引き続き、自宅のテレビのワイヤレス化について話を進めよう。Wi-Fiを使ってテレビやレコーダーをインターネットに接続すれば、「アクトビラ」「Hulu」などのオンデマンド映像サービスが手軽に利用できるというメリットがある。レンタルビデオ店に足を運んでDVDやブルーレイディスクを借りたり返したりしなくても、観たいときにテレビドラマや映画を観られるようになるのだ。また、機種によるが、レコーダーに録画した映像をメイン以外のテレビやパソコンでも視聴できるようになる。ただし、テレビとレコーダーを同じメーカーのものにする必要はあるが。

テレビやレコーダーをインターネット接続、LAN接続すれば、使い勝手は大きく広がるのだが、ケーブルで接続するのはなにかと面倒。そこで、前回はWi-Fi接続をすればいいというお話をした。今回は、より具体的なWi-Fi接続の手順をご紹介しよう。

まず、Wi-Fiの基本的な仕組みを再確認しておこう。自宅にインターネット回線を入れている人の多くは、電話用コンセントからケーブルでネットワーク接続をしているはずだ(ケーブルテレビのネット接続を利用している人は、ケーブルテレビ用のコンセントで接続する)。その線の先には、「ルーター」と呼ばれる箱型の機械が接続されている。このルーターというのは、つまり分配器のことだ。ルーターとパソコンをケーブルで接続すると、パソコンからインターネットネットが利用できるようになる。これがインターネット接続の基本形だ。

このルーターに「無線LAN親機」を接続すると、親機が電波を発して無線LAN子機が内蔵あるいは装着されているパソコンやテレビから、無線でインターネット接続が行えるようになる。このような無線LANの仕組み全体の規格名が「Wi-Fi(ワイファイ)」と呼ばれるもので、無線LANのことはしばしば愛称のように「Wi-Fi」と呼ばれる。また、無線LAN親機の機能を内蔵しているルーターもあり、この場合は無線LAN親機をわざわざ接続しなくてもWi-Fiの利用が可能だ。

つまり、無線LAN親機の機能を内蔵したルーターを使用している場合などは、子機だけを買ってくればWi-Fiを利用できるようになる。無線LAN親機の機能非搭載のルーターしかないといった場合は、無線LAN親機と子機のセットパッケージを購入して接続すればいい。また、最近のパソコンの場合は、デスクトップであれノートブックであれほとんどの機種で無線LAN子機機能は内蔵している。

一方で、テレビやレコーダーのほとんどは無線LAN子機機能が内蔵されていないので、子機を購入して接続する必要があるのだ。といっても、子機は5,000円から8,000円程度が相場。それでテレビの楽しみ方がグッと広がるのだから、決して高い投資ではないと思う。

バッファローのUSB接続タイプの子機。全長は10cm以下とコンパクトで、電源もUSB端子から供給される。パナソニックの「ビエラ」用とシャープの「AQUOS」用がある。直販サイト価格は5,300円

子機には、USB接続タイプのものとLAN端子接続タイプのものがある。対応しているテレビの機種がまだ多くはないが、もしあなたのテレビが対応しているのであれば、USB接続タイプのものが圧倒的にオススメだ。何しろ、USBタイプの子機はサイズが小さい。10cm程度の棒状をしており、ジャマにならないのだ。しかもUSB経由で給電できるので、ACアダプターで電源を取る必要がなく、テレビ周りもスッキリする。

使っているテレビにUSBタイプの子機が対応していない場合は、LAN端子接続タイプの子機を購入する。付属しているLANケーブルをテレビやレコーダーのLAN端子に接続すればOKだ。あとは、取扱説明書を読んで、親機との接続設定をするだけ。

「接続設定をするだけ」と書いたが、実はこれが意外と壁になることがある。うまく一発で設定できてしまえば何ということはないのだが、少しうまくいかないと泥沼にハマる鬼門なのだ。Wi-Fiはただ接続できればいいというわけではない。何しろ、電波を飛ばしてデータを送受信しているので、よその人も簡単に受信できてしまう。勝手に受信されても、インターネットを只乗りされたり映像を観られたりする程度ならたいした問題ではないが、パソコンがWi-Fiで接続されていればファイルやパスワードなどの重要な情報を盗まれてしまうという事態も起こりうる。そのため、親機と子機同士でパスワードを設定して、電波に載せる信号を暗号化しておく必要があるのだ。

LAN端子に接続する子機。これ1台に端子が2つ備えられているので、1台でテレビとレコーダーの2つの機器をWi-Fi化できる。電源の供給を電源コンセントから行う必要があるが、この子機自体が電源コンセントに挿せる仕様になっている。直販サイト価格7,900円

パソコンをWi-Fiに接続するのであれば、設定ウィザードに従って自分で決めたパスワードを入力していく程度の作業だが、テレビやレコーダーの場合はこの作業をテレビ画面でリモコンを使ってやらなければならない。簡単に設定ができるように工夫されているテレビやレコーダーもあるが、あまりその辺に気を配っていないテレビやレコーダーもある。技術に疎い人には、いったい何をどうしたらいいか分からないという場合もあるようだ。

ただし、この面倒な事態を回避する方法がある。それは、親機と子機をセットで購入することだ。前回、Wi-Fiの親機は何でも良いわけではないと書いた。詳しくは前回を参照していただきたいが、2007年6月以前に購入した親機では十分な速度が実現できず、ハイビジョン映像が途切れてしまう可能性がある。もし、あなたがお使いのWi-Fi親機がずいぶん古いものならこの際、親機と子機のセットを購入してしまうと良いだろう。

なぜなら、先ほど触れた「設定の面倒さ」を回避する仕組みが採用されているからだ。有名なのはバッファローが採用している「AOSS」、国際規格である「WPS」の2つ。いずれも、電源を入れて親機と子機に付いている専用ボタンを長押しする。すると、親機と子機が勝手に通信をして、パスワードも自分で生成して交換してくれる。つまり、ボタンを押すだけの操作で接続設定とセキュリティの設定をしてくれるのだ。これなら機械に苦手な人でも手軽に設定できる。

オススメは、親機と子機のセットを購入すること。AOSSという仕組みが利用できるので、親機と子機のボタンを押すだけで、接続設定とセキュリティ設定が終わるという手軽さだ。直販サイト価格で15,700円。USBタイプの子機とのセットは13,200円

個人的には、バッファローの製品をオススメする。バッファローは、この「接続設定の面倒さ」に早くから着目し、AOSSという仕組みを独自で作り上げてきた。「扱いやすいWi-Fi」という点では一日の長があるのだ。実を言うと、ソニーの「プレイステーション3」や「PSP」、任天堂の「Wii」「ニンテンドーDS」などのWi-Fi設定も簡単に行えるようになっているのだが、これらの機器にはバッファローのAOSSが採用されている。親機と子機のセットでも15,000円前後で購入できるので、テレビ環境をアップグレードさせる投資としては決して高くない。テレビはまだまだ楽しめる。テレビ環境を充実させて、21世紀のテレビライフを楽しもう。

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