発売直前のタイミングだったこともあり、「CP+2014」でタッチ&トライに30分以上の行列を作った富士フイルムのミラーレスカメラ「FUJIFILM X-T1」。クラシカルなレンジファインダー風だったそれまでのXシリーズと異なり、ペンタプリズムを持つ一眼レフを想起させる精悍なデザインとなったことも、より多くの写真愛好家を振り向かせた要因のようだ。では、そんな超話題作「X-T1」のレビューをお届けしよう。
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富士フイルム、「X」シリーズ初の防塵・防滴ミラーレス「FUJIFILM X-T1」(2014年1月28日)
唐突だが、「FUJIFILM X100S」は素敵なカメラだった。撮っている間は、設定やピントなどどうでも良かった。ただファインダーを覗いて、シャッターを切る瞬間の気持ちの揺らぎを小気味よくで刻んでいく、そんな感覚に心酔していた。「あなたが今キレイだと感じているのはこの反射でしょ」「この色の深みが撮りたいんだよね」と、カメラが語りかけてくる。そんな感覚さえあった。
もちろん画質も素晴らしかった。繊細な描線、豊かな階調をもつ濃淡の距離。そこに富士フイルムならではのフィルムシミュレーションが加わって、被写体の姿をわき上がるイメージへとさらに近付けていく。
だからこそX-T1には、発表の報を目にした瞬間から期待していたのだ。半ば過剰というほどに。そりゃCP+2014で30分以上並ぶのも無理はないと思った。
そして手にしたX-T1。構えた両手にスッと収まるコンパクトさ。しっかしりた剛性感があり、「いいものを持っている」ことを実感させてくれるフルマグネシウム・フレーム。鋳造やシボ革をイメージさせる表面テクスチャー。アルミ削り出しのダイヤルと目盛り、数字が立体的にひしめきあう軍艦部……。もう、これを肴に酒が飲めそうなデザインではないか。この心躍らせる外観は、X-T1最大の魅力といっても決して大袈裟な話ではない。
ただし、それが撮影のしやすさと結び付いているかどうかは少々別の話だ。X-T1はシャッター速度と露出補正、ISO感度設定が独立したダイヤルとして軍艦部に設置されており、絞りはレンズの絞り環で設定する。すべてをオートに設定するとフルオート(プログラム)撮影となり、どれかの要素を任意の数値に設定すると、それが優先される。たとえば、すべてオートの状態から絞りだけを動かしてF値を設定すれば、絞り優先オートになるという具合。すべての要素を任意に設定すれば、マニュアル撮影となる。
このシステムが優れているのは、電源を入れる前から撮影設定が行える点と、絞り環のみの操作で絞り優先オートが使える点だ(シャッター速度やISOのダイヤルより、レンズの絞り環が圧倒的に使いやすい)。ダイヤルには「目盛りや数値が書かれているぶん、数値の変化を感覚的に把握して回せる」感覚がある。この量的な数値感覚は、アナログ時計の時間把握にも似ている。