インターネットバンキングなどネットで何でもできる世の中になった反面、インターネットバンキングの不正送金などの金融犯罪なども増加している。自分がトラブルや被害に遭わないためにも、きちんと知識を身につけておこう。

金融取引の被害やトラブルは、大きくいうと二つ

なんかおかしい、こんなはずじゃなかった。金融取引の被害やトラブルは、大きく二つに分けられるだろう。ひとつは相手が悪意をもって行う犯罪に巻き込まれるケース。詐欺や不正送金など。一方、一般的な金融取引であっても、金融機関の説明不足や強引な勧誘、利用する側の知識不足や誤解によるトラブルも起きる。

今、自分が直面しているのは、いったいどっちなのか。冷静に判断し、もし犯罪と思われるなら早急に警察に連絡する。このところ急増しているインターネットバンキングの不正送金は犯罪だ。一刻も早く銀行にも連絡しよう。

預けた元本が保障されると思っていたのに減ってしまった、自分が考えていた内容と商品やサービスが違うときは、どうすればいいだろう? 投資商品を購入した後や、民間保険の給付金や保険金の受け取りの際に、疑問がわき起こることがあるかもしれない。まずは取引先の金融機関の担当者やお客様相談室に問い合わせてみる。それでも納得いかないときに利用できる相談先としてADR機関がある。原則、無料で、相談・苦情を受付け、和解案の提示なども行っている。

銀行業務に関することは、全国銀行協会。生命保険業務は、生命保険協会。損害保険業務は、損害保険協会。共済なら、日本共済協会。投資信託などの金融商品取引は、証券・金融商品あっせん相談センター。

また、自治体が運営する最寄りの消費生活センターでも、相談を受け付けている。

お金のことを話そう

金融トラブルや被害の説明は、意外と難しいものだ。感情が先に立って客観的な事実をきちんと説明できなかったりする。自分の大事なお金が無くなって、もう戻ってこないかもしれないというケースなら、なおさらだ。被害やトラブルによっては、自分の側の過失を問われることもある。通帳やカード、パスワードの管理をきちんと行っていなかったなど。それでも、警察やADR機関など、しかるべきところに出向き、しどろもどろになりながらも話ができる人は、まだ大丈夫といえるだろう。

中には、恥ずかしくて人には言えない、どうしたらいいのかわからないと泣き寝入りする人もいるかもしれない。おひとりさまは、こんなとき気を強くして、相談や交渉を行いたい。そのためには、日頃から、ざっくばらんに友人とお金の話をすることをおすすめしたい。なにも貯蓄額を告白することはないが、例えば、このところ話題のNISAって何だろう? でもいいのだ。

おいしい店の話題や、芸能人のニュース、健康に関する情報などとあわせて、経済やお金の話ができる人間関係があれば、トラブルや被害に遭うリスクを多少なりとも減らすことができるのではないかと思うのだ。友人が、それおかしい、ちゃんとしたところに相談した方がいいよ。と背中を押してくれるかもしれない。

取引金融機関のリストを作っておこう

あわせて、おすすめしたいのが、取引金融機関のリストを作っておくことだ。預け入れの金額まで記入する必要はなく、名称と連絡先(お客様センターなどの電話番号)でいい。リストを作る際には、金融機関のサイトで会社案内(本社所在地などの情報)や、その金融機関が契約しているADR機関を確認しておこう。これがあれば、日頃の問い合わせにも便利だ。また、事故や病気で自分で連絡ができないときは、信頼できる友人に頼んで、このリストをもとに金融機関に連絡してもらうこともできる。

自分自身がしっかりすることがまず基本だが、何かあったときには世の中に整備された相談先や機関をちゃんと活用し、協力してくれる人間関係を築いておくことだ。

もちろん自分が頼るばかりではなく、友人がトラブルにあったり困っているときは、中途半端な感情を排し、冷静に、客観的に状況を把握して、助けになるようなアドバイスを行いたい。

(※画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 坂本綾子

20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。