賃貸物件の解約を決めて、部屋を明け渡す日には、通常不動産会社による立会いが行われます。その際、どのようなことに注意して不動産会社の担当者と確認作業をすれば良いのでしょうか。室内の状態についての管理側との認識のズレによるトラブルは極力避けたいですし、敷金が少しでも多く戻ってくるようにしたいですよね。そこで、今回は「お部屋の退去当日に特に気をつけたいポイント」について不動産・住生活ライターの高田七穂さんにお話しを聞きました。

Q 退去の日は荷物を出したら、一人で部屋を出ていいの?

A 必ず立ち会ってもらうようにします。ときおり、立ち会いがなく、トラブルが起きる例があるからです。

たとえば、「荷物を出したら、鍵を郵便受けに入れてから出てください」と言われ、その通りにしたところ、あとから「鍵が見当たらない。紛失したなら費用負担して」と言われた例があります。また、退去後に「壁紙が大きく破れているので修繕費用を払ってほしい」とされた話もあります。

こういった例はまれではありますが、いったん室内を出てしまうと、こちらに問題がなかったという証明ができません。退去後に以前の住まいで悩まされる事態は避けたいものです。

ですから、荷物を出したあと、室内の状態について、管理をしている不動産会社と一緒に、キズや汚れの状態を確認していきましょう。そして、自分がつけたものか、元々あったものなのか、伝えます。自分がつけたキズはきちんと認め、一方で、元々あったキズや日焼けなど経年劣化によるものなどはその通りに伝えましょう。ここで、不動産会社から「立ち会えない」と言われたなら、「室内の汚れやキズにより後日トラブルになるのを避けるために、大家さんに来てもらえませんか。長くお世話になりましたし、お礼も伝えたいです」などと伝えてみましょう。

立ち会いがある場合、確認した状況を用紙に記入していきます。最後にあなたがその用紙にサインをします。用紙のコピーを渡されることが多いですが、もらえないようであれば、コピーが欲しいことを伝え、自分でもメモを取ったり、室内の状況写真を撮ったりしておきましょう。

もう一つ。敷金の清算方法や返還の方法、時期なども聞いておきます。こちらも忘れずにメモをしておきます。戻ってくる金額の目安も聞いておくと安心です。鍵を引き渡して、おしまいです。

さらに、トラブルの芽を摘む対応は入居時から始まっています。転居先では、家具を入れる前に忘れずに室内の写真を撮影しましょう。そして、元の汚れやキズの状態を把握しておきたいものです。入居時と退去時の写真があれば、状況の変化がわかりやすくなります。入居時の写真は早めにプリントしておきましょう。

高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『絶対にだまされない マンションの買い方』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。「夕刊フジ」にて『住まいの処方銭』連載中。