のし袋は、結婚式のご祝儀や、葬儀や法事の香典などを入れる袋です。慶事と弔事、またその内容によって、のし袋の表書きや、中袋の書き方は異なります。

そして金額や名前の書き方にのし袋の折り方、水引の種類や色などにもマナーがあります。今回は、そんなのし袋にまつわるマナーを徹底解説します。

  • のし袋の書き方について解説します

    のし袋の書き方について解説します

のし袋の表書きの書き方における基本

のし袋の上段(水引の上)には、何として贈るのか、「御祝」「寿」「御霊前」などの名目を記載します。下段(水引の下)には、名目より小さめに贈り主の名前を書きましょう。

表書きは基本的に毛筆で書きますが、最近では筆ペンやフェルトペン、サインペンなどを用いることも多いようです。ただし、ボールペンや万年筆など、線が細いペンはマナー違反となるので注意しましょう。

文字の色は、お祝い事の慶事とお悔やみの弔事で異なります。慶事では濃い墨、弔事は薄い墨で記載しましょう。

慶事・お祝い事(ご祝儀袋)の表書き - 「寿」「御礼」など

お祝い事の慶事について、書き方を見ていきましょう。

結婚祝い・ご祝儀の表書き一覧

結婚をする人に贈る結婚祝いのギフトや、結婚式で参列時に持参するご祝儀について、表書きの例を紹介します。

表書き シーン
寿・壽・御結婚御祝 結婚祝い・ご祝儀を贈るとき

最近の市販ののし袋には「ご結婚おめでとうございます」といった話し言葉での表記や、「HAPPY WEDDING」など英文表記もあります。友人など親しい間柄なら、こうしたカジュアルな雰囲気も喜ばれるでしょう。

婚礼にまつわるお返しやお礼の表書き一覧

仲人や結婚式に携わった人などへ、お礼として渡すのし袋の表書きの例を紹介します。

表書き シーン
寿・壽 引き出物に使用
御礼・寿 仲人に対するお礼
御礼・御祝儀 結婚式関係者に対するお礼
献金 教会式のお礼(カトリック・プロテスタント共通)
御初穂料(おんはつほりょう)・御玉串料(おんたまぐしりょう) 神前式のお礼
御供物料 仏前式のお礼

帯祝い(安産祈願)にまつわる表書き一覧

「帯祝い」とは妊娠5カ月目の戌(いぬ)の日を目安に、神社またはお寺などで行う安産祈願の儀式です。妊婦へのお祝いとしては、妊婦帯や岩田帯と呼ばれる腹帯、またはお金などを贈ります。

下記に表書きの例をまとめました。

表書き シーン
祝い帯 妊婦帯を母方の実家より贈るとき
御帯 妊婦帯を娘以外の妊婦へ贈るとき
寿・御帯祝 お祝いのお金を妊婦へ贈るとき
御初穂料・御玉串料 神社へのお礼
御祈祷料・御布施 お寺へのお礼

出産祝いの表書き一覧

次に出産祝いの表書きの書き方の例です。

表書き シーン
御初着・御初衣(ともに、おんうぶぎ) 母方の実家より肌着のギフトを贈るとき
初着料・はだぎ料 母方の実家よりお金を贈るとき
祝御安産・御出産祝・御出産御祝・御祝 親族・友人・職場の人など知人へギフトやお金を贈るとき

友人など親しい間柄なら、市販ののし袋の表書きを参考に「HAPPY NEW BABY」などカジュアルな表現でも喜ばれるでしょう。

入園・入学祝いの表書き一覧

入園・入学祝いの表書きの例です。

表書き シーン
御入園御祝・御入学御祝・入園祝、祝入学 入園・入学のお祝いの品やお金を贈るとき

卒業・就職・成人祝いの表書き一覧

卒業・就職・成人祝いの表書きの例は以下のようになります。

表書き シーン
祝御卒業・御卒業御祝 卒業のお祝いの品やお金を贈るとき
就職御祝・祝御就職・御就職御祝 就職のお祝いの品やお金を贈るとき
成人式御祝・御成人御祝・祝御成人 成人のお祝いの品やお金を贈るとき

長寿祝い(賀寿)の表書き一覧

「還暦」、「米寿」などを総称して「長寿祝い」「賀寿(がじゅ)」といいます。年齢別に名称が異なり「祝○○」などの形で書くのが一般的です。年齢ごとのお祝いの名称は以下のとおりです。

数え年 お祝いの名称
61歳 還暦(かんれき)
66歳 緑寿(ろくじゅ)
70歳 古希(こき)
77歳 喜寿(きじゅ)
80歳 傘寿(さんじゅ)
88歳 米寿(べいじゅ)
90歳 卒寿(そつじゅ)
99歳 白寿(はくじゅ)
100歳 百寿(ももじゅ)
108歳 茶寿(ちゃじゅ)

ただ、現代において61歳はまだまだ若いとも考えられるので、「長寿祝い」を贈られることに抵抗を感じる人もいるでしょう。こうした人へ贈るのし袋の表書きは「賀華甲(がかこう)」がおすすめです。この他にも「寿」や「壽」、「御祝」も使用できます。

  • 名目はのし袋の上段、つまり水引の上に書きます

    名目はのし袋の上段、つまり水引の上に書きます

弔事(不祝儀袋)の表書き - 「御香典」「御見舞」など

ここでは、葬儀や法事、お見舞いの表書きの書き方について解説します。

葬儀や法事の表書き一覧

葬儀や法事ののし袋の表書きは、仏式・神式・キリスト教式で異なります。

【仏式(仏教)】

仏教では、四十九日を境に霊が仏になるとされているため、四十九日前は「御霊前」、四十九日以降は「御仏前」を使用します。ただし浄土真宗では「往生即成仏」の考えがあり、表書きには通夜・葬儀の際にも「御仏前」を使用します。宗派が不明なときは、「御香典」など広く使われる名目を書くといいでしょう。

表書き シーン
御霊前(ごれいぜん) 通夜、葬儀でお金や御供物を供えるとき
御仏前・御佛前(ともに、ごぶつぜん) 四十九日以降の法事でお金を供えるとき
御香典・御香奠(ともに、ごこうでん)・御香料 通夜、葬儀、法事などでお金や御供物を供えるとき

【神式(神道)】

神式で行うお葬式のことを神葬祭といいます。神葬祭が終わると、10日ごとに霊祭を行います。そして百日祭が終わると式年式へと移ります。下記に、神式での弔事にまつわる表書きの例をまとめました。

表書き シーン
御霊前 神葬祭でお金を供えるとき
御神前 式年祭でお金を供えるとき
御玉串料・御榊料(おんさかきりょう)・御神饌料(おんしんせんりょう) 神葬祭、霊祭、式年祭などでお金を供えるとき

【キリスト教式(カトリック・プロテスタント)】

キリスト教式の場合、葬儀は葬儀式といいます。そして法事にあたる儀式は、カトリックでは追悼ミサ、プロテスタントでは記念式といいます。表書きも宗派によって異なります。

表書き シーン 宗派
御弥撒料(おんみさりょう) 葬儀式、法事にあたる儀式でお金を供えるとき カトリック
御忌慰料(おんきいりょう) プロテスタント
御花料 カトリック・プロテスタント

お見舞いの表書き一覧

お見舞いの表書きの例をまとめました。

表書き シーン
御見舞・お見舞 病気・ケガ・自然災害などの見舞金として
近火御見舞(きんかおみまい) 近所で火災があった相手の安否を気遣ってお金を贈るとき
陣中御見舞(じんちゅうおみまい) 受験・公演・展示会・試合などの当事者へ激励としてお金を贈るとき

なおのし袋について、陣中お見舞い以外は、祝い事を示す「熨斗(のし)」がついていないものを選びましょう。また、相手の病状や療養状況が深刻であるときや、火事のお見舞いには、水引が付いていないものを使用してください。

【のし袋の種類について、より詳しく知りたいならこちら】
のし袋の種類を紹介! 法事などの弔事やお礼、お祝いやお祓いなどの使い分け
  • 葬儀・法事の際の名目は、宗派によって異なります

    葬儀・法事の際の名目は、宗派によって異なります

水引の種類や色

のし袋は慶事と弔事で水引の結び方や色が異なります。

結び方 意味 慶事・弔事
結び切り 人生一度きりであってほしいできごとに使用する結び方 結婚祝い・葬儀・法事など
あわじ結び(鮑結び) 結び切りを応用した結び方
蝶結び(花結び) 人生で何度でもくり返し起きてほしいできごとに使用する水引の結び方 出産祝い・入学祝い・長寿祝いなど

水引の結び方はこれら以外にも「輪結び」「梅結び」「叶結び(かのうむすび)」などさまざまなものがあります。

続いて水引の色を見てみましょう。

水引の色 慶事・弔事
金銀 結婚祝い・新築祝いなど
紅白 慶事全般
五色 出産祝い・入学祝いなど
黄白 法事など
黒白 葬儀など
双銀 葬儀・仏事全般

水引の色は地域や宗派などによって異なるため、迷ったときは身近な人に確認をとりましょう。また、水引のデザインが印刷されているのし袋は、1万円以下の金額を包むときに使用してください。

水引の本数は慶事・弔事ともに、3本・5本・7本といった奇数が基本といわれています。本数が多いほど、格式が高いとされます。ただし「苦」を想起させるため、9本結びは一般的には用いられません。なお、主に結婚に関しては10本もよく使われ、これは5を倍にして「両家が合わさる」という意味を持つとされています。

  • 近年はデザイン性の高いのし袋も多いです

    近年はデザイン性の高いのし袋も多いです

のし袋の名前の書き方

名前は水引の下に書きます。のし袋には表書きを直接書くタイプと、短冊に書くタイプがありますが、人数によって名前を書くスペースが限られるため、後者の場合は注意が必要です。

1名の場合

1名なら水引より下側の中央部分にフルネームで書きます。文字の大きさは上段に書いた名目よりもやや小さめに書くのがルールです。

【連名】2名の場合|夫婦など

名字が同じ夫婦の場合、中央に名字を書いたら、その下に中央を挟んで右側に夫の下の名前、左側に妻の下の名前を書きます。または中央部分に夫のフルネームを、その左に、夫の下の名前と頭をそろえて妻の下の名前を記載します。名字が異なる場合は、ともにフルネームで記載しましょう。

友人や同僚同士などで2名連名のときは、右から五十音別にフルネームで記入するといいでしょう。1人目を中央にするか、または2人の名前の間が中心になるように書いてください。

【連名】3名の場合|部署など

3名連名の場合は、その中で目上にあたる人を中央にし、左側に順にフルネームで書いていきましょう。同僚や友人など上下関係のない場合は、右から五十音順にフルネームを記載します。バランスよく見えるように、2人目を中央に配置する場合もあります。その場合は、2人目の名前を先に記入すると書きやすいでしょう。

文字はすべて大きさをそろえます。文字数が多くなるため、短冊タイプののし袋は向いていません。

【連名】4名以上の場合|会社や団体など

表書きに書くのは3名までが基本です。4名以上の場合は、代表者のフルネームを中央に記載し、左隣に「外一同」「他一同」などと書き添えます。部署単位の場合は「他○○部一同」などの文言を書きます。会社名や組織名などを入れる場合は、代表者の名前の右側に、ひとまわり小さな文字で書きましょう。

相手に全員の名前を伝えるため、別紙に全員分の名前を書いて中袋に同封しておきましょう。

  • 短冊タイプは書くスペースが限られているため、複数人で渡すときは注意してください

    短冊タイプは書くスペースが限られているため、複数人で渡すときは注意してください

のし袋の中袋(内袋・中包み)の書き方

のし袋には、現金を入れる中袋(内袋)がついています。一般的に、贈る金額が1万円を超える場合や目上の人に贈る場合は、中袋を利用します。 種類によっては中袋がついていないのし袋もありますが、その場合もそのままお金を入れるのは失礼にあたります。白封筒や白い紙を折って包むなど、代用品で対応しましょう。

中袋には受け取った相手がお金などの管理をしやすいように、金額と名前、住所などを書きます。表書きと同様に、なるべく毛筆で書いた方がいいですが、最近は筆ペンやフェルトペン、サインペンなど書くことも多いようです。

金額は大字・旧字体で書く

慶事(ご祝儀)の場合は表面中央に、弔事(不祝儀)は表面中央または裏面右下に、大字(だいじ)や旧字体で金額を記載します。

アラビア数字 漢数字 大字・旧字体
1
2
3
5 五または伍
7
8
10 十または拾
1,000
10,000
×

例えば「1万円」を入れる場合、「金壱萬円(圓)也」と書きます。「也」には端数はないという意味があり、古くからのマナーとされていますが、近年では省略してもいいという考え方もあるようです。

【のし袋への金額の書き方について、より詳しく知りたいならこちら】
のし袋の金額の書き方は? 数字の一覧や中袋、水引に関する注意点なども解説

中袋の裏側に名前・住所を書く

中袋の裏側には名前と郵便番号、住所を書きます。左下に縦書きで書きましょう。

  • 住所や氏名などの記入欄が印刷されている場合は、そこに記載しましょう

    住所や氏名などの記入欄が印刷されている場合は、そこに記載しましょう

のし袋のお金の入れ方

お金について、一般的に慶事では新札を使用しますが、弔事では新札を使用してはいけないとされています。

ここからは、ご祝儀や香典の相場と、お金を入れた際ののし袋の折り方について解説しましょう。

結婚式のご祝儀や香典の相場は何円?

一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会が実施した「祝儀(結婚祝い)等に関するアンケート調査」によると、ご祝儀は兄弟姉妹、叔父叔母の関係にあたる場合を除いて、3万円が最多の回答となっています。職場の人や取引先の結婚式などに参列する際も同額で失礼はないでしょう。ただし、自分が上司として部下など目下の相手に贈るときは、同僚や部下が贈る場合に比べて平均額がやや高くなっています。

弔事については、同法人の「香典に関するアンケート調査」によると、最多回答が親には10万円、それ以外の親族には1万~3万円、職場関係や友人などには5,000円となっています。

ただし、相場は地域や年代によっても異なるので、迷う場合は周囲の人と相談しながら決めるといいでしょう。

お金の向きとのし袋の折り方

お金を入れるときは、ご祝儀は表面で肖像画が上、香典では裏面で肖像画が下になるように入れることが多いようです。近年では必ずしも守らなくてはならないとはされていませんが、こうしたマナーを気にされる方もいるので覚えておきましょう。

中袋にお金を入れたら、上包みの中に中袋を収めます。慶事と弔事で袋の折りが異なるので注意しましょう。

シーン 上包みの折り方
慶事 下の折りが表面にくるように重ねる
弔事 上の折りが表面にくるように重ねる

不安な場合は、のし袋を購入したときの形をスマホなどで撮影しておき、その写真を見ながら包み直すといいでしょう。

なお、形が崩れたり折れたりしないよう、のし袋は袱紗(ふくさ)に入れて持ち運ぶことがマナーとされています。もし準備できなかった場合は、ハンカチなどを代わりに使用しましょう。

【のし袋へのお金の入れ方について、より詳しく知りたいならこちら】
のし袋のお金の入れ方は? お祝いやお見舞い、香典などシーンごとに解説
  • のし袋は袱紗(ふくさ)に入れて持ち運びましょう

    のし袋は袱紗(ふくさ)に入れて持ち運びましょう

のし袋の書き方とシーンに応じたマナーを身に付けておこう

のし袋は結婚式や法事などで使用します。正しい書き方を身に付けることで、心からの祝福やお悔やみの気持ちを伝えることが可能です。近年はデザイン性の高いのし袋もあり、選ぶ楽しみも増えました。

ここまで解説したのし袋の書き方やお金の入れ方などのマナーは、ビジネスシーンでも重宝するマナーです。職場関係の冠婚葬祭にも自信を持って参加できるよう、しっかりと身に付けておきましょう。