いまやクッキーを活用した情報取得は企業のWebサイト運営に欠かせないものとなり、それに伴いクッキーバナーも誰にとっても見慣れた存在となった。しかしそのWebサイトの設計やデザインによっては、ユーザーの意図に反して特定の行動へ誘導させるようなこともあり、結果として使いづらさや不透明さを感じさせ、信頼を損ねる可能性もある。近年では、こうした設計やデザインは「ダークパターン」と呼ばれ、社会的な関心を集めている。
本記事では、ダークパターンの実態と、企業が信頼を守るために見直すべきクッキーバナー設計のポイント、そしてその解決策を探っていく。
ダークパターンとは何か─「ユーザーの意思」をすり替える設計に注意
「このサイト、なんだか操作しづらいかも…」
自社のサイトが、ユーザーにそう感じさせてはいないだろうか。ページを開いた瞬間に現れるクッキーバナー。選択肢は「同意する」しかなく、拒否しようとしてもボタンが見つからない。ようやく拒否の方法を見つけたが、長々と説明が書かれていて何をしたらいいのかわからないため、結局拒否できないままとなってしまう。――そんな「違和感」の正体こそが、今、社会問題として注目されている「ダークパターン」である。
「ダークパターン」とは、ユーザーが本来望まない行動を取らされるように設計されたWebインターフェースのことで、企業に有利なように消費者を誘導するオンライン上の設計全般を指す。
たとえば、クッキーバナーにおいては、以下のような設計がダークパターンに該当する。
- 「同意する」しか選択肢がないバナー
- 拒否ボタンが極端に小さく、見つけにくい
- 拒否しても情報が取得され続ける「うそのバナー」
- 同意しないと先に進めない「クッキーウォール」
- 情報取得の目的が不明瞭で、ユーザーが判断できない
こうした設計は、企業にとってはデータ取得や売上向上に有利である一方、消費者にとっては不快で不信感を抱かせる要因となる。特に高齢者や子どもなどITに慣れていないユーザーにとっては、こうした設計が大きな不利益をもたらす可能性がある。
さらに、Webサイトがダークパターンにならないように誠実な取り組みをしている企業が十分な評価を得られず、一方で配慮に欠けた設計を行う企業が利益を得てしまうような状況が生まれ、健全な市場競争のバランスが崩れる恐れもある。ダークパターンは、単なるユーザー体験の問題ではなく、社会全体の信頼構造を揺るがす課題なのだ。
ダークパターンが招く信頼の崩壊
現在、多くの企業のWebサイトにおいて、ダークパターンにあてはまるようなサイト構成が見受けられるのが実情だ。ユーザーが拒否しにくいように設計されたクッキーバナーは、短期的にはデータ取得に貢献するかもしれないが、長期的には企業の信頼を損なうことにつながる。また、悪意がなくとも自社サイトがダークパターンを引き起こすような構成となっていることもあり、企業側にとっては注意が必要だ。
たとえば、クッキーバナーの設計が不適切である場合、ユーザーが情報取得の仕組みを理解できず、拒否操作が困難になる。ITリテラシーの高いユーザーでなければ、ブラウザ設定によるクッキー削除などの対応は難しく、結果として企業側が一方的に有利な状況を作り出してしまう。
こうした状況は、消費者庁が提唱する「脆弱性に配慮した法制度」の議論にもつながっている(参考:消費者法制度のパラダイムシフトに向けた検討)。誰にとってもわかりやすく誠実な情報提供を行うことが、CSR(企業の社会的責任)として求められているのだ。
新CMで STRIGHT(ストライト)が示す「誠実な選択肢」とは
クッキーバナーにおけるダークパターンを解決するソリューションとして、インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)が提供しているのが「STRIGHT(ストライト)」だ。STRIGHTは、ユーザーのプライバシー保護とWebサイトのブランド力向上を両立させる設計を可能にする。
2025年6月には、ダークパターン対策におけるSTRIGHTの価値を伝える新CM「ダークパターン講座」編が2本公開された。
とあるアパレル企業を舞台に、自社のWebサイトの立ち上げに際し、同意バナーを表示させる必要があることは認識しているものの、正しい知識を持っていないことからなんとなく形だけ表示させる「なんちゃって同意バナー」や、画面いっぱいに同意バナー表示をさせて、同意をしないとコンテンツを見ることができない「クッキーウォール」などといったダークパターンが生み出される様子が描かれている。
さらに、消費者目線からダークパターンの問題を描いたバージョンでは、Webサイトを利用しようとした際に同意しないと進めない「クッキーウォール」に困惑したり、複雑な手順で拒否しにくいWebサイトの仕様に悩まされたりする様子が描かれている。消費者にも「これは自分の使っているサイトでも見たことがある」と気づきを促す構成となっている。
これらのCMからわかる通り、STRIGHTを導入することで、ダークパターンを避けた、ユーザーに優しい設計が可能となる。
従来の画面いっぱいに表示されるクッキーバナーは、サイト離脱率を高め、デザインを損なう懸念があった。しかしSTRIGHTはフッターやメニュー内に「プライバシー設定」リンクを設けることで、ユーザーが必要なときに情報を確認・拒否できる仕組みを提供する。これにより、企業はマーケティングデータを確保しつつ、ダークパターンにならないクッキーバナーの設計が可能となる。当然ながら、従来のクッキーバナーと同様の表示にも対応しており、積極的にプライバシー保護の姿勢をアピールすることもできる。その際もクッキーバナーのデザインは高いカスタマイズ性を備えているため、サイトのトーン&マナーに配慮した形で柔軟に実装が可能だ。
Webサイトのユーザビリティとプライバシー保護を考慮した設計は、まさに「誠実なWebサイト」の象徴といえるだろう。
「WebサイトにはSTRIGHT」がこれからのスタンダードに
近年、プライバシー保護に対する社会的関心は高まり続けている。欧州ではGDPR、日本では個人情報保護法や電気通信事業法の改正、米国ではCCPAなど、世界各国で規制が強化される中、企業はより一層のコンプライアンス対応が求められている。
こうした中で、IIJが提供するSTRIGHTは、企業が消費者に対して誠実であることを示す「信頼の証」となる新たなスタンダードであり、CSRを果たす姿勢の表れともなりうるものだ。
日本ではクッキーバナーの掲示義務は限定的であり、多くのWebサイトでは通知や公表で十分とされている。コーポレートサイトではプライバシー重視の姿勢を示すために掲示される傾向がある一方、ブランドサイトでは離脱率やデザインへの影響を懸念し導入が進んでいない。そのため、フッター等に「プライバシー設定」リンクを設け、必要なときに情報開示やオプトアウトを可能にする設計が求められている。このような設計は、ユーザーの「同意疲れ」を回避し、企業の信頼性を高めるとともに、法務・広報部門の意図も反映できる三方良しの解決策となる。
STRIGHTはユーザーにとって使いやすく、企業にとっても信頼性を高める有益なツールであり、ダークパターン対策にも効果を発揮する。こうした設計思想を取り入れることは、企業の責任ある情報提供の姿勢を示す上で重要であり、STRIGHTは今後、Webサイト構築における信頼の基盤として定着していくであろう。
本記事は、株式会社インターネットイニシアティブのご協力のもと制作いたしました。
株式会社インターネットイニシアティブ ビジネスリスクコンサルティング本部 部長
中西 康介氏
20年に渡りミッションクリティカルかつ高度なセキュリティが要求されるシステムの開発及び事業継続の研究・サービス開発に従事。2017年よりプライバシー保護のコンサルティング及びプライバシーテック領域の研究・サービス開発、また、デジタルマーケティング施策の研究・運用などに従事するとともに、コンサルティング業務の品質管理などを行う。
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