趣味だけではなく、生活やビジネスとしても関心が高い鉄道ニュースをまとめた。2014年5月はJR西日本の新しい寝台列車や、「トワイライトエクスプレス」運行終了の発表など、寝台列車に大きな動きが。JR北海道の江差線一部区間廃止も記憶に新しい。すでに6月に入り、JR東日本のクルーズトレインや新駅などビッグニュースが続いたけれど、ひとまず5月に話題を集めたトピックを振り返ってみよう。

「トワイライトエクスプレス」運行終了、「ムーンライトえちご」も…

5月28日、JR西日本が寝台特急「トワイライトエクスプレス」の終了を発表した。運行は2015年春まで。1989年7月にデビューして以来、約四半世紀で終幕となる。「トワイライトエクスプレス」は、展望スイート車両やコースディナーを提供する食堂車、日本海の夕陽を眺めるラウンジカーを連結した豪華寝台特急だ。JR東日本の「カシオペア」と並び、テレビの旅行番組や雑誌などの登場回数も多く、「いつかは乗りたい列車」として知名度が高い。

運行終了の理由は「車両の老朽化」。デビューは1989年でも、客車は1970年代から使用されるブルートレインを改造している。海沿いを走るだけに、外観の傷みも目立ち始めていた。基本的に週に4往復の臨時列車扱いだが、運行終了までは3編成をフル稼働させて運行日を増やすとのこと。ご乗車するならお早めに。

JR東日本は「カシオペア」の今後について、まだ公式発表はしていない。しかし、気になるニュースとして、夜行の快速「ムーンライトえちご」が夏の臨時列車のリストに載らなかった。新宿~新潟間を走った全車指定席の快速列車で、深夜に出発し早朝に到着。時間を有効に使いたい旅行者に人気だった。2009年から臨時列車扱いとなって、ついに運行終了……となるのだろうか? 筆者も「青春18きっぷ」で何度か利用した列車だ。お別れイベントもないなんて、ちょっと寂しい。

JR西日本が「新しい寝台列車」を発表 - 山陰と瀬戸内と回る

5月21日、JR西日本は「新しい寝台列車」の計画を発表している。運行開始は2017年春の予定。ハイブリッド方式で、電化区間・非電化区間を問わず走行できる。社長会見によると、近畿地域を出発し、山陰から瀬戸内を周回するコースを想定しているようだ。

10両編成で前後の車両が展望デッキ付き。展望デッキは後部側のみ出入り可能。進行方向はデッキには出られない。客室は2クラスで、上級クラスはなんと1両1室。ダブルベッドルームとリビングルーム、専用バルコニー、バスタブ付きのバスルームを備える。リビングルームのソファベッドを使って、4名までの利用を想定しているとのこと。

2017年春といえば、「トワイライトエクスプレス」の運行終了からちょうど2年後。この間に客室スタッフは新しい列車に向けたトレーニングをするのかもしれない。「トワイライトエクスプレス」の2代目として札幌にも行ってほしいけど、やっぱり北海道新幹線の運行の邪魔だろうか?

江差線木古内~江差間、5月11日を最後に廃止

3つ目は寂しい話題。JR北海道の江差線木古内~江差間が、5月11日の運行を最後に廃止され、バス路線に転換された。1936(昭和11)年に江差駅に到達してから、78年の歴史に幕を下ろした。

江差は江戸時代からニシン漁で栄えた町。江差線も当時は生鮮食品の輸送が盛んで、急行列車も走っていたという。ニシンの不漁と人口流出が江差線の利用減につながった。JR北海道の中でも乗客が少ない路線のひとつで、北海道新幹線の開業で並行在来線となる木古内~五稜郭間も第3セクター鉄道に移管されるため、飛び地となる区間が先に廃止された格好だ。最終運行に向けて、JR北海道は記念列車を走らせ、さよならセレモニーも開催した。

江差線の終点、江差駅

「天ノ川駅」(モニュメント)

なお、江差線の存続を願って作られたモニュメント「天ノ川駅」は、江差線の運行終了後も看板が残され、江差線運行中の立入り制限は解除されたとのこと。

2014年ブルーリボン賞・ローレル賞決まる

鉄道趣味の老舗団体「鉄道友の会」は5月26日、2014年のブルーリボン賞に近畿日本鉄道の50000系を選出。ローレル賞にJR東日本のE6系と福井鉄道のF1000形を選出した。どちらも前年にデビューした新型車両から優秀車両が選ばれる。ブルーリボン賞は鉄道友の会会員の投票結果をもとに選考され、ローレル賞は選考委員が審査して決定する。

近鉄50000系は、名古屋・大阪から伊勢志摩を結ぶ観光特急「しまかぜ」用の電車だ。眺望に配慮したハイデッカー車両や飲食サービスを提供するカフェカーのほか、バリアフリー対応の平床座席、和風と洋風のグループ向け個室など、多様なニーズに対応する。近鉄のみならず、日本の鉄道車両としてもトップクラスの特急列車として評価されたようだ。

JR東日本のE6系は、秋田新幹線「こまち」用に製造された。東北新幹線と、在来線を改良した秋田新幹線区間を直通する「新在直通車両」だ。先代「こまち」E3系との違いは、洗練されたデザインだけではなく、スピードと乗り心地の向上とのこと。新在直通車両として初めて、新幹線区間での時速320km運転を実現している。

F1000形は福井県の福井鉄道が導入したLRTタイプの電車。福井鉄道は軌道(路面電車)区間と鉄道区間があり、鉄道区間の輸送利用を考慮して大型車体と3両編成を採用した。そのためLRTタイプの車両としては国内で最大定員、車体幅も最大となった。また、1車両1台車という構造もユニークで、日本で唯一の方式とのこと。

福井鉄道は2007年に経営難となり、鉄道路線の存続も危ぶまれた。しかし自治体の支援や日本初の地域公共交通活性化法適用で国の支援も得られ、収支改善への取り組みが進んでいる。えちぜん鉄道の乗入れ計画や、土佐電鉄から譲受したドイツ製電車など、趣味的な話題も多い。新型車両の導入をきっかけに、ますますの活性化を期待したい。

わたらせ渓谷鐵道が「お召し列車」運行告知

5月12日、わたらせ渓谷鐵道は公式サイトやFacebookページなどで、天皇皇后両陛下の行幸啓に関連した「おしらせ」を掲載した。「22日の午後に両陛下が同社の通洞~水沼間をご乗車」され、車両は「トロッコわっしー号」とのこと。乗客に、「鉄道敷地内からの見送りと撮影は不可」「水沼駅駐車場の利用制限」と促していた。

天皇陛下はJR(旧国鉄)のお召し列車などにご乗車なさるだけではなく、民鉄や地方鉄道もご利用なさる。今回の行幸啓は東武鉄道もご乗車された。今年は他にも、3月に近鉄「しまかぜ」用の50000系にもご乗車なされた。ただし、わたらせ渓谷鐵道のように、事前にここまで詳しく両陛下間のご乗車を公表した事例はきわめて少ない。

もっとも、行幸啓はすべてトップシークレットというわけではない。今回の行幸啓も5月19日の官報に掲載されており、誰もが知りうる情報であった。わたらせ渓谷鐵道にとって、両陛下のご乗車は名誉なこと。ただし、両陛下はもちろん、一般利用者にも迷惑をかけたくないという親切心が、告知となって表れたといえそうだ。

わたらせ渓谷鐵道は旧国鉄足尾線。足尾といえば、明治天皇に対する田中正造の直訴事件が有名だ。その地に今上天皇がいらっしゃるという点で、鉄道ファンならずとも感慨深いニュースだった。お召し列車用の新幹線車両は防弾ガラスを使っているという噂もあるけれど、両陛下は窓ガラスのないトロッコ列車で風を浴び、沿線の人々に手を振って応えられたと報じられている。

「トワイライトエクスプレス」の廃止は、2つの点で日本の鉄道事情を反映している。ひとつはJR西日本の新型寝台列車との新旧交代だ。昨年登場した「ななつ星 in 九州」や、「ムーンライトえちご」のことも合わせて考えると、日本の夜行列車は今後、「ぜいたくで特別な列車」になっていくようだ。

もうひとつは江差線廃止との関連性。「トワイライトエクスプレス」の運行終了は、北海道新幹線の青函トンネル工事のタイミングで決定されたともいわれている。北陸新幹線金沢開業と同時に、「トワイライトエクスプレス」のルートが第3セクターになることも影響しているだろう。日本の鉄道地図はつねに変化を続けている。

ブルーリボン賞・ローレル賞は毎年この時期に発表される。2013年にデビューした新型車両の中には、「ななつ星 in 九州」のJR九州77系客車や、札幌市交通局のA1200形「ポラリス」、上信電鉄7000形など、他にも魅力的な車両があった。鉄道友の会の選考担当者もかなり悩んだのではないか。ただし、近年の選考理由には、「環境性能」という言葉が目立つ。外観デザインやスピードだけではなく、省電力など環境に配慮した鉄道車両への評価が高まっているようだ。今年の受賞結果について、読者諸兄はどんな感想をお持ちだろうか?