2014年6月の鉄道ニュースはJR東日本の田町~品川間新駅と豪華列車の発表でスタートした。JR西日本は新型車両227系を、JR北海道は北海道新幹線の新駅名「新函館北斗」「奥津軽いまべつ」決定を発表するなど、未来へ向けたJRグループの話題が多かった。

田町~品川間の新駅には山手線・京浜東北線ホームが設置される

ついに正式発表! 山手線・京浜東北線に新駅

6月3日、JR東日本は田町~品川間の新駅設置計画を発表した。広大な車両基地を縮小し、新たに生まれた広大な敷地を再開発する。新駅はその新しい町の中核となる。「2020年の東京オリンピックに向けて暫定開業」とJR東日本が発表したため、新駅はオリンピック関連事業という見方も多い。しかしこの計画は国鉄時代からあった。

東海道本線と東北本線がつながれば、車両基地は郊外に移転できる。空いた土地を売却することで、累積赤字の解消に寄与するという目論見だった。2000年、運輸省(当時)の諮問機関「運輸政策審議会」が、「東北縦貫線(上野東京ライン)を2015年までに整備すべき」と答申している。こうした経緯から、田町~品川間の新駅は1980年代後半から何度も噂されては立ち消えになっていた。港区や東京都が先行して周辺の整備計画を策定している。その間もJR東日本は新駅設置を公式発表しなかった。今回の発表は、上野東京ラインの開通が確定的になったからだろう。

JR東日本は新駅の駅名について、「公募も検討する」という。付近には泉岳寺駅がある。京急電鉄の起点であり、都営地下鉄浅草線と接続する駅だ。乗換えの便利さから考えると同名が良さそうだ。しかし、駅名の由来となった泉岳寺が、駅名として使わないよう裁判を起こした経緯がある。裁判は決着し、泉岳寺駅の駅名は残った。さて、「泉岳寺」を決着済みとして使うか、それとも避けるか、どちらだろう? 「芝浦駅」「芝浜駅」などいくつか声も上がっており、しばらくは新駅の話題が続きそうだ。

JR東日本もクルーズトレインを発表、3社競演時代へ

6月3日はもうひとつ、JR東日本のニュースがあった。2017年から運行開始予定のクルーズトレインだ。その車両の概要が発表された。昨年の同時期に発表されたクルーズトレイン構想を、車両設備面で具体的に説明する内容となっている。今回の発表は車両の外観と室内イメージについて。10両編成で先頭車は展望エリアとし、7号車のラウンジ車両にエントランス機能を持たせる。6号車は天井の高いレストラン。客室はスイートと2種類のデラックススイート。まるで横長のリゾートホテルという趣だ。

昨年発表された内容をおさらいすると、この車両は電化区間と非電化区間に対応した「EDC方式」とされていた。運行区間は東日本エリアを中心とし、「季節やテーマに合わせて日本列島を巡り、これまでにない感動を味わう旅行プラン」となる予定。JR東日本は震災復興を絡めた東北地方太平洋側の観光列車に力を入れてきた。新しいクルーズトレインは、いままでにないルートとして、日本海側や東北内陸部も走りそうだ。非電化区間対応とのことで、五能線や飯山線などの景色の良い路線の走行に期待したい。なんとか只見線を復旧させて、秋の紅葉シーズンに走らせてもらいたい。

JR東日本に先駆けて、JR西日本も5月21日に豪華寝台列車構想を発表している。運行開始時期は2017年と同じ。すでに走り始めたJR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」と合わせて、日本のトレインクルーズがますます楽しくなりそうだ。なお、JR東日本は7月2日、クルーズトレインの公式サイトをオープンしている。今後の情報発信に期待しよう。

北海道新幹線の駅名決定、運行開始へ準備着々

北海道新幹線は2015年度末の開業へ準備が進む

6月11日、JR北海道は2016年春に開業予定の北海道新幹線の駅名を発表した。当面の終着駅は「新函館北斗」、青函トンネルの北側は「木古内」、南側は「奥津軽いまべつ」となった。駅名が決まったため、駅周辺の計画が仮称から正式名称に変わった。今後は駅を軸にした開発計画が加速すると思われる。

この新駅名のうち、「新函館北斗」の決定についてはかなり難航した。函館付近だから仮称は「新函館」だった。しかし設置場所は函館市ではなく北斗市。そこで北斗市は駅名に「北斗」を入れてほしいとはたらきかけていた。新幹線利用者にとっては「函館に行くための駅」。しかし地元の意見も尊重すべし。新駅名は折衷案として、両方の都市名が入ることになった。ちなみに設置場所は函館本線の渡島大野駅付近で、新幹線に合わせて改称される予定だ。

ところで、「新函館北斗」の「新」の文字は必要だっただろうか? 「新」がなくても、「北斗」があれば現在の「函館」とは区別できる。駅名の文字数が多いと、時刻表や駅の発車案内、車両側面の案内表示の文字が小さくなってしまって良くないような……。「奥津軽いまべつ」のほうが長いけど、こちらは行先に表示されないからいいのかな?

それはともかく、4月にはJR北海道側の新造車両「H5系」も報道発表されている。いよいよ開業までのカウントダウンが始まったと感じる。

ネコ顔!? JR西日本が広島地区向け新型電車発表

6月19日、JR西日本は新型電車227系を発表した。広島地区に投入され、山陽本線・呉線・可部線で運行する予定。今年度は43両を投入。2018年までの3年間で3両編成64本、2両編成42本の計276両を投入するという。外観はアクセントカラーとして赤を採用。広島県の厳島神社の大鳥居、広島県の木もみじ、広島東洋カープのイメージとのこと。

JR西日本227系はネコ顔!?

広島地区で活躍する国鉄形電車は濃黄色の単色塗装への変更が進み、一部の鉄道ファンから、「末期色」などと揶揄(やゆ)されていた。227系はそのイメージを払拭した外観だ。ところで、先頭車のデザインを見ると、ヘッドライト部分を目として、なんとなくネコの顔を連想する。その両側に飛び出した板と合わせて、「いないいないばぁをするネコ」だ。

この両側の板は乗客の安全のために設置されている。先頭車同士をつないで中間車となったときに、連結部でホームから乗客が落下しないように配慮されている。それにしても、先頭になったときは折りたたんで格納するとか、取外し可能にするとかしないのだろうか?

227系はJR西日本が開発してきた「新保安システム」の営業車両の採用第1号となる。「新保安システム」は地上側の設備も必要なため、広島地区で試験が行われていた。新型車両が主力の京阪神地区ではなく、広島地区に投入される理由のひとつだ。もちろん広島地区に残る旧型車両の置換えという意味もある。あの「末期色」も見納めが近い?

今年も発売「青春18きっぷ」消費税分の値上げ

6月17日、JRグループ旅客各社は「青春18きっぷ」の夏季用と冬季用の発売を発表した。価格は消費税率引上げ分が反映され、350円アップの1万1,850円となった。

5回分セットでJRグルーブ各路線の普通列車自由席に乗り放題。東北地方のBRT、瀬戸内のJR西日本宮島フェリー、特例区間で特急列車自由席に乗車可能、青い森鉄道の通過利用も可能など、諸条件は継承されている。2014年夏季用の利用期間は7月20日から9月10日まで、冬期用の利用期間は12月10日から年を越して1月10日まで。もともとは夏休みで通学需要が減るために考案されたきっぷで、現在はシニア層にも人気。海外向けの日本旅行ガイドブックや情報サイトにも記載されているそうだ。

「青春18きっぷ」はかつて、春に1年分の販売日程が発表されていた。しかし近年は発売都度の発表という形になっている。これがいつもの「青春18きっぷ廃止」の噂の根拠となっていたようだけど、結果としては東北新幹線延伸やBRTなどの状況に対応したからだった。「青春18きっぷが値上げでも鉄道ファンは大歓迎」という記事が散見されるけど、鉄道ファンの歓迎は「発売された」だ。「値上げ」は歓迎していないと思う。

……と、いろいろ思うところはあるけれど、発売されるからには利用しよう。関東では吾妻線が八ッ場ダム工事の進捗で線路が付け替えられる予定で、日本一短いトンネルを見たいならこの夏がラストチャンス。烏山線ではこの春、新型車両EV-E301系「ACCUM」がデビューした。6月1日には、常磐線広野~竜田間が運転を再開している。JR西日本も、7~8月にかけて山口線・三江線・山陰本線の災害不通期間が復旧し、「SLやまぐち号」も運転再開される予定だ。この夏は「青春18きっぷ」で消える路線、復旧する路線を旅しよう。

吾妻線の「日本一短いトンネル」は9月24日まで

JR山手線・京浜東北線の新駅については、首都圏のみならず全国的な話題になったようだ。新駅予定地付近には高速路線バスの品川バスターミナルがある。品川駅はリニア中央新幹線の計画があり、羽田空港に直結する京急線の電車も停車する。その北側の再開発となれば、国内外の企業にとってオフィス需要も期待できるだろう。

この地域に関しては、JR東日本に「羽田空港アクセス線」の計画もある。大井埠頭から田町駅付近までの貨物線を再利用し、大井埠頭から南の貨物線は天空橋付近から羽田空港ターミナルまで新トンネルを掘る。JR東日本は田町駅から上野東京ラインに乗り入れたい意向だけど、田町駅付近の貨物線と東海道本線の間に新幹線が横たわる。この問題を解決するために、新駅付近の路線計画に新たな動きがあるかもしれない。

6月はその他にも、JR西日本の北陸新幹線用新型車両W7系が公開され、JR四国の新型特急電車8600系がデビューした。富士急行の新「フジサン特急」の外観イメージも発表されるなど、「新」なニュースが目立ち、景気の良い話題が続いている。中でもJR西日本の227系は、国鉄時代から通算して30年ぶりに広島地区へ投入される新型電車となる。

また、5月に発表されたJR西日本の豪華寝台列車に関して、鳥取県とJR西日本が7月1日にプロジェクトチームを発足させている。6月初旬に発表されたJR東日本のクルーズトレインと合わせて、今後も新情報に期待したい。