タムロン「18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD (Model B028)」は、APS-Cサイズの一眼レフカメラに対応した高倍率ズームレンズだ。その特長は、29~640mm相当 (キヤノン用) という圧倒的なズーム倍率を持つこと。レンズ交換なしであらゆるシーンに対応できる万能レンズといえそうだ。

タムロン「18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD (Model B028)」。各所にシーリングやゴム部材を配置し、簡易防滴構造を実現している。記事掲載時点の実勢価格は税込84,000円前後

キヤノン「EOS 80D」に装着。最近のタムロン製品に共通したシンプルなデザインを採用

29~640mm相当の焦点距離

まずは、18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD (Model B028) の基本スペックを確認しておこう。レンズマウントは、今回使ったキヤノン用のほかにニコン用を用意。35mmフィルム換算の焦点距離は、キヤノン用では29~640mm相当、ニコン用では27~600mm相当になる。

下のカットは、同じ場所からズームの18mm側と400mm側で撮影したもの。レンズ一体型のコンパクトデジカメではこれくらいの倍率は珍しくないが、一眼レフ用レンズとしては画期的なズーム域だ。

ワイド端で撮影。マニュアル F8 1/80秒 ISO100 WB:太陽光 焦点距離:18mm

テレ端で撮影。マニュアル F6.3 1/125秒 ISO100 WB:太陽光 焦点距離:400mm

レンズ本体のサイズは最大径79mm×長さ123.9mmで、フィルター径は72mm。質量は710g。ズーム比22.2倍という高倍率なので、それなりに大きくて重い。テレ端300mmに対応した既存レンズ「16-300mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD MACRO」は質量540gなので、それに比べて約170gも重くなっている。

とはいえ、標準ズームや超望遠ズームなど複数のレンズを1本にまとめたと考えれば、これでも小型軽量といえる。今回はキヤノンのAPS-C中級機「EOS 80D」に装着して使用したが、ボディとのバランスが取れているため、特にレンズの重さを負担に感じることはなかった。

ワイド端の18mmの状態。ズームリングの回転は重め。自重で伸びることは少ない

テレ端の400mmの状態。鏡筒は3段繰り出し式で、大きく突き出る

AFには、磁石の力で回転力を得る独自のモーター「HLD (High/Low torque-modulated Drive)」を採用。AF速度はややのんびりしていて、動きの速い被写体を捉えるのは得意ではない。置きピンなどフォーカスロックを上手に活用して対応するといいだろう。作動音については静かであり、特に気にならない。

シャッター優先AE F6.3 1/500秒 ISO3200 WB:太陽光 焦点距離:400mm

シャッター優先AE F5 1/250秒 ISO3200 WB:太陽光 焦点距離:50mm

使用感は、「とにかく使っていて楽しい」というのが率直な感想だ。後述するように画質に課題があり、AFのレスポンスも高速とはいえない。しかし焦点距離の選択の幅が非常に広く、広角から標準、望遠、超望遠までを瞬時に切り替えられるのが心地よい。特に、通常はほとんど持ち歩くことがない「640mm相当」をスナップ感覚で使うことで、構図や撮り方に関してふだんは気付かないような発見さえある。

マニュアル F9 1/100秒 ISO200 WB:太陽光 焦点距離:400mm

マニュアル F11 1/250秒 ISO100 WB:太陽光 焦点距離:50mm

レンズ側面には、ズームを18mmに固定するロックスイッチを備えている