BI(Business Intelligence)ツールを導入すると何が改善されるのでしょうか。
一番は、従来の組織では不可避的に発生してきた、分散した情報を集約するコストが圧縮できる点です。定形の繰り返し作業や複雑な分析はデジタルツールに任せて、時間やマンパワーやその他の経営資源をクリエイティブな作業に振り分けることで、企業の競争力向上に役立ちます。
しかしながら、このようなBIツールの効果を十分に享受するためには、導入前に関係者の理解を深めておくべき項目があります。
BIツールにできること・できないこと
BIツールの解説を見ると魅力的な言葉が並んでいます。たしかに上手く使えば、蓄積された情報を有効活用できる非常に強力なツールです。
ただし、BIツールは万能ではありません。BIツールはあくまでも業務分析をサポートして、その結果を視覚化するツールであって、このツール自体が自動的にソリューションを生み出すようなものではありません。
もちろんデータマイニングツールなどでは、雑多に見える情報から未知の関係性の発見につながるような機能もありますが、最終的にその価値を決めるのは意思決定者なのです。
意思決定者が明確なビジョンを持ち、そのビジョンと現状との差異を最小化しようとするときに、初めて真価が発揮されるものがBIツールと言えます。
導入する目的を明確にする
BIツールによって、従来では死蔵されていたはずの情報が「見える化」され、さまざまな分析が行えるようになります。そのアウトプットとして、組織の現状と将来性が実証的かつわかりやすいフォーマットで提示されます。このような過程を経て、リアルタイムで意思決定を迅速に行う環境が整うわけです。
ここで問題となるのは、何を実現するために迅速な意思決定が必要なのかということです。この点については、導入前に具体的な目的を明示しておく必要があります。
実現された「迅速さ」は、いわば本来不必要だった時間が短縮されたに過ぎません。その「先にあるもの」が組織に社会的存在意義を与えているはずです。この目的が共有されないままにBIツール環境だけが立ち上がっても、せっかくの高機能が生かされない可能性があります。
BIツール導入前に確認すべき項目
そのような「導入目的」の他に、情報に着目して組織活動を最適化する際に確認・着手すべき主なポイントは以下の3つです。
まず「データの状態」です。BIツールはこれまでの蓄積された業務関連データを活用するシステムです。導入目的を満足させるにはどのようなデータが必要か検討しておきます。
第2に「全社的モティベーションの醸成」です。例えば、経営状況の可視化が目的であれば、各部門で抱えている情報を統合し、全体を分析対象とすることに導入意義があります。この場合、組織全体がBIツール導入に協力的であることが成功のポイントとなるため、参加意識を醸成する環境整備が重要です。
第3は「コア人材の育成」です。BIツールはユーザーフレンドリーなインタフェースが特徴で、データベースを扱う専門的知識がなくても運用可能な点が大きな利点です。とはいえ、プロジェクトを牽引する人材は不可欠です。その要件は統計分析の知識をある程度持ち、ITを使いこなす技術を備え、かつリーダーシップを発揮できることでしょう。BIツールの扱いやすさの問題とは別に、組織にコアとなるリーダーが必要なのは言うまでもありません。