技術や製品のコモディティ化に伴い、ものづくり産業はフラットな市場になりつつあります。経済産業省の『2017 年版ものづくり白書』では、「新たな『 付加価値』 を獲得することが重要であり、そのためには顧客が求めるサービス・ソリューションの展開を図ることが必要」とし、経営変革に結び付けるための IoT などの利活用を提唱しています。その一方、同資料では「データを活用した見える化、プロセス改善などに結び付ける取組については、関心は高まっているものの、それを実現に結びつけるまでに至っていない」ことも指摘。IoTについては業界各社がまだ試行錯誤な段階といえる中、具体的な取り組みを早くも実践しているのが、ランドリー市場で高いプレゼンスを堅持し続けているアクア株式会社 (以下、AQUA) です。同社は 2017 年末、Microsoft Azure をプラットフォームにした「AQUA次世代 Cloud IoT ランドリーシステム」の提供を開始。"AQUA らしさ" という独自の価値付けに向けた歩みを進めています。
業界の枠組みを超えた新たな付加価値の提供に 向け、次世代の IoT ランドリーシステムをリリース
1971 年に国内で初めての業務用洗濯機器を開発、発売したAQUA。同社は創設以降、高品質な製品と全国にあるサービス センターによるサポートをもって、コインランドリー市場における No.1※の75% 以上もの高いシェアを築き上げてきました。業界を牽引する存在ともいえる AQUA ですが、同社では現在、「コモディティ化」が大きな経営課題として立ちはだかっているといいます。
※2017 年 6 月現在 国内コインラインドリー市場機器台数において (自社調べ)
技術の発展に伴い、近年のものづくり産業は、商品が備えるスペック、機能が顧客の求める水準を超えつつあります。その過程で進んだコモディティ化が、ものづくり産業に価格競争という深刻な業界課題を引き起こしているのです。アクア株式会社 AQUA日本 代表 吉田 庸樹 氏は、コモディティ化から脱却するためには、社会の変化に適応したソリューションの提供が必要だと語ります。
「ユーザーがランドリーに求めることは、" 洗浄力" です。これは今も昔も変わりません。ただ、洗濯を含むライフ スタイルは、共働き世帯や単身世帯の増加といった社会の変化に伴い変わってきています。時間や空間に対する価値が大きく様変わりする今、ランドリーには機能やスペックだけでなく、それを利用している間の " 余剰時間" にどのようなユーザー体験を提供するかが重要となってきているのです。ランドリーという従来の枠組みにとらわれない新たな価値をユーザーへ提供する。それによって当社製品のオーナー様や当社がまだ連携したことのない異業種企業様のビジネスも加速し Win-Win な関係を構築する。こうしたプラットフォーム ビジネスを実現することでコモディティ化から一歩抜き出た "AQUA らしさ" を提供することを目指し、当社では 2017年 10 月に、『AQUA次世代 Cloud IoT ランドリーシステム』をリリースしました」(吉田 氏)。
AQUA では、今から 10 年以上前の 2005 年より、AQUA次世代 CloudIoT ランドリーシステムの前進となる「IT ランドリーシステム」の提供を開始。ネットワーク経由でシステムの稼動状況を可視化し管理できるサービスとして、2016 年段階で 20,000 台にまで稼動台数を伸ばしてきました。そして新たにスタートした AQUA次世代 Cloud IoT ランドリーシステムでは、ランドリー機器自体を IoT 化して自社や他社サービスと連携するという発展を遂げています。吉田 氏は「これにより、異業種を含むさまざな企業とコラボレーションしたソリューションをお客様へ提供することが可能になりました」と説明。現在、下記の 3 つの段階をもって、コラボレーションを加速する取り組みが進められています。
第 1 フェーズ 2017 年度 | IC カードやサービス クーポンの発行などが行えるマルチ端末と それに対応する IoT ランドリーシステムの提供 ▼ 異業種と連携したソリューションの初期事例を構築 |
第 2 フェーズ 2018 年度 | プラットフォームの API を介したシステム連携機能の強化、 電子マネー、アプリ決済などのキャッシュ レス機能の強化 ▼ 異業種と連携したソリューションを拡大 |
第 3 フェーズ 2019 年度 | データ分析機能の強化、そこから派生した新たなサービスの開発 ▼ クラウド上に蓄積しているビッグ データを活用した新しいビジネスを創出 |
強靭なセキュリティが大前提。 IoT 化を実装するための豊富な機能群も評価し、Azure を選択
AQUA次世代 Cloud IoT ランドリーシステムのリリースから間もない 2017年 11 月には、大手コンビニエンス ストア事業者とコラボレーションしたサービスの開発、提供が発表されています。
こうした異業種企業との連携においては、プラットフォームとなる提供基盤に高い柔軟性と拡張性が求められることになります。そのため、同プロジェクトではサービス基盤を、従来のオンプレミスからパブリック クラウドへ一新することを構想。プロジェクトの初期段階で Microsoft Azure を選定し、構築が進められました。
同プロジェクトを指揮する、アクア株式会社 マーケティング本部 コマーシャルランドリー企画グループ ディレクター 秋馬 誠 氏は、サービス基盤に求めた要件について次のように説明します。 「まず重視したことはセキュリティです。第 2 フェーズではキャッシュレス化を見通していたため、近い将来で決済情報も含むお客様情報を取り扱うことは明白でした。Azure は国内で初めて CS ゴールドマークを取得したクラウド サービスであり、グローバル水準のセキュリティが確保できることが期待できました。また、そこへ接続するためのネットワークについても、ExpressRoute によってセキュリティを担保することが可能です。また、こうしたセキュリティ面だけでなく、機能が充実している点も高く評価しました」(秋馬 氏)。
秋馬 氏が触れたように、Azure は機能面についても高く評価されています。今回のプロジェクトでは、システムの構築だけでなくマルチ端末の組み込み開発も必要であり、そこへ IoT のしくみを実装することも求められました。「IoT で欠かせない視点に、IT システムだけでなく Thing、つまりモノ側も IoT 化せねばならないという点があります。マイクロソフトの持つソリューションでは、さまざまな製品・機能によるワン パッケージで、プラットフォームと組み込み端末の双方を IoT 化することが可能です。この点は大きな利点でした」と秋馬 氏は説明。実際に AQUA次世代 Cloud IoT ランドリーシステムでは、マルチ端末に Windows 10 IoT を、接続とプラットフォームには IoT Hub を中心とした Azure IoT のサービスを用いることで、IoT のしくみを実装しています。また、蓄積データの分析、解析用途として、機械学習エンジンである Azure Machine Learning や人工知能(AI) API のAzure Cognitive Services の活用も構想しています。
異業種企業とのコラボレーションによって、"AQUA らしさ" を持った ソリューションを早期に提供
AQUA では 2017 年末、第 1 フェーズにあたる AQUA次世代 Cloud IoT ランドリーシステムの構築を完了。IC カードやサービス クーポンの発行、管理機能を備えたサービスを展開しています。
同ソリューションは今後、第 2 フェーズ、第 3 フェーズへと、サービス基盤、ビジネス モデルともに発展していくことが計画されていますが、吉田 氏は「第 1 フェーズの段階で、すでに "AQUA らしさ" の創造に向けた兆しが生まれつつあります」と笑顔をみせます。先のコンビニエンス ストアとの提携を例に、この点を説明します。
「たとえば雨天時、コンビニエンス ストアの需要は下降しますが、ランドリーは逆に需要が高まります。クーポンなどで相互のビジネスを連携すれば、当社、異業種企業、オーナーすべてのビジネスを補完することができるのです。そしてこれは、お客様に新たな価値を提供することにもつながります。 まだ公表はできませんが、既に飲食など他の業態の企業とのパートナーシップも進みつつあります。" 洗浄力" というニーズが普遍的である以上、ランドリー業界はコモディティ化が進んでいる市場といえますが、異業種企業とのコラボレーションによって、お客様が当社製品を利用する理由となる"AQUA らしさ" を作りだすことができると考えています。こうした動きを早期に進められたことは、今回のプロジェクトの大きな成果といえるでしょう」(吉田 氏)。
"洗濯という "行為" に "体験" という新たなベネフィットを提供することによって、"AQUA らしさ" を確立していけると考えています。これを支えるテクノロジーとして、マイクロソフトのソリューションには高い信頼を寄せています"
- 吉田 庸樹 氏:AQUA日本 代表
アクア株式会社
これらのコラボレーションは、物理的に提供されるサービス間のみに留まりません。今後、異業種企業が提供するアプリ、Web サービスなど、オフライン/オンライン問わずさまざまなサービスと連携していくことが計画されています。秋馬 氏は「第 2 フェーズでは AQUA次世代 Cloud IoT ランドリーシステムの API を公開することも計画しています。異業種企業が提供するオンライン サービスと API 連携することによって、コラボレーションの可能性はいっそう拡大できるでしょう。Azure では、Azure API Gatewayを活用することによって、当社環境と他社環境を連携するしくみを、迅速かつ容易に構築することができます。サービス基盤に Azure を採用したことは、早期にビジネスを発展させていくうえでも有効だったと感じています」と語ります。
顧客接点を増やし、企業としての トータル ブランドの確立を目指す
"AQUA らしさ" を生み出していくうえでは、ランドリーの持つ可能性を絶えず検討し、そしてそのアイデアを "AQUA らしさの種" として蓄積していくことも必要です。そこへ向け、AQUA では 2018 年 1 月、「IoT × コインランドリー」をテーマとする "アイディアソン" を開催。また、ビジネス モデルやアプリなどを実際に具現化する "ハッカソン" についても、実施が予定されています。
"オンプレミスから Azure へ従来 IT ランドリーシステムの基盤を移行したことは、コスト削減にも貢献しています。これを原資とし、クラウドならではのスケーラビリティを最大限に活用することで、AQUA次世代 Cloud IoT ランドリーシステムを早期に発展させていきたいと考えています"
- 秋馬 誠 氏:コマーシャルランドリー企画グループ ディレクター
アクア株式会社
「アイディアソンでは、すぐにでもビジネスに活かせそうな斬新なアイデアが数多く集まりました。実はアイディアソンの開催は、マイクロソフトより助言いただいて実施した経緯があるのです。全世界のさまざまな企業の実績を持ち、その知見から IT とビジネスの双方を支援してくれるマイクロソフトは、当社としては非常に心強い存在です。"AQUA らしさ" の体現に向けて、今後も同社の支援を期待したいですね」(秋馬 氏)。 「多くの製造業が、企業アイデンティティの確立とそのユーザーへの浸透に頭を悩ませています。当社は "クリア" な商品であることを前提とし、" 新しいベネフィットの提供" を企業アイデンティティの中心に掲げています。これは個人向け製品も同様です。AQUA次世代 Cloud IoT ランドリーシステムを介したコラボレーションは、この新しいベネフィットとお客様との接点を生み出すことに直結します。異業種企業様やオーナー様のビジネスを推進すると同時に、"AQUA らしさ" をさまざまな接点を通じてお客様にお伝えすることで、当社のトータル ブランドを確立していきたいと考えています」(吉田 氏)。 ランドリー業界で圧倒的な存在感を示す AQUA。ものづくり産業のブレーク スルーに向けた同社の取り組みは、業界を牽引する企業としてあるべき姿といえるでしょう。Azure を活用して " 新しいベネフィットの提供" を目指す AQUA。同社の挑戦が契機となり、各社の IoT の取り組みがいっそう盛んになることが期待されます。
[PR]提供:日本マイクロソフト