IPコアのロードマップ

氏はまずCPU/GPUのIPコアそのものについての説明を行った。High Performance向けとしては現在Bulldozerに加え、PiledriverベースのTrinityがMobileのみでリリースされている状況で、Desktop向けのTrinityとかAMD FX向けのPiledriver搭載製品は今年後半になってしまっているが、ロードマップとしては第三世代のSteamrollerと第四世代のExcavatorが予定されていることが明らかにされた(Photo02)。この情報そのものに新しさはないのだが、Steamrollerが"Greater parallelism"、Excavatorが"Greater Performance"とあるあたり、Steamroller世代はPiledriver世代と比較して更に多くのModule/Coreを集積し、ExcavatorはこのSteamrollerと同じ構成で更に性能を引き上げる、という方向性を取ることを示唆しているように思える。

Photo02: Bulldozer→Piledriver→Steamrollerでは性能の上がり方が直線的というか、それほど大きく引きあがらないあたり、Microarchitectureの刷新はExcavator世代まで持ち越しなのかもしれない。Steamroller世代は後述の様に28nmプロセスへの移行と、これに伴いModule/Coreの増強+省電力化がメインになるように思う。

一方Bobcatに代表される省電力コアであるが、こちらも第二世代のJaguarに加えて第三・第四世代の製品が明確に示された(Photo03)。コード名が示されないあたりがまだ謎めいているのだが、その代わり第三世代では3W以下、第四世代では2W以下という目標が示されたのは初めてである。

Photo03: この表の縦軸がPerformanceなのでちょっと誤解しそうだが、横軸は逆方向にAPU Powerとしており、要するにPerformance per Wattの改善という路線に変わりはない。

ついでGPU IPの説明であるが、ここで突如として登場したのがAMD FirePro W9000である(Photo04)。氏は実際の製品も示し(Photo05)たが、今回はチラ見せであり、正式発表は" SIGGRAPH 2012になると思う"との話であった。ただこれに続く、つまりGCNの第二世代に関する説明は今回一切なく、こちらの詳細はもう少し先にならないと公開されない模様だ。

Photo04: メモリこそ6GBであるが、単精度で4TFlops、倍精度で1TFlopsという数字はRadeon HD 7970の3.79/0.947TFlopsから5.5~5.6%の性能改善でしかなく、動作周波数で言えば925MHzのRadeon HD 7970を976MHz前後で動かしたのに等しい。ということで、これはおそらく(登場が噂される)1GHz駆動のRADEON HD 7970をベースにしたものと思われる。

Photo05: Photo04の画像とまるで異なる外観。これの正体は次の写真で。後ろに突き出しているものは、Papermaster氏が持つプレゼンテーション操作用のリモコンで、FireProとは無関係。

ところで「これは本当にW9000なのか?」というあたりにやや疑念は残る。というのは、Papermaster氏はPhoto05の様に上側しか見せなかったのだが、これを舞台脇のテーブルに置く際に一瞬裏側を撮影することができたのだが(Photo06)、基板面を見る限り、どうみてもGPUが2つ搭載されているようにしか見えなかったからだ。ということは、このカードはNew ZelandことRadeon HD 7990のリファレンスの可能性もあるのだが、そうするとPhoto04の数字と激しくアンマッチである。まだRadeon HD 7990の動作周波数などは示されていないのだが、普通に考えると925MHzは無理にしても600MHzやそこらで動作するのは間違いないところで、そうなると合計性能は単精度なら6TFlopsあたりに達しても不思議ではないからだ。ということは、実はPhoto04のW9000とは別に、2GPU版のFireProが用意されているという可能性もある訳で、このあたりは引き続き謎として残ることになった。そういえばPhoto05のシールも、よく見ると、微妙にFireProのシールの位置が不均等ではある。

Photo06: なにしろ氏が激しく振り回していた関係で、被写体ブレしているのはご勘弁いただきたい。赤丸で囲った部分がGPUのある場所になる。

ついで、AMDが昨日発表したARMのTrustZoneの搭載の話が登場した(Photo07)。TrustZoneが何か、を正確に理解するにはこちらを読んでいただくのが早いが、要するにCPUの内部にセキュリティドメインを作り、これがシステムを監視するというものである。同種のものとしてIntelが提供するIntel TXT(Trusted Execution Technology)があるが、こちらはIntelが自社で規格を定めるもので、他社には技術提供を行っていない。TrustZoneはARMが広くライセンスするもので、こちらは当然ライセンスを受ければどのメーカーも利用可能なもので、AMDもこれのライセンスを受け、Cortex-A5コアをTrustZone専用に搭載する形でこれを実装するとしている。こちらはまず2013年に登場するAPUに初搭載され、2014年以降は広い範囲(おそらくOpteronグレードに加えてGPUにも搭載される可能性も高い)で利用されるという話だ。

Photo07: TrustZoneを利用するためには当然OS側の対応も必要になるので、今すぐどうこうという話ではないが、AMDがTrustZoneを採用したことの意味は結構大きいと思われる。もちろんHSAと絡めて、という話であるが。