多分、読者のみなさんの1.5~2倍近い時間を生きてきて(いつのまに?)、つくづく思うことは、「お金」と「愛」はなかなか思い通りにはならないということです。それでも、お金の方がまだ自分でコントロールできる範囲が広いと、ファイナンシャルプランナー(家計管理や資産運用のアドバイザー)である私は思っています。現「おひとりさま」が、将来もおひとりさまのままかどうかは、「愛」に左右されますが、「愛」に翻弄されることなく、自分の「お金」をしっかり管理していくために知っておきたいことを、このコラムではお届けします。


しっかりと向き合いたい「仕事」、「お金の管理」、「人間関係」

現「おひとりさま」がお金について考えるとき、最も厄介な点は、おひとりさま状態がいつまで続くかわからないことだろう。調査によれば、おひとりさまの多くは、いずれ結婚したいと思っている。男性は86.3%、女性は89.4%が結婚を希望(国立社会保障・人口問題研究所が実施した独身者調査2011年)。しかし、その一方で、生涯未婚率(50歳時の未婚率)はこの25年ほどの間に急激に上昇している。2010年の生涯未婚率は、男性20.14%、女性10.61%(国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2013」)。50歳を過ぎてから素晴らしい伴侶に出会う確率がゼロではないにしても、男性の5人に1人、女性の10人に1人は、一生「おひとりさま」かもしれないのだ。

つまり、結婚するかもしれないし、ずっとひとりかもしれない、そんな宙ぶらりんの状態を生きているわけだが、だからといって、お金の管理が中途半端なままでは、どちらの場合も困ったことになる。

もし結婚して子どもに恵まれた場合、結婚が遅いと、出産、子育て、セカンドライフ準備などの人生の重要イベントが一気に押し寄せることになる。人によっては並行して住宅を買ったり、親の介護や相続にも直面することになるだろう。大きな出費が目白押しの中、お金を払いつつ貯めなければならないという、ややこしい家計管理を求められる。しかし、おひとりさま時代に貯めたお金がそこそこあり、やりくりに慣れていれば、ぐっと楽に乗り越えられるはずだ。

一方、ずっとひとりだった場合は、経済的に自立して最後まで生き抜かなければならない。精神的な覚悟はもとより、お金の準備も必要となる。人によっては、親の家に同居したり、親から住宅などを相続できるかもしれないが、親との意識の擦り合わせが必要だ。当てにしていたのに、現実にはそうならなかったとしたら、その時になってあわてることになるだろう。

ライフプランが定まらないおひとりさまの時期にこそ、しっかり向き合いたいのが、お金の管理、そしてお金の入り口である仕事、さらには人間関係なのだ(人間関係については、おせっかいながら年上の人間として述べさせていただきます)。

仕事への覚悟を決めよう

ずっとひとりで生きる場合、男性女性にかかわらず会社員なら定年まで勤務するのは当然の選択となる。しかし定年まで勤務できるかどうかわからないのが今の時代だ。私が仕事でかかわってきた出版業界、金融業界はこの20年ほど、本当に厳しかった(と過去形で書いたが、今後も大変そうだ)。取引先のひとつは会社名が5回ほど変わったし(M&Aによる)、人事異動も頻繁に行われる。不本意な部署に異動になり会社を辞めた知り合いや、転職・早期退職した知り合いも多い。

入ってきたお金の管理はもちろん大事なのだが、まずは自分の財布にお金を入れる手段である仕事を全うするための努力が第一。特に若い時期はこのことを抜きにお金の管理の話は始まらない。

男性なら、それなりの覚悟はできているだろう。女性の場合、結婚願望が強い人ほど、仕事への覚悟が甘いのではないだろうか?

結婚した場合も、女性も仕事を続けたい。一時的に休んだり、パートや自営業などに働き方を変えるにしても、お金の入り口がひとつだけか、ふたつあるのかの違いは大きい。

必要であれば、稼いだお金の一部を仕事を維持・発展させるために使うことも考えたい。

お金の管理の基本を身に付けよう

仕事に真剣に向き合えば、このような努力をして得たお金をきちんと管理したいと考えるのは同然のことではないだろうか? このコラムの本題は、まさにこのお金の管理。2回目以降で具体的に紹介していくので、乞うご期待!

人間関係こそ人生の財産

お金が、生活と自分らしさを維持するために必要なものだとしたら、人間関係は、自分の人生を支え、彩るものと言える。

人は誰しもがいつか消えゆく存在だけれど、同じ時代を生きて、同じ時間を共有し、気持ちが通い合う瞬間があったとしたら、それほど心を満たすものはないだろう。一緒に仕事や様々なことに取り組めるのも、人間関係あってこそだ。

現実的な効用もある。おひとりさまで、家族と同居していない場合、いざというときに助け合えることだ。具合が悪いとき、さみしいとき、どこかに出掛けたいとき。特に年齢を経てからは、仕事抜きの親しい人間関係があるかどうかは重要だ。一夜にして作れないのが人間関係だから、若いときから人付き合いは大事にしたい。「遠くの親戚より近くの他人」という諺もある。

ずっと仕事を続ける覚悟を持ち、お金の管理をしっかり行い、人間関係を大事にすれば、おひとりさまの将来は明るいはず!! では、次回より具体的な"お金"作りのお話をお届けしましょう。

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 坂本綾子

20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。