日本マイクロソフトは2017年10月18日、都内でWindows 10 Fall Creators Updateに関する発表会を開催した。既に適用済みの読者諸氏も多いと思うが、MicrosoftはWindows Updateの自動更新を待つことを推奨している。

Windows 10の機能更新プログラムを振り返ると、2015年11月のNovember UpdateでCortanaを実装し、2016年8月のAnniversary Updateでペン機能を強化した。続く2017年4月のCreators Updateは3Dやゲーミング体験を向上させ、そして今回のFall Creators Updateはさらに3D体験を押し広げるため、Windows Mixed Reality(以下、Windows MR)をOSの標準機能としている。

日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows&デバイス本部長 三上智子氏は、「Creators=プロのクリエイターではない。アイディアを形に落とし込むのは、資料作成でもプレゼンテーションの内容を考えるのも創作的な活動。多角的な角度から刺激を受け、クリエイティビティを高める際に鍵となるのがMR(複合現実)だ」とし、Windows 10 Fall Creators UpdateでWindowsプラットフォームの一部となったWindows MRを紹介した。

日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows&デバイス本部長 三上智子氏

会場に並べられたWindows MRデバイス=HMD(ヘッドマウントディスプレイ)は、デルの「Visor with Controllers」日本エイサーの「AH101」日本HPの「HP Windows Mixed Reality Headset(コントローラー付き)」富士通の「Windows Mixed Reality Headset+Motion Controllers」レノボ製の5種類。コントローラーはベンダーロゴなど軽微な違いはあれど、基本的にはMicrosoftのガイドラインに沿った作りである。

会場に並べられた5台のWindows MRデバイス。左からデル、日本エイサー、日本HP、富士通、レノボ製。前者3台は予約販売などを開始し、富士通は11月ごろ。レノボは年内の発売を予定している

コントローラーの基本設計は各社共通。写真では分かりにくいが稼働時は各所が光り、何となく未来的な感じがする

日本マイクロソフト 執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー営業統括本部長 梅田成二氏は、Windows MRの市場展開について「一般的なPCで楽しめる」「素早く簡単な設定」「革新がワクワクをもたらす」と3つのキーワードで説明した。

日本マイクロソフト 執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー営業統括本部長 梅田成二氏

最初のキーワード「一般的なPCで楽しめる」は、低スペックなPCでもWindows MRの世界を楽しめるように、基本スペックとなる「Windows Mixed Reality」はCPU内蔵GPUも動作。他方で没入型ゲームなど高い描画能力を求めるコンテンツを楽しめるように、推奨スペック「Windows Mixed Reality Ultra」の内容も紹介した。

基本スペックとなる「Windows Mixed Reality」と推奨スペックの「Windows Mixed Reality Ultra」

2つ目のキーワード「素早く簡単な設定」は、既存のVR(仮想現実)型HMDのように、ユーザーの位置を検知する外部センサーや複雑な配線をWindows MRは必要としない点を指す。

デバイスにはXYZ方向や回転などを検知する6軸センサーを内蔵し、気軽に別の部屋や友人宅でも楽しめるという。Windows MRデバイスの体験会で確認したところ、PCとデバイスはHDMIおよびUSBで接続し、左右の手で持つ2本のコントローラーは、単3形電池×2本(計4本)で動作し、HMDやPC本体と連携する。電池ケースの中にあるペアリングボタンでBluetooth接続を行うのだろう。

最後のキーワード「革新がワクワクをもたらす」はビジネス的側面が大きいが、「2017年8月末時点で発売しているPCの約4割が、Windows MRに対応している。さらにその数は年々増加するため、ビジネス的価値は大きい」(梅田氏)という意味だ。

さて筆者は今回、富士通製デバイスでWindows MRの世界を体験したが、HMDをかぶるとクリフハウス(崖上民宿)と呼ばれる仮想空間に、見慣れたUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリケーション(以下、アプリ)が並んでいた。頭を上下左右に動かして視点を変えれば、当然目に映る景色も変化し、手にしたコントローラーで移動や選択を行う。HMDをかぶった状態では、握ったコントローラーが空間に浮かびあがり、最初は違和感を覚えたが、このあたりがMRに特化したMicrosoft HoloLensとの違いだろう。また、コントローラーはWindowsボタンを備えており、ボタンを押すとスタートメニューが現れる。

三上氏がWindows MRデバイスを体験しているシーンをご紹介

既にHTV ViveやOculus Rift用タイトルとして有名な、コントローラーを操作して巨人を倒す「TITAN SLAYER」をプレイしていた

筆者が体験したのはローマやマチュピチュを疑似旅行する「HoloTour」というアプリ。残念ながらアプリがハングアップしてしまい、体験したのは1分程度だが、360度どこを向いてもマチュピチュの街並みが目に飛び込むのは面白い体験だ。ただ、HMDを身に付けるのは慣れが必要のようである。筆者は目が悪いため普段から眼鏡をかけているが、上下に可動するディスプレイ部分が眼鏡を覆い被すようにするにまで、数回のやり直しが必要だった。試しに裸眼でも試したが、近視・遠視(老眼?)を持つ筆者には厳しい。普段、眼鏡やコンタクトレンズを使っているなら、コンタクトレンズを装着したほうが使いやすいだろう。

基盤(OS)とデバイスはそろった。残すはコンテンツだが、既にMicrosoft HoloLens向けUWPアプリが40種前後ダウンロード可能になっており、日本国内でも年内リリースを目標にいくつかのアプリやゲームの開発が進められている。日本マイクロソフトでは、11月18日から全国販売店でWindows MR体験コーナーの展開を予定し、日本マイクロソフト直轄は22店舗、OEMベンダー主導を含めると約400店舗での実施を予定している。この数は「米国と同等かやや上回る」(梅田氏)そうだ。日本マイクロソフトはパートナー企業とともに、コンシューマーユーザーへMRを体験してもらい、市場拡大を目指す。

Windowsストア改めMicrosoftストア(予定)に並ぶWindows MR対応UWPアプリは既に40種以上

なお、今回の発表会では、Windows 10 Fall Creators Updateの新機能を中心とした特徴も語られた。一部は写真で紹介しているが、UDデジタル教科書体フォントについては過去の拙著記事をご一読いただきたい。

日本マイクロソフト Windowsプロダクトマネージャーの春日井良隆氏は、Windows 10 Fall Creators Updateが供える新機能の1つとして、視点でPCを操作するTobiiの「Eye Tracker 4C」を紹介した

3D機能としてMicrosoft Surface Hubの3Dモデルを「Mixed Realityビューアー」で会場と合成するデモンストレーションを披露。「聴衆に効果的なアピールが可能」(春日井氏)だ。またSurfaceペンをクリッカとして使える点も強調した

「フォト」の自動リミックス機能として動画に3D効果を加えることで、家族や友人と効果的な楽しみ方が可能になる

「My People」でご自身の父親にメールを送るデモンストレーションを披露する春日井氏。合わせて絵文字が強化されたこともアピールした

Microsoft EdgeはPDFのフォーム入力やペンによる描き込みに対応し、PDF/ePubといったテキストデータの読み上げ機能をサポートする。また、選択部分をCortana経由でWeb検索することも可能だ

現在VAIO S13などが対応する「携帯データネットワーク通信プラン」。対応するSIMカード用スロットを供えたPCでは、Microsoftストアからプリペイドデータプランを購入すると、外出先でネットワーク接続が可能になる

ランサムウェアよる被害を軽減するため、任意のフォルダーをシステムフォルダーレベルで保護する機能も加わった

Windows 10とは関係ないが、本発表会直前にMicrosoftが公表した「Surface Book 2」。Surfaceシリーズでは初のUSB Type-Cを搭載する

現行の「Surface Book with Performance Base」に比べてSurface Book 2のCPUは約2倍、GPUは約3倍の能力を持ちつつ、全体的に価格を抑えている。なお、15インチモデルの国内発売時期などは未定だ

阿久津良和(Cactus)