経営部門や事業部門における意思決定を高度化し、迅速化する。これは、市場の変化がいっそう激しさを増す今日においていっそう重要度を高めています。従来の意思決定は、どうしてもそれを行う人間の"勘"や"経験"にアウトプットが大きく左右されてきました。しかし今では、膨大なデータを統合的に分析することにより、どのタイミングで販売戦略に手を打つべきか、どの時期を逃すと会員が離れてしまうのかなど、システムが与えてくれる「未来予測」のもと、正確な意思決定が下せるようになりつつあるのです。
しかし、これを進めるうえでは、往々にして「膨大なデータをいかにして収集するか」が大きな壁として立ちはだかります。財務会計データであれば、多くの企業が普段から収集、分析していることでしょう。ですが、各現場、市場などさまざまな場面で日々生じているデータも含んで統合的に集約することは、容易ではありません。イオンペット株式会社では、データ分析基盤としてAzure SQL Data Warehouseを、そしてMicrosoft SQL Serverをコア テクノロジーとする経営管理システムSactonaを利用することで先の壁を乗り越え、未来予測の取り組みを推進しています。
イオンペット株式会社 |
プロファイル
イオンペット株式会社は、ペットにかかわる幅広いサービスを提供するイオングループの企業です。ペット用品の販売やトリミングサロン、ペットホテル、しつけ教室、動物病院の運営など、いずれも日本最大級となる事業を通じて、動物と人間の幸せな共生社会を目指しています。
導入の背景とねらい
Azure SQL Data Warehouseでデータ分析基盤を構築。段階的にデータを集約していくうえで、経営管理のシステム化が急務に
イオンペット株式会社(以下、イオンペット)は、ペット用品の販売や動物病院、トリミングサロンやペットホテルの運営など、ペットに関するさまざまな事業を手がけるペット専門店企業です。イオングループの一員である同社は、グループのポリシーである「お客様第一」に則り、飼い主だけでなくペットもお客様としてとらえて高品質なサービスを提供。たとえば、トリマー養成所の運営による高水準な技術者の育成、留学制度の充実による獣医療の水準向上など、動物と人間が共に暮らす幸せを最大化させるべく、たゆまぬ努力を続けています。
こうした姿勢は、同社のIT環境にも現れています。イオンペットは2016年2月、Azure SQL Data Warehouse(以下、Azure SQL DWH)をプラットフォームとするデータ分析基盤を構築。経営情報や顧客情報、商品情報、市況情報など、これまで社内に分散していた情報を一元化して統合的に分析する「未来予測」の実現に向けて、取り組みを進めているのです。
イオンペット株式会社 システム・Eビジネス・物流グループ 大坪 力氏 |
イオンペット株式会社 システム・Eビジネス・物流グループ 大坪 力氏は、この未来予測が、グループポリシーであるお客様第一にどうつながるのかを、次のように説明します。
「未来予測に着手した最初のきっかけは、動物病院の運営でした。獣医師の診断精度を高めるために、ペットの疾患やその傾向に関する情報に基づいてサジェスチョンできないかと考えたのです。こうした『情報活用によるサービス品質の向上』は、たとえば物販であればお客様がほしい商品を需給予測によって常に取りそろえておくなど、他の事業においても有効です。1つの部門にとどまらず横断的にデータを分析することが、全社のサービス品質を向上し、ひいてはお客様第一の実践へつながると考え、分析基盤の構築を検討したのです」(大坪氏)。
一般的に、社内に分散している情報を手作業で収集、集計して分析するには多くの時間を必要とします。この一連の作業が自動化できれば、従業員のリソースを本業である接客に割り当てることができるでしょう。イオンペットが進める未来予測の取り組みは、「サービス品質の向上」だけでなく、「自動化による本業への注力」という観点でも、お客様第一を実践するうえで有効でした。
しかし、イオンペットが扱う情報は、物販事業と医療事業、そしてサービス事業の各部門で異なっています。また、これまではシステムについても、事業部ごとで分断されていました。異なるシステムで運用されてきた異なるデータ群を一挙に統合することは、事業部門への影響を考慮すると現実的ではありません。そこで同社では、まずデータを集約するプラットフォームを用意し、各システムのリプレースや新システムの構築に合わせながら、段階的に同プラットフォームへデータを収集していくことを計画します。
このプロジェクトでは、迅速にスモールスタートでき、なおかつ高いスケーラビリティを有するクラウド型のデータ分析基盤が不可欠でした。数あるサービスの中からAzureをプラットフォームに採用した理由として、大坪氏はこう明かします。
「将来的にはAIなど先端の技術を活用し、分析作業自体を自動化することも考えています。その場合、Azure Machine LearningやAzure Iot Hubといった、多くの先端技術をPaaSで利用できるAzureが有効だと判断しました。データを統合していくはじめのうちは、Azure SQL Databaseでも容量的に十分対応可能でしょう。しかし、今後の拡張可能性や機能性を考慮すると、Azure SQL DWHを採用することが最適でした」(大坪氏)。
イオンペット株式会社 経営コントロールグループ 佐藤 由貴氏 |
Azure SQL DWHを利用してデータ分析基盤を構築した後、イオンペットではまず経営情報の集約から、全社データの統合に向けた取り組みを着手。この背景としては、データ活用には経営情報が欠かせないこと、そして従来の経営管理業務に課題が存在していたことが挙げられます。
たとえば予算計画を策定する場合、これまで同社は、まずExcel形式の帳票を各事業部門と全国に180以上ある店舗に配付し、その後入力して返送されたものを同社の経営コントロールグループが手作業で集計する、という流れを採ってきました。イオンペット株式会社 経営コントロールグループ 佐藤 由貴氏は、こうした手作業による経営管理の業務フローは、情報の信頼性と工数負荷という2つの側面で課題があったと語ります。
「予算策定においては、各事業部門と経営コントロールグループとの間で、帳票の差し戻しが頻繁に発生します。しかし、メールベースでのやり取りでは、どれが最新版なのかを管理することが困難です。また、帳票の収集や差し戻しのやり取りだけでなく、その後の集計などすべてを手作業で行うため、当グループと各事業部門の双方に多くの工数を要していました。従来3か月ほどを要していた予算策定の期間、工数を圧縮し、また世代管理を徹底して情報の信頼性を確保することは、急務といえました」(佐藤氏)。
システム概要と導入の経緯
必要だったのは、現場の業務フローを変えずに、情報の信頼性確保と自動化が果たせるシステム
ビジネス上でのデータ活用において、経営情報は欠かすことができません。また、イオンペットには、経営管理の業務においても先述した課題が存在していました。データ分析基盤を構築した後、同社がデータ集約に向けた第一歩として経営管理、分析業務のシステム化を進めたことは、必然ともいえる判断でしょう。
この取り組みを進めるうえでは、いかにして各事業部門や店舗の業務フローを変えずシステム化を果たしていくかに頭を悩ませたと、大坪氏は語ります。
「各現場の本業は『お客様と接すること』です。たとえサービス品質の向上を目的とした取り組みだとしても、システム導入によってこれまで慣れ親しんだ業務フローとがらりと変わってしまっては、現場は一からそれを覚え直さなければなりません。つまり本業へのリソースを奪うことになり、本末転倒となるのです。必要なのは、Excelの帳票記入をベースとした従来の業務フローは変えず、ファイルの世代管理と、集計、分析作業の自動化を実現するシステムでした。こうした与件について、Azure SQL DWHの構築を支援いただいたソフトバンク・テクノロジー株式会社(以下、SBT)へ相談したところ、Sactonaという製品を紹介いただきました」(大坪氏)。
Sactonaは、アウトルックコンサルティング株式会社(以下、アウトルックコンサルティング)が提供する経営管理システムです。イオンペットがそうであるように、Excelベースで行ってきた業務をシステム化したいというのは、多くの企業に共通したニーズだといえるでしょう。
「Excelのような操作性」を謳うシステムは市場に多く存在します。しかし、Sactonaの最大の特徴は、「Excelそのもので作業できる」という点にあります。ユーザーはWebアプリケーションのSactonaへアクセスし、Excel帳票をダウンロードしてローカル環境でこれを編集する。すると入力情報は、そのファイルを保存、閉じた時点でSactonaのコアテクノロジーとして稼働するSQL Server上に取り込まれ、自動集計されます。だれがいつ編集したかという履歴も残り、またSactonaからユーザーへ修正指示を出したり、再び編集したりすることも可能。Excelをベースとした業務フローはそのままに、情報の信頼性の確保と、集計、分析作業の自動化が果たせるというわけです。
ソフトバンク・テクノロジー株式会社 営業統括ソリューション企画本部 Cloud & IoTソリューション部 シニアセールス 小菅 剛氏 |
ソフトバンク・テクノロジー株式会社 営業統括ソリューション企画本部 Cloud & IoTソリューション部 シニアセールス 小菅 剛氏は、同製品をイオンペットに提案した意図を次のように語ります。
「Azure SQL DWHの構築以前からイオンペット様のITを支援してきたため、ITだけでなく業務面の課題についても理解していました。当取り組みで第一に求められたのは『業務フローを変えない』ことであり、他社案件にてSactonaに関わった実績からこの優位性ははっきりと見えていました。また、Sactonaはコアテクノロジー にSQL Serverを利用しています。Azure SQL DWHとの高い親和性を有しており、またクラウド版も提供しているため、イオンペット様のデータ分析基盤に組み込んでいくうえでも最適だと考え、提案いたしました」(小菅氏)。
続けて、Sactonaを提供するアウトルックコンサルティング株式会社 ディレクター 磯和 治彦氏とマネージャー 今林 新氏は、同システムの強みについて次のように説明します。
アウトルックコンサルティング株式会社 ディレクター 磯和 治彦氏 |
アウトルックコンサルティング株式会社マネージャー 今林 新氏 |
「当社はソフトウェアベンダーではなく、経営コンサルティングを生業としています。多くの企業様を支援してきた過程で、意思決定に必要な情報のほとんどが担当者のローカル環境上にExcel形式で保存されていること、そしてそのデータを収集して統合、集計するまでに多大な時間が割かれていることがわかってきました。この経験を踏まえて、Sactonaは『Excelを使った情報管理』はそのままに、『分析、意志決定にかかる時間を縮減』することをコンセプトに設計しています」(磯和氏)。
「Excelはビジネス パーソンであればだれもが利用するソフトウェアです。特別な知識が不要なため、経営情報だけでなくビジネスの各現場に存在する情報を収集する場合にもSactonaは有効です。また、Sactonaで収集した経営情報は、SQL Server Analysis Services(SSAS)によって自動的に集計され、オンライン分析処理(OLAP)による多角的な分析が可能です。関数を利用すれば、見たい種類のレポートを自ら作成することもできます」(今林氏)。
導入効果
予算策定にかかっていた時間がおよそ1/3に。経営情報の信頼性も向上
先の特徴を有するSactonaは、まさにイオンペットが求めるシステムそのものといえました。同社は2016年10月、Sactonaによる経営管理業務のシステム化を正式に決定します。ハードウェア調達を不要とするクラウドの利点、そしてアウトルックコンサルティングとSBTのパートナーシップによって、構築作業はわずか2か月で完了。2017年1月より運用を開始しています。
2017年3月に新年度を控えていた背景から、イオンペットではシステムの稼働からわずか2か月足らずで予算策定を進める必要がありました。しかし、従来3か月を要していたこの作業は、Sactonaを利用することで約1/3もの期間を圧縮。2月半ばには無事、予算策定を終えています。この点について、佐藤氏は驚きとともに次のように語ります。
「Sactonaをもったシステム化によって業務フローに多少の変化が生じましたが、それはExcelファイルのやり取りがメール ベースからWebアプリケーションに変化したという瑣末なものです。業務フローをほとんど変えずに進めることができ、展開も、各部門の代表者に会議で告知するだけで済みました。たったこれだけで、『どのファイルの数字が最新なのか』といった世代管理の不透明さを解消し、情報の信頼性を確保することができたのです。これまで3か月必要だった予算策定作業が1か月に短縮されたことは、Sactonaの優れた利便性を示したものだと思います」(佐藤氏)。
また、Sactonaは経営情報以外にも、これまで各部門がExcelで管理していたさまざまな情報収集と集計に活用することが可能です。これまで部門単位でしか見えていなかった情報が会社全体で可視化されることで、未来予測の実現に大きく近づくと、大坪氏は笑顔で語ります。
「分析基盤をいくら整備したとしても、そこに十分な、そして適切なデータが無ければ意味を成しません。今回Sactonaを導入したことで、各事業部門や現場の手元で扱われている『Excelファイルとしてのみ存在する情報』を収集することもできるようになりました。このことは、Azure SQL DWHによる未来予測を今後実現するうえで、大いに有用でしょう。現在、各店舗の販売スタッフの出勤人数や教育レベルといった情報について、Sactonaを利用して収集することを考えています。こうしたデータと経営データを合わせて分析することで、また新たな事実が見えてくることに期待しています」(大坪氏)。
今後の展望
財務会計以外のデータも収集、分析することで、未来予測を実現していく
Sactonaによって果たした経営管理業務のシステム化は、未来予測の実現に向けた第一歩でもあります。冒頭のとおり、同社ではAzure SQL DWHへの情報集約を、システムのリプレースや業務課題の解決と併せて段階的に進めることを計画。ですが、たとえば動物病院で獣医師の頭の中にある情報をExcelを通じてデータ化して収集するなど、Sactona単体の活用でも、取り組みのきっかけである診断精度の向上など、さまざまなアプローチが可能でしょう。
大坪氏は、今後、こうしたデータの収集と並行して、分析の自動化や機械学習の活用も進めていくと構想を語ります。
「まだ試行段階ですが、オープンデータである天候情報と店舗別、商品別の売上、そしてイベントの実施日とを掛け合わせた検証をAzure Machine Learningで行っています。こうした技術は単なる分析だけではなく、たとえばトリミングサロンで仕上がった写真を撮り貯めた過去事例を、お客様の嗜好に合わせてWebサイト上でレコメンドするなど、さまざまな形で活用できるでしょう。データを収集するだけでなく、こうしたデータの活用案についても、Azureをプラットフォームに今後検討していきたいと考えています」(大坪氏)。
さまざまな情報を多角的に分析し、新たなビジネスの洞察を得る。未来予測というキーワードのもとでこの取り組みを開始したイオンペットは、今後、収集データを段階的に拡張していくことにより、着実にお客様満足の水準を高めていくことでしょう。
「分析基盤をいくら整備したとしても、そこに十分な、そして適切なデータがなければ意味を成しません。今回Sactonaを導入したことで、各事業部門や現場の手元で扱われている『Excelファイルとしてのみ存在する情報』を収集することもできるようになりました。このことは、Azure SQL DWHによる未来予測を今後実現するうえで、大いに有用でしょう。現在、各店舗の販売スタッフの出勤人数や教育レベルといった情報について、Sactonaを利用して収集することを考えています。こうしたデータと経営データを合わせて分析することで、また新たな事実が見えてくることに期待しています」
イオンペット株式会社
システム・Eビジネス・物流グループ
大坪 力氏
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