目元を印象的に見せてくれるまつ毛。つけまつ毛やまつ毛エクステンションなどのアイテムを用いて、より目元のパッチリ感を強調している女性も少なくないだろう。ただ、このまつ毛に実はダニが潜んでいるのをご存じだろうか。

今回はあまきクリニック院長の味木幸医師に、まつ毛ダニによる症状や生息する原因などについて伺った。

ダニのせいで数年もまつ毛が生えなくなる

まつ毛ダニは、上下まぶたの縁にある分泌腺「マイボーム腺」にすみつく。マイボーム腺は皮脂を分泌し、角膜の乾燥を防ぐなどの役割を持つが、この部分が詰まると脂分がたまっていく。

「まつ毛ダニは脂分を好むため、マイボーム腺がつまって不衛生な状態が続くとダニが繁殖してしまって、まつ毛の根元に生息することもあります。まつ毛の根元にぼそぼそした脂っぽい物が付いているような感じです。まつ毛ダニが繁殖して状態がひどくなると、最終的にはまつ毛が不規則に生えてくる睫毛乱生(しょうもうらんせい)になります」。

睫毛乱生によって取れたまつ毛が目に入ると、目がゴロゴロしたりチクチクしたりしてかゆみを覚える。それだけではなく、まつ毛が抜けやすく生えにくくなるという症状も出る。ひどい場合は数年もの間、まつ毛が生えてこないこともあると味木医師は話す。

黄ばんだ皮脂が見えるまつ毛。生え際からまぶたの縁までの部分にマイボーム腺がある(※写真はあまきクリニック提供)

目元が不潔な人は要注意

生活をしていれば皮脂は必ず分泌されるため、まつ毛ダニは私たちの誰にでも潜んでいる可能性がある。ただ、味木医師は「健康な人には普通、まつ毛ダニはいません」としたうえで、その"生息率"は1割ほどではないかと推測する。

逆に、まつ毛ダニが潜んでいやすい人の特徴はあるのだろうか。味木医師は「目元が不衛生な人」をその一つとしてあげた。洗顔が不十分だと皮脂などの汚れがたまりやすくなり、ダニが好む環境につながるからだ。

そしてもう一つの例として「高齢者」があると話す。その理由は、「マイボーム腺のつまりは、もともと加齢に伴う新陳代謝の低下によって起こるためです」。例えば要介護状態になって、毎日の入浴や洗顔が難しくなるような場合では、その"生息率"はさらに高まると言える。

マイボーム腺のつまりはドライアイなどにつながる

目のかゆみ、まつ毛の抜けなどの症状につながるまつ毛ダニではあるが、「まつ毛の見た感じが正常で、何らかの自覚症状もトラブルもなければ放っておいても大丈夫です」と味木医師は解説する。

まつ毛ダニによる症状自体はそこまで深刻ではないが、その呼び水となるマイボーム腺のつまりには要注意だ。マイボーム腺がつまって不衛生な状態が続くと炎症を起こし、ドライアイやものもらい、アレルギー性結膜炎にもつながりかねないからだ。

まつ毛ダニや付随疾病を招かないためにも、くれぐれもマイボーム腺は清潔を保つようにしよう。

記事監修: 味木幸(あまき さち)

あまきクリニック院長、慶緑会理事長。広島ノートルダム清心高校在学中に米国へ1年の留学。米国高校卒業後に母校に戻り、母校も卒業。現役で慶應義塾大学医学部入学。同大学卒業後、同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。医師として痩身や美肌作り、メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。