マンション、特に高層で昇り降りの手段がエレベーターにほぼ限定されてしまい、何かあってもすぐに外に逃げられない住まいでは、もし火災が起きてしまったら……という心配は免れません。不動産・住生活ライターの高田七穂さんに、防火的観点から住まいを選ぶ際のポイントについて伺いました。

高層マンションの火災映像を見て怖くなった。どんな点に注意して住まいを選べばいい?

先日、ロンドンの24階建て高層住宅で大規模な火災が置きました。延焼にはさまざまな要因があったようですが、専門家からは外壁に燃えやすい材料が使用されていた点や、スプリンクラーがなかったりした点が指摘されています。バルコニーのない形状も火の回りを早めたという意見もあります。

日本国内では、過去に大規模な火災が起きたことをきっかけにして、さまざまな法整備がされています。例えば、外壁には燃えにくい材料を用いたり、11階以上のフロアにはスプリンクラーを設置したりするなどです(他の設備で代替できるなど、一部に免除規定あり)。ですから、同様の被害が起きることはあまりないといわれています。

とはいえ、不注意から火災が起きることはあります。火が回りやすい木造住宅では危険性は高くなります。さらに、建物が延焼しなくても、怖いのは酸化炭素中毒。煙を吸って意識を失ってしまうと、逃げられなくなってしまいます。

火災が起きないように、日頃から火の始末には気を配るのはもちろん、普段から消火体制を確認しておきましょう。内覧の際にも、「火災が起きたら」と考え、次のような点のチェックも大切です。

まず、火災警報器が室内にあるか見てみましょう。消防法では、すべての住宅で火災警報器を設置し、維持することが定められています。賃貸住宅での設置者は「関係者」となっています。この「関係者」とは、大家さん、不動産会社や管理会社、借りている人が該当しますが、多くの場合、大家さんが設置するものと考えられます。もし火災が起きて大きな被害があった場合、大家さんが不十分な住まいを貸したと判断される可能性がゼロではないからです。

内覧した住宅に火災警報器がなかったら、「火災警報器は設置されていないのですか」と大家さんや不動産会社に尋ねてみましょう。「借りる人に設置してもらうようになっています」という回答があれば、その住まいでよいのか、自分で設置できるかも考えましょう。確かに、借りている人が設置してもよく、インターネットでは1,000円台から販売されています。納得したなら、原状回復費用はどうなるのか、なども尋ねておきます。

また、設置されていても、火災警報器は10年を目安に取り換えが推奨されています。電池切れなどがあるからです。警報器の横にある日付を確認しましょう。内覧の際に、不動産会社に「この火災警報器はいつ設置したものですか」と尋ねてみるのもよいでしょう。

もうひとつ、消火器の場所も確認。延床面積150m2以上の共同住宅であれば、消火器の設置義務があります。ですから、かなり小規模な住宅でない限り該当します。消火器は共用廊下にあることが多いと思われますが、各室内にあることも。こちらも見つからなければ、大家さんや不動産会社に「消火器はどこにありますか」と尋ねておきましょう。消火器があっても、期限が切れていないか、横に書かれてある有効期限を確認しておきましょう。使い方も大切ですから、住んでいるマンションやアパートあるいは地域で防災訓練があるなら、ぜひ参加するようにしたいものですね。

高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『絶対にだまされない マンションの買い方』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。「夕刊フジ」にて『住まいの処方銭』連載中