首都圏だけでなく大都市の中心部では、次々にタワーマンションが建設されています。中心部ならではの利便性の良さやステータス感、普通のマンションでは得られない眺めによる開放感など、タワーマンションに魅力を感じるニーズがあるからこそです。しかし、私が毎回述べているのは、住まいは資産だということです。お金の面で考えて、タワーマンションのメリットやデメリットはどのようなものか、考えてみましょう。

タワーマンションをメリットに感じる理由

立地が良く便利…多くは都市の中心部にあり、通勤通学に便利で、高齢者にとっても多くの文化施設に近く、気軽にさまざまなレジャーを楽しめます。旅行に行くにもターミナル駅に近かったり、空港へのアクセスが良かったりと、豊かな老後が楽しめそうです。

資産価値が高い…利便性の高い立地であるので、売却する際に資産としての目減りが少ないことが期待できます。また、賃貸物件としてもニーズが期待できます。

ステータス感に憧れる…住まいを取得することは大きな喜びです。どうせなら、満足感が得られ、日々喜びが感じられる住まいを取得したいと誰もが思います。仕事への励みにもなり、名門校へのアクセスも良く、よい教育環境も与えられます。

投資対象としてメリットが高い…タワーマンションは相当の部分を投資目的の購入者が占めます。新築で販売が始まると直ちに賃貸関連の情報誌に多くの住戸が対象物件として掲載されたりします。

付帯設備・サービス等が充実している…ジムなどの設備が併設されているケースもあり、コンシェルジュサービスも充実している傾向にあり、便利です。

そのほかにもいろいろあるでしょうが、多少無理してもタワーマンションに入居したい憧れ派から、冷徹に利益を追求する投資家まで、通常のマンションと比較して、入居者のタイプが多岐にわたるのが特徴といえます。数年で転居していく賃貸入居者より、区分所有者の入居者同士の方が、親近感が増します。自分自身が住むのであれば、区分所有者の入居者の割合が多い方が安心です。

投資目的と節税効果

タワーマンションの上層階の節税効果が一時話題になりました。なぜ節税になるかと言えば、タワーマンションの上層階の売買価格(市場評価)は低層階と比較してかなり高いのに、固定資産税の評価額は低層階と変わりません。毎年の固定資産税も購入価格に対して割安になりますし、相続が発生した場合の評価額は固定資産税が基準となるので、相続財産の圧縮が可能になるのです。

相続財産の種別による節税効果

ケースA: 現金1億円→そのまま1億円の評価
ケースB: マンション売買価格(建物部分)1億円→固定資産税評価額約7,000万円→居住用財産であればさらに評価が低くなることもある。
ケースC: タワーマンション売買価格(建物部分)1億円→低層階が7,000万円程度の売買価格であれば固定資産税評価額4,900万円程度➝居住用財産の特例も利用できる場合がある。

※固定資産税評価額は市場価格の70%程度

政府は毎年暮れに次年度の税制改正大綱を発表します。今まではごく一部の例外を除き、大綱に盛り込まれた改正が実現してきました。今年の税制改正大綱に、タワーマンションの固定資産税の考え方の改正が盛り込まれる予定です。実態の売買価格に即した固定資産税の課税方法となり、上層階の固定資産税が高くなる見通しです。ただし2018年以降に引き渡されるものが対象で既存のマンションは従来通りの課税方法となる予定です。

管理費

高層ビルはマンションに限らず、エレベーターや階段など共用部分の面積比が大きくなります。活用できるスペース、マンションで言えば居住スペースの割合が小さくなり、その分売買価格も管理費も割高になります。エレベーターなどの維持管理費も割高となり、コンシェルジュサービスやジムなどの付帯設備があれば、その分も加算されます。大規模世帯によるメリットは多少ありますが、タワーマンションの入居者はセキュリティの良さや管理の良さも期待していると思われるので、サービスや設備が充実している傾向にあります。管理費はそれに見合ったものになります。

大規模修繕と修繕積立金

タワーマンションの現状…タワーマンションが建設されて以来、次々に大規模修繕の時期に突入し始めていく時期です。私の友人の構造設計の専門家は、早くからタワーマンションのその後の不透明さを懸念していました。まだ大規模修繕の工事のノウハウも管理組合としてのソフト面も確立しているとは言えません。例えば免震構造を支えるゴムがどのように劣化するのか、それをどう交換するのかは経験がありません。どの程度費用がかかるのかは未知数なのです。

不足しがちな修繕積立金…販売会社は修繕積立金が多いと売れにくいので、低く抑える傾向にあります。大規模修繕時にかなりの額の一時金が必要となる場合も考えられます。タワーマンションの大規模修繕の技術が確立していくにつれて、工事費もアップする可能性があります。

経験の少ないタワーマンションの大規模修繕…技術面の問題もあります。タワーマンションは当然ながら設計時にメンテナンス方法も考えられていなければなりません。しかし、残された設計図を基に修繕方法を検討するのは時として困難を伴う場合もあります。当初建設した工事会社に大規模修繕もゆだねざるを得ない場合も考えられます。一社指定は高く見積もられてしまいますし、当初の工事の問題点があっても闇の中になります。

何度か大規模修繕を経て、建て替えのケースとなるとさらに不透明です。区分所有者のタイプが多岐にわたるということは、投資の採算面から通常のマンションより早めに建て替えになるケースや、投資目的の所有者が売り逃げて、憧れ派が多くなり、コストがかかるだけになかなか建て替えられないケースなど、通常のマンションとは違った流れになることも考えられます。

タワーマンションは住民のタイプが多岐にわたることは、将来の問題点として頭に入れておくことは大切でしょう。居住を目的としてタワーマンションを購入するのであれば、区分所有者の入居者の割合は確認しておいた方がよいでしょう。特に子育てするのであれば、子どもにとってはその地が故郷となります。本来は子供にとって路上から「遊びましょ!」と声がかけられる環境が大切です。子供にとって常に周囲の環境が開かれていて、音をはじめさまざまな情報に接していることが大切なのです。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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