BIツールの導入は通常のシステムと同様、(1)要件定義、(2)設計、(3)構築、(4)テスト、(5)データ移行という手順を踏むのが一般的です。このサイクルは一度で終わるのではなく、PDCAサイクルを繰り返していくことになります。
ここでは、導入方法において最重要ポイントである「要件定義」と「設計」について紹介します。
まずコンセプトを固めること
上記の5つのステップのうち、要件定義と設計は、いわばコンセプト・メイキングの段階と言えます。
構築、テスト、移行・トレーニングはそのコンセプトを実際のシステムに適用して具体的なデータを吹き込み、うまく動作するかを確認する段階です。
BIツールに限らず、コンセプトが曖昧なままでは具体化の方向が定まりません。BIツールを導入しても「役に立たない」と評価されるケースが見られますが、その原因は要件定義と設計が不十分である場合が多いようです。
BIツールは手段であって目的ではない
まず、BIツールの役割は、客観的なデータを元にした迅速な現状可視化にあります。
導入の際にまず考慮すべきは、組織経営・運営的な観点からの「目的」です。その目的を達成するための有効な「手段」としてBIツールがあります。BIツールの導入が失敗する場合によく見られるのが、手段が目的化してしまうことです。
BIツールによる分析とグラフィカルな表現にはインパクトがあるので、そこにフォーカスが当たりがちです。しかし、最終目的は利益の増加や業務の改善などにあるはずです。したがって、それにつながる分析対象を明確にしておく必要があります。
要件定義のポイント
要件定義とは、BIツールを使った具体的な分析目的を明確にすることです。ここでは、「定型レポート」タイプのBIでよく利用される方法について解説しましょう。
まず、必要な分析対象と、必要になる情報を具体的に決めます。例えば、ある商品の販売不振が懸案となっている場合、売上を分析対象とします。
続いて、一般に「ファクト」「ディメンション」と呼ばれる要素を決めます。ファクトとは具体的な数値データのことで、利益増加を目的とするのであればこれまで蓄積されている売上金額のデータとなるでしょう。
ディメンションは、例えば、売上分析の際の年別、月別、商品別などの分析の切り口のことです。これらは分析の際のテーブルに反映されます。
この両者をひとまず確定させた後で、既存の業務データのどこから抽出すべきかを検討します。必要であれば各部署にヒアリングを行って最適化を進めます。
設計の作業
実際のBIツール上でテーブルの作成やインタフェースのデザインを行います。
要件定義で明らかになった目的を満足させる視点で作り込みます。テーブルに関しては、上記のファクトとディメンションに対応させた、ファクト・テーブル、ディメンション・テーブルを作成します。
実際にユーザーが触れるインタフェースとして、分析画面、レポート出力画面などのレイアウトをデザインします。定期的なミーティング資料などで組織や部署ごとにフォーマットが決まっている出力があれば、グラフや関数の埋め込みも含めて、そのテンプレートも作成します。
BIツールの最大の特徴のひとつは、さまざまなデータをわかりやすくビジュアライズする機能にあります。その特徴を活かせるようにデザインしましょう。
構築、テスト、移行、そしてフィードバック
要件定義及び設計の後で、具体的に構築、テスト、データ移行、さらにはトレーニングに移ります。この段階は実際に設計したテーブルにデータを入力し、検証することになります。
通常はこの段階でさまざまな課題が発見されるので、要件としてフィードバックし、改善する作業を繰り返していきます。
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