「3.11と防災」

東日本大震災は、防災について再考するきっかけにもなった。日本は地震大国であり、今後も東日本大震災同様の震災に見舞われる可能性は十分にある。3.11から何を学び、防災に生かしていくべきなのか。

第二部では防災について討論が行われた

第2部は角谷浩一氏が司会を務め、自民党衆議院議員の小池百合子、日本大学法学部教授の福田充氏、防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏が討論を行った。まずは、NPOを立ち上げ阪神淡路大震災や今回の東日本大震災の被災地支援を行っている渡辺氏が、被災地の現状について報告した。

「皆さんが思っている以上に疲弊している。この国には復興の文字がつく法律がない。応急復旧や応急復興まではいけても、復興段階を支える法律制度を持っていないのが現状。今ある法律を官僚が運用するしかないが、それはしょせん運用の範囲でしかない。復興を司る法律体系を作らなければならない」(渡辺氏)

政府側の人間である小池氏はこの意見に同意しつつも、「災害のためにインフラを整えるなど国家としてすべきことは多々あるが、トップにいる人がそのインフラや制度、組織を動かす能力があるかどうかが重要。想像力を持ったトップがいないとどんなに制度だけを整えても意味がない」と述べ、組織や制度はむしろ運用する"人"の方が重要なのだと強調した。

「日本人は平和ボケしている」と警鐘を鳴らす小池氏

これに角谷氏は、「防災担当大臣が他の大臣と兼務しているのはおかしい」と述べ、日本政府の防災意識の低さを指摘する。

渡辺氏によれば、そうした日本における防災の脆弱さの理由は「省庁再編と市町村合併にある」のだという。急速に進んだ市町村合併により、地方自治体職員には「地名と場所が一致しないような人」がまだ数多くおり、そういったところが「緊急時の対応で問題になる」というのだ。

阪神淡路大震災でも支援を行ってきた渡辺氏

さらに、トップの判断力のなさも防災の脆弱さに輪をかけている。

「防災では普段やっていないことは非常時にはできない。日本では、トップの人が一番苦手なのが判断すること。トップが民意を聞きすぎて哲学がない。多数の意見に政策を持っていけばいいと思っているから、決意を持って判断できない」(渡辺氏)

組織や制度の面ではまだまだ問題を抱えている日本の防災だが、では個人のレベルではどのように対策すべきなのか。

被災地に入って現地の状況を研究している福田氏によると「今回の震災では9割以上が津波で流されて亡くなっている。津波がくるという警報を政府や自治体がどのようなメディアでいかに迅速に伝えるか」が重要課題だという。

情報伝達にはテレビやメール、ネットなどがあるわけだが、東日本大震災では「巨大地震により被災地で停電が起こり、また通信の基地局が壊され携帯電話も使えなくなって、情報を受け取る手段がなくなってしまった」(福田氏)のだ。

福田氏は災害時のコミュニケーションの重要性を説く

ではどのメディアであれば災害時にも確実に情報を伝達できるのか。

福田氏は停電しても使えるという理由から、「防災行政無線とラジオ」の2つを挙げる。特にラジオは避難所生活が始まってからも使用できて、その場にいる全員が聴くことができる重要なメディアだ。また、被災した後は地元の新聞や地域紙の存在も重要となる。スマホや携帯電話は基地局が被災した場合、使えなくなってしまうからだ。

防災における情報伝達について福田氏は「クライシス・コミュニケーション」という言葉で表現し、「整備するのは平常時でないと意味がない」と強調した。

最後に小池氏は、今後の日本の防災について「備えよ常に」というスローガンを掲げ、「ありとあらゆることに備えるのが大事。国が貧しければ防災もできないので、経済を回すことも必要」と述べて締めくくった。……続きを読む