリッと揚げたカツの上には甘辛いソース、それを福井発祥のブランド米・コシヒカリとともに楽しめるのが福井のソースカツ丼だ。こちらの興味深いところは、"あるくソースカツ丼"というキャッチを用いた「サバエドッグ」もあるところ。割り箸にご飯を巻き、それを薄くスライスした豚肉で巻いて揚げたもの。もちろんソースもたっぷりだ。

福井のソースカツ丼を手軽に楽しめるのが「サバエドッグ」

「なぜ「歩くソースカツ丼」が、福井で「サバエドッグ」と呼ばれているの?」

ちなみに、石川・金沢にはキュウリがのったカツ丼や卵あんがのったカツ丼など、ちょっと変わったカツ丼もある。これらは「自由軒」「グリル中村屋」と特定の店舗で提供されているものだが、ともに金沢の風土や文化から生まれたメニューとなっている。

「自由軒」のカツ丼にはキュウリがのっている

「石川県金沢市の老舗洋食屋には、一風変わったカツ丼たちが存在する!? 」

素材も形状も個性があるご当地丼

ソースカツ丼のように素材や形状などある程度定義されたものではなく、その地域の食材などを用いて様々な素材・形状の丼を提供する地域もある。石川・奥能登の「能登丼」は、食材や食器、調理方法を定めているものの、丼そのものは魚介類から肉類、タコス風やカレー風などと、5月20日現在、68店舗がオリジナルの丼を提供している。特に興味深いのは、各店で箸がプレゼントされること。ぜひ旅の思い出に。

「能登丼」は海鮮丼のほか、ステーキ丼やカキフライ丼もある

「口コミで評判の石川「能登丼」、料理長たちに聞いたら本当に凄かった! 」

長野の諏訪市から伊那市、飯田市にかけての国道153号線沿いにある「信州・天竜川どんぶり街道」では、地元の食材を使った昔ながらの丼に新しく作ったユニークなご当地丼を加えた、個性豊かな丼を提供している。9団体136店舗(2010年9月時点に集計)が考案したバラエティーに富んだ丼がそろい、注目を集めている。

「信州・天竜川どんぶり街道」には様々な丼がひしめいている

「その道は激うま丼に続く! 長野「信州・天竜川どんぶり街道」で食べ尽くす」

うなぎ? それともあなご??

今度はうなぎvsあなご。成田空港から電車で10分程度の成田駅周辺には、成田山新勝寺に続く表参道が広がっており、うなぎを提供する店舗がひしめいている。明治創業の店舗もあり、通りからもうなぎをさばく職人の姿をうかがえる。

成田山新勝寺の表参道にはうなぎのいいにおいが漂っている

「成田空港から電車で10分! 成田山新勝寺+極上うなぎで表参道ぶらりのススメ」

あなごと言えばやっぱり広島・宮島だろう。あなごめしの老舗中の老舗である「うえの」などでも、店内飲食のほか駅弁としても楽しめるものも用意している。こちらは世界遺産の厳島神社とともに楽しんでいただければと思う。

伝統のあなごめしは店内飲食のほか、駅弁タイプもある

「世界遺産・厳島神社に行くなら絶対外せない! 広島「あなごめし」の魅力」

ネーミングにも特徴あり

ちょっと変わった丼として、三重・伊勢神宮には"食の神様"として親しまれている豊受大御神にあやかった「御饌(みけ)丼」なるものがある。地元の食材を使って提供される御饌丼は、外宮周辺の飲食店で提供されている。

"食の神様"にあやかった「御饌丼」

「三重・伊勢神宮に参拝するなら、“食の神様”の「御饌丼」をお忘れなく!」

そのほか、秋田・三種には薄焼き玉子の巾着の中に緑のエメラルドとも称される「じゅんさい」が包んだ「三種じゅんさい丼」が、大分・津久見にはマグロなどの魚介をビビンバのようにかき混ぜて食べる海鮮丼が、静岡・伊東ではイカやブリなどの魚介をタタキにし、最後は味噌をのせてダシをかけてお茶漬け風にしていただく「ねごめし」なるものもある。

「三種じゅんさい丼」は見た目も美しい

「ヌルヌルがたまらない! 秋田・三種の激ウマ「三種じゅんさい丼」とは?」

大分の海鮮丼は食べ方に特徴が

「大分にはマグロをビビンバ並みに「かき混ぜて」食べる海鮮丼がある!?」

「ねごめし」は2度楽しめる

「魚介が踊る漁師メシのシメはサラサラと!? 静岡「ねごめし」ってどんな料理?」

38万人超が来場した「ふるさと祭り東京2015」(1月9日~18日)では「ご当地どんぶり選手権」も開催され、山形の「米沢牛ステーキ丼」がグランプリに選ばれている。そんな全国トップクラスのご当地丼を食べ歩く旅行もまた楽しそうだ。

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