「心が休まらない」「不安を感じる」など、忙しい現代社会においてメンタル不調を来す人は少なくないはず。本連載では、臨床心理士の松島雅美先生が心の仕組みをはじめ、メンタルを鍛える方法などを紹介していきます。

→連載 第一回目を読む「メンタルの強い人・弱い人の違いって?」

  • "心の疲労"は「脳の機能低下」にあり!?

前回、メンタルが強い人と弱い人の違いや特徴について説明しました。連載の第二回目は、Je respire代表取締役であり臨床心理士の松島雅美先生に、「脳」についてのお話を伺いたいと思います。先生は、誰でも簡単に日常生活で取り組める心のケア方法「メンタルブレス」を監修。ふだん「メンタルブレス講座」で伝えているという"心のメカニズム"から、今回は「脳と心の関係性」についてお届けしていきます。

  • Je respire代表取締役であり臨床心理士の松島雅美先生

■メンタルは脳にある!?

「メンタルは"機能"であり誰でも鍛えられるということは前回お伝えしましたが、鍛えるために必要なのは脳をしっかり働かせることです。メンタルは脳にあり、私たちのメンタルの状態は常に脳によって作られています」

そう、先生いわくもっとも働かせるべきなのは、脳の最高司令塔である「前頭前野」だそう。ここは、人間らしさをつかさどる場所であり、感情のコントロール、状況に合わせて判断をしたり、意思決定をしたりするときなど、認知・実行の要となる機能を担っています。そのほかにも、考える、記憶する、アイディアを生み出すなど、人間にとって重要な働きをするのが「前頭前野」。

ここを鍛えて働かせることによって、私たちの毎日は豊かになり、メンタルが安定するといっても過言ではないんだとか。

「コロナ禍によってリアルコミュニケーションが減ってしまい、オンライン中心の生活になってしまったことは、脳にとって非常によくない出来事でした。デジタルによる目の疲れは、脳疲労にもダイレクトにつながります。そして視覚以外の五感を使うことが減り、情報をインプットしながらも言葉や行動でアウトプットする機会が減り、悪いサイクルに陥ってしまったのです」

体であれば、筋肉痛のようにわかりやすく機能の状態を感じ取ることができますが、脳の疲れは感じ取りづらいもの。その異変には、どのように気づけるのでしょうか?

それは「不快を感じやすくなったかどうかだ」と、松島先生。脳には、「扁桃体」という機能が存在します。恐怖や不安といったネガティブな感情に大きく関わりを持つ「扁桃体」が過敏になってしまうと、私たちは不快を強く感じてしまうんだとか。

この「扁桃体」は「前頭前野」が活性化していると落ち着く仕組みになっていて、「前頭前野」の体積が大きい人はストレスから身を守りやすく、メンタル不調になりくいという研究データもあるほど。

「まずは人とのコミュニケーションを増やして『前頭前野』を活性化させ、自分を客観的に見ることを意識してみてください。物事をいろんな視点から見て、いろんな立場から考えられるようになることもスキルの一つ。トレーニングすれば鍛えられるという点は、脳も体も同じですね」

また、心の病気である「うつ病」は、"前頭前野の機能不全"とも推測されています。脳が弱っているときは頑張ろうとしても頑張りきれない。「脳の機能低下」はうつ病の人の共通点だと言われるように、良好なメンタルを保つにあたっては脳の一部である「前頭前野」が非常に重要な役割を担っているのです。

「みなさんも自分の生活環境や、快不快を、改めて考えてみてほしいと思います。毎回ストレスの要因が明確であれば対処できるかもしれませんが、日々のストレスはボディーブローのように溜まっていくもの。例えば毎日の満員電車だって、不快なものの一つのはずです。これをやっているときは気分がいいな、この人としゃべっていると楽しいななど、そんな時間を作るだけでも立派な脳の疲労回復。脳の健康を維持するために"快の状態"を作ることを意識し、それを習慣化できたら、なおいいですね」


次回は「メンタルを健康に保つために必要な"自己決定力"」について。身につけるにはどうしたら? それを、第3回では、ひも解いていきたいと思います。