香港、シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピンなどアジア各国に生命保険、医療保険、損害保険などを提供している FWDグループに属する FWD富士生命保険株式会社は、同グループの最も重要な市場の一つである日本市場を担っています。最先端のテクノロジーを活用したわかりやすい商品の開発とお客様目線のアプローチで、これまでにない顧客体験を提供することを目指す同社では、FWDグループ本社と協働でデータプラットフォームの構築に着手。2020 年 10 月にプロジェクトを始動し、「Azure Synapse Analytics」を取り入れたデータプラットフォームの構築に取り組んでいます。

膨大な情報が蓄積される保険会社におけるデータプラットフォームの重要性

FWD富士生命保険株式会社 IT統括部 シニアマネージャー ヘッドオブデータ 田中 怜子 氏

FWD富士生命保険株式会社 IT統括部 シニアマネージャー ヘッドオブデータ 田中 怜子 氏

デジタルテクノロジーを効果的に使用してビジネスを展開してきた FWD富士生命では、以前よりビジネス課題の解決や顧客の行動把握などにデータを活用してきました。そのなかで見えてきた課題が今回のプロジェクトを立ち上げた要因になったと、FWD富士生命 IT統括部 シニアマネージャー ヘッドオブデータの田中 怜子 氏は語ります。

「少子高齢化、人生 100 年時代、そして昨今の新型コロナウイルス感染症など、保険会社を取り巻く外部環境が目まぐるしく変化していくなかでは、データを活用して外部環境の変化をすばやく捉えて商品やサービスに反映していくことが重要です。これまでも社内・社外のデータを分析して保険査定のリスク分析などに活用してきましたが、そのなかで社内のデータが多数のシステムに散在していることが大きな課題として浮かび上がってきました」(田中 氏)。

姓名・住所・生年月日などの基本情報から身体状態、カスタマーサービスでのお客様とのやり取りなど、保険会社で扱うデータは多岐に渡ります。これらのデータが複数システムに散在していたため、開発・分析に必要なデータを特定して集約する作業に時間がかかっていたと田中 氏。アプリケーションにデータを渡す連携フローも複雑化し、膨大なデータを一元管理できるデータ集約基盤が必要になったと振り返ります。

リソース、コストの最適化を見据えてクラウドサービスの採用を決定

コロナ禍など紆余曲折があり構想が固まった 2020 年 10 月からデータ分析基盤構築プロジェクトとして本格的にスタートしました。構想段階からクラウド上にデータプラットフォームを構築することは決まっていたといいます。

「会社の方針として既存システムのクラウド化推進があったため、プロジェクトの開始時点でクラウドの採用は決まっていました。2020 年に策定した今後 5 カ年の計画でも IT 戦略としてクラウドファーストが掲げられており、データプラットフォームにおけるストレージやトランザクションにかかるコストやリソースの面でもクラウドが最適と考えました」(田中 氏)。

クラウド上にデータ分析基盤を構築する本プロジェクトにおいて、FWD富士生命が開発パートナーとして選んだのは、保険業界におけるデータ活用で豊富な実績を持ち、保険業界特有の課題にも精通しているシステムインテグレーターである株式会社システムエグゼでした。Microsoft Azure をはじめクラウドサービスに対する知見とリソースを持っていることも、パートナーに選んだ大きな要因になったといいます。

FWD富士生命とシステムエグゼがタッグを組み、2020 年 10 月よりデータプラットフォームの構築が開始されます。その一部としてデータウェアハウス(DWH)用途に採用されたのが、エンタープライズ SQL データウェアハウスとビッグデータ分析サービスが統合されたマイクロソフトのクラウドソリューション「Azure Synapse Analytics」でした。本プロジェクトで IT Lead を務めた FWD富士生命 IT統括部 開発2部 データエンジニアの安孫子 洋平 氏は、採用の理由をこう語ります。

「DWH の基盤として柔軟なスケーリングが可能で、アプリケーションとの連携も容易に行えること、さらに T-SQL を利用できることで、開発者のノウハウが属人的にならないことが大きなメリットと感じました。さらに Azure Databricks や Azure Machine Learning など、多くの Azure 製品とオーケストレーションできるのも重要なポイントといえます。開発の側面だけでなく、異なるデータベース群のデータをデータプラットフォーム内で集約したうえで、お客様のニーズを全方位的に把握可能にしてお客様本位の戦略を支える Single View of Customer の形成、また組織内の全員が同じデータに基づいてビジネスの意思決定を確実に行えるよう、共通データモデルを構築して信頼できる唯一の情報源(SSOT:Single Source of Truth)を確保するために Azure Synapse を利用していきます」(安孫子 氏)。

開発ベンダー側のプロジェクトマネージャーとして本プロジェクトに携わった株式会社システムエグゼ BIソリューション本部 ERP-BIソリューション部 次長の小澤 隆弘 氏も、FWD富士生命が求めるデータプラットフォームには Azure Synapse Analytics が最適な選択肢だったと感じています。

「FWD富士生命様は、契約管理システムをはじめ、さまざまな業務システムに大量のデータを保持しており、必要なデータの抽出やシステム間のデータ連携に苦労されていました。さまざまなデータソースの接続に対応し、膨大なデータを丸ごとデータレイクに蓄積できるキャパシティと、さまざまな分析要求に迅速に対応できる DWH の機能を兼ね備えた Azure Synapse Analytics は、最適なクラウドサービスといえました」(小澤 氏)。

  • FWD富士生命保険株式会社 IT統括部 開発2部 データエンジニア 安孫子 洋平 氏

    FWD富士生命保険株式会社 IT統括部 開発2部 データエンジニア 安孫子 洋平 氏

  • 株式会社システムエグゼ BIソリューション本部 ERP-BIソリューション部 次長 小澤 隆弘 氏

    株式会社システムエグゼ BIソリューション本部 ERP-BIソリューション部 次長 小澤 隆弘 氏

3 段階のスプリントで社内全データの 80% をデータプラットフォームに投入

システムエグゼをパートナーに迎え、2020 年 10 月にシステム構築を開始した FWD富士生命は、3 つのスプリントに分けて段階的にプロジェクトを進めています。現在取り組んでいるスプリント 1 では、同社が運用している 2 つの保険契約管理システムにあるデータの 30% をデータプラットフォームに投入するのが目標。小澤 氏は「現在(2021 年 1 月末時点)は結合テストフェーズを実施している状況で、性能テスト、システムテストと進めてリリースする予定です」と進捗状況を語ります。

今春にリリース予定のスプリント 2 では、保険契約管理システムにある残りの全データと、他のシステムに保存されているデータの一部を投入する予定。さらにスプリント 3 では、FWD富士生命が持つ全データの 80% をクラウドデータプラットフォームに投入することを目指しています。

プロジェクトを進めていくなかで表面化してきた課題の中、安孫子 氏は FWDグループ本社との話し合いを経て、マイクロソフトのデータ分析プラットフォーム「Azure Databricks」を活用したと話します。

「設計段階で、日本の FWD富士生命と FWDグループ本社で開発手法について話し合いを行った結果、急遽、Azure Databricks を利用した開発が必要になりました。システムエグゼさんに迅速に対応していただき、スケジュールを遅らせることなく進められています」(安孫子 氏)。

小澤 氏も「Azure Synapse Analytics をメインで実装を進めているところに、プラスアルファで Azure Databricks の実装が必要となりましたが、プロジェクトメンバーに Azure Databricks のノウハウを持ったメンバーもおり、さらにレスポンスの早いマイクロソフトのサポートもあって、対応することができました。」と振り返ります。

参考:システムエグゼのデータ分析プラットフォーム構築サービス for Microsoft Azure

スプリント 1 が最終段階に入り、実際に Azure Synapse Analytics に触れる機会が多くなった安孫子 氏は、「専門的な知見を持たない人でも、触ってみるとすぐに使えるようになるという印象を受けました」と、Azure Synapse Analytics のメリットを実感しています。今後のスプリントでは、データプラットフォームに取り込む際のデータ分類(整理)や、保険システムが異なるグローバル各社とのすり合わせを進め、社内データの 80% を一元的に管理・活用できるデータ分析基盤の構築を完了させる予定です。

データ分析基盤を構築して本来の目的である“データ活用”のステージへ

FWD富士生命保険株式会社 IT統括部 開発2部 データスペシャリスト 浦 絵梨子 氏

FWD富士生命保険株式会社 IT統括部 開発2部 データスペシャリスト 浦 絵梨子 氏

当然のことですが、FWD富士生命保険ではデータ分析基盤の構築をゴールとは捉えていません。データソリューションエンジニアとして本プロジェクトに参画している IT統括部 開発2部 データスペシャリストの浦 絵梨子 氏は、データ分析基盤の構築後の展開についてこう語ります。

「当社の保険契約管理システムは 2 つに分かれており、これまで横断的にデータを見ることができませんでした。今回のプロジェクトで 1 つのデータプラットフォームに集約できたことで、さまざまな分析が行える環境や、ビジネスユーザーが見たいデータにすばやくアクセスできる環境を構築できると考えています」(浦 氏)。

並行してデータプラットフォームの中ではリアルタイムでデータを連携させた顧客サービスの提供も今後実現していきます。

FWD富士生命とシステムエグゼが進める Azure Synapse Analytics を取り入れたデータ分析基盤構築と、その後に展開されるデータ活用の取り組みには、保険会社だけでなくデータ活用を推進したいすべての企業が注視していく必要があるでしょう。

[PR]提供:日本マイクロソフト