生成AIをはじめ、企業内に蓄積された機密性の高いデータを活用して業務の効率化やイノベーションの創出を目指す動きが加速している状況のなか、クラウドとオンプレミスを適材適所で使い分けるハイブリッドクラウドの業務環境を構築する企業は増加傾向にある。このためPC/ワークステーション/サーバーなど、オンプレミス上で使われる端末に求められる役割も変化してきた。なかでも製造業においては、デザイン/設計など製品開発向けの端末であるワークステーションの利用範囲が拡大しており、リプレイス時には、さまざまな要素を加味したうえで最適な製品の選定が必要だ。

本稿では、エントリー向けワークステーションのラインナップを一新し、市場のニーズに応えた次世代デスクトップワークステーション/モバイルワークステーションを展開する日本HPの担当者に話を伺い、製造業におけるワークステーションの役割と、製品選定のポイントについて確認していく。

  • 今回刷新されたエントリー向け次世代デスクトップワークステーション左から Z2 Mini G1i , Z2 SFF G1i , Z2 Tower G1i

    今回刷新されたエントリー向け次世代デスクトップワークステーション
    左から Z2 Mini G1i , Z2 SFF G1i , Z2 Tower G1i

AIのビジネス活用が、製造業におけるワークステーションの役割に変化を生んだ

働き方改革やコロナ禍の影響といった要因により、さまざまな業種・業態で在宅勤務やリモートワークなどクラウドを活用した柔軟な業務形態が導入された。ところが製造業、特に機密情報である設計データを社外(クラウド)に持ち出すことに抵抗がある製品設計・開発部門においては、これまでどおり社内のサーバーやワークステーションでの作業が中心となっているのが現状だ。とはいえ、AI活用がビジネストレンドとして注目を集めている昨今では、3D CADやデータ解析など、負荷の高い作業を行うプロ用途向けの業務端末として使われてきたワークステーションの立ち位置に、変化が生じてきている。

日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長の大橋 秀樹 氏は、製造業におけるワークステーション市場の動向とトレンドについて、次のように分析する。

「製造業でマシンパワーを必要とする業務は、主に設計と解析、それと工業デザインになると思います。工業デザイナーが意匠デザインしたものから設計し、そのデータを解析してといった流れで製品が開発されていくなかで、CGツールや3D CADツール、CAEツールなど処理負荷の高いアプリケーションが使われています。また近年では、モックアップではなくデジタルツインでシミュレーションを行うようになるなど、ハイパワーの端末が必要とされるシーンが多くなりました。さらに設計者が解析まで行うケースも増えたことで、GPUはもちろん、CPU性能も高く求められ、長時間稼働を可能とする排熱機構を有したデスクトップ型ワークステーションの需要が高まっている状況です」(大橋氏)

  • 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長 大橋 秀樹 氏

    日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長 大橋 秀樹 氏

また昨今では、製造業においても生成AIを活用して業務効率化を図る動きが加速しており、社内の機密データを用いたAI開発を、クラウドではなくオンプレミス上のサーバーで行いたいと考える企業も増えてきている。これを高性能な最新ワークステーションで代替するというアプローチも注目されていると話すのは、日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長の中島 章 氏だ。

「ローカル環境で重たいAI開発を行う場合、ハイエンドなCPUとGPUを搭載したサーバー上にシステムを構築するのが一般的ですが、多くの企業にとってサーバー導入はハードルが高いものです。導入にかかるコストや手間は、AI活用をトライアルで試してみたいというニーズにはそぐわない。これに対し、サーバーと同様に高性能GPUを搭載でき、CPUの処理能力も高い最新ワークステーションならばクライアント端末なので導入しやすく、スモールスタートでAI活用を推進できます。最終的に大規模活用する際はサーバーでとなるかもしれませんが、効果的な活用方法を模索する段階においてはワークステーションのパワーで十二分に対応できると思います」(中島氏)

大橋氏も「サーバー導入はイニシャルコストに加えて承認レベルも高く、部門決済で購入できるエントリー向けワークステーションでのAI活用を検討する企業は増えています」と語り、さらにOSやアプリケーションが提供するAI機能の活用においても、最新CPUを搭載したワークステーションを導入する価値はあると話を展開する。

「最近ではCADや解析ツールなど製造業向けの専用アプリケーションにおいてもAI機能が実装されてきていますが、一方で事務系のオフィスアプリケーションやOS自体にもAI機能が追加されています。当然ながらエンジニアもオフィスアプリケーションを使いますし、そこをAI機能で効率化できれば本来の設計・解析作業に注力できるようになります。このため、AI処理に特化したプロセッサーを搭載した次世代CPUを採用し、高性能GPUも搭載可能な最新ワークステーションへの期待は高まっていると感じています」(中島氏)

  • 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長 中島 章 氏

    日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長 中島 章 氏

タワー型・モバイルノート型、すべてのモデルがAI ワークステーションへと進化を遂げる

こうした市場の変化を受け、日本HPではワークステーション製品のラインナップを刷新した。デスクトップ型のエントリーモデルであるZ2シリーズでは、次世代のインテル® Core™ Ultra プロセッサー(シリーズ2)を搭載可能な3つのモデルを展開。プロ向けのGPUや最新DDR5メモリーも搭載可能な拡張性を備えたタワー型モデル「Z2 Tower G1i」では、冷却性能を高めるために再設計された新しい格子状の通気孔が、エアフローの吸入を最適化させている。

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薄型コンパクトな筐体を採用しながら高性能GPUも搭載可能で、プロの現場で使えるパフォーマンスを発揮する「Z2 SFF G1i」は、前モデルと比較し20%の小型化を実現。製造業・設計者向けワークステーションの標準機と位置付けられている。

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さらにコンパクトなミニ筐体を採用した「Z2 Mini G1i」も、インテル® Core™ Ultra 9(シリーズ2)を搭載でき、他のモデルと同様、より高クロックの「K」シリーズも選択可能。ラックマウントも想定されたデザインで、5Uラックに6台を収納することができる。このためサーバールームのラックに設置し、オフィス内のPCやモバイルワークステーションからアクセスするといった柔軟な使い方にも対応する。

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「最新のインテル® Core™ Ultra プロセッサーを搭載したワークステーションならば、これまでインテル® Xeon® プロセッサーを搭載したハイエンドワークステーションやサーバーでしかできないと考えられていた用途でも利用可能です。またAI処理に特化したNPU(Neural Processing Unit)を搭載しているため、CPUやGPUのリソースを割くことなく、AI機能やAIツールの活用もできます。

タワー型のZ2 Tower G1iはメモリーやGPUの高い拡張性に加えて、最大1200Wの電源ユニットを搭載したモデルのリリースも予定しており、もはやエントリーの領域を超えたモデルといえます。また、ハイエンドディスクリートGPUとインテル® Core™ Ultra プロセッサーを組み合わせれば、GPU性能が必要な設計作業と、CPU性能が必要な解析作業を1台のマシンで対応可能です。省スペースと高パフォーマンスを両立させたZ2 SFF G1iや、ミニ筐体を採用したZ2 Mini G1iは、オフィスのデスクスペースを占有しないだけでなく、ラックマウントでの利用にも対応しており、弊社が提供するリモートアクセスツール「HP Anyware」を使えば、オフィス内のどこからでも、ノートPCを用いて作業することが可能になります」(大橋氏)

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さらに、近年ではサブ機としてモバイルワークステーションを利用する企業も増えてきていると大橋氏は続ける。

「VR/AR/MRなど現実世界と仮想世界を融合するXR技術を利用するには持ち運び可能なモバイルワークステーションが最適で、製造業においても導入されるケースが増えてきています。このため弊社ではモバイルワークステーション「ZBook」のラインナップも刷新しました。14インチの軽量モデルから、18インチの大画面・高性能モデルまで幅広い製品を用意しています」(大橋氏)

日本HPは今回のラインナップ刷新で、14インチ/16インチ液晶を採用したエントリーモデル「ZBook 8」から、16インチのミッドレンジモデル「ZBook X」、そして新たに18インチモデルもリリース加わった最上位モデル「ZBook Fury」まで多様なモバイルワークステーションを取り揃えて各業界のニーズに対応した。

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すべての製品が次世代のインテル® Core™ Ultra プロセッサー(シリーズ2)を搭載可能で、CAD/CG/解析といった専門的な作業も余裕でこなせるパフォーマンスを提供する。さらに、搭載されているNPUの進化により、AIにおける処理性能を示す単位の一つであるTOPSも高いため、エッジ(端末)レベルで生成AIを活用したいというニーズにも最適だ。実際、AI処理を必要とする業務では、ハイエンドノートPCではなくモバイルワークステーションを導入するケースも増えてきているという。

インテル® Core™ Ultra プロセッサー(シリーズ2) 搭載モデルが登場した今こそ、
ワークステーション導入に絶好のタイミング

ワークステーション市場を牽引し続けてきた日本HPが提供する製品は、エンジニアの要望を反映させた作り込みが特徴だ。主要な設計・開発ソフトウェアはISV認証され、安定動作が保証されている。さらにハードウェアの構成やデザインにまでこだわることで、プロの現場で活用できる製品に仕上げてある。

「ワークステーションは、一般的な業務PCとは一線を画す領域の製品で、性能面はもちろん、プロのエンジニアが使うソフトウェアが安定して動くことを重視して設計されています。多くのメーカーから多様なワークステーションがリリースされており、スペックだけを比べると同じように見えるかもしれませんが、“エンジニアの仕事を止めない”ことを突き詰めた日本HPの製品は、パーツの選定から冷却性能の強化、拡張性の担保まであらゆる要素が盛り込まれており、そこが製品選定における重要な差別化ポイントとなっています」(中島氏)

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オフィスアプリケーションから、設計/解析/3D CGなどに用いるツールまで、あらゆるソフトウェアにAI機能が実装されるようになった現在、高いAI処理性能を誇る次世代のインテル® Core™ Ultra プロセッサーを搭載する最新ワークステーションを求める声は増えている。製造業におけるワークステーション活用では、5年スパンなど比較的長期にわたり運用する企業が多い傾向にあるが、AIのビジネス活用がさらに進むと予想される将来を見据えれば、AI ワークステーションが登場した今こそが、リプレイスに最適のタイミングであると大橋氏は力を込める。

「業務で利用するソフトウェアがサブスクリプションで提供されるようになり、ユーザーは常に最新の機能を使えるようになりました。とはいえハードウェアが古いままでは、先進的なAI機能が実装されても効果的に利用できないケースも出てきます。今後ますます、ローカル環境、すなわち端末側で利用できるAI機能が増えていくと考えられているなか、最新ワークステーションへの切り替えは極めて有効な一手となります。

Windows 10のEOSが2025年10月に迫っていることもあり、前倒しでリプレイスを検討されている企業も多いと思います。次世代のインテル® Core™ Ultra プロセッサー(シリーズ2)を搭載した最新ワークステーションを導入すれば、次のリプレイスまでの5年間、ハードウェアスペックで悩むことはなくなるはずです」(大橋氏)

ワークステーションのリプレイスを考えている方や、ワークステーション/PCの選定に悩んでいる方は、日本HPの刷新された新しいワークステーションラインナップをぜひ検討してみてはいかがだろうか。

日本HPが新たに提供を開始する
ワークステーションを一部ご紹介!

  • 図版

※各製品リンクの日本語版ページは5月中旬以降に公開予定です。

HP Z2 Tower G1i

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高い拡張性と安定した電源、大きく向上した冷却性能を誇る、エントリー向けのタワー型ワークステーションです。さらにインテル® Core™ Ultra プロセッサー(シリーズ2)を搭載したハイパフォーマンスモデルのため、レンダリングやシミュレーションから、ビデオ編集や膨大なデータセットの準備まで、高度なワークフローに対応。
エントリー向けでありながらワークステーションのメインストリーム性能を持つ製品となっています。

>>>HP Z2 Tower G1i

HP Z2 SFF G1i

  • 図版

薄型コンパクトでありながら、高性能GPUが搭載可能なカスタマイズ性と、インテル® Core™ Ultra プロセッサー(シリーズ2)を搭載した高いパフォーマンスで、多くのユーザーを支えるスリムタワー型ワークステーションです。
その筐体は前モデルより20%小型化を実現しており、ラックマウントにも搭載することが可能なため、様々な限られた環境のなかで高いパフォーマンスを発揮できます。

>>>HP Z2 SFF G1i

HP Z2 Mini G1i

  • 図版

スリムタワー型よりもさらに小さい筐体を持つ本製品は、ミニ筐体でありながら他モデルと同様にインテル® Core™ Ultraプロセッサー(シリーズ2)の搭載が可能となっており、高いパフォーマンスを誇ります。さらにサーバールームのラックマウントへ設置することを想定されて設計されたデザインは、5Uラックに6台の設置を可能にするなど、圧倒的省スペース性を発揮しています。

>>>HP Z2 Mini G1i

HP ZBook Fury G1i

  • 図版

ZBookシリーズのフラッグシップモデルとして登場したZBook Furyでは、16インチと18インチが用意されており、ユーザーのあらゆるニーズ答えます(上記写真左側、18インチ)。さらにインテル® Core™ Ultra プロセッサー(シリーズ2)を搭載したことで、可搬性と高いパフォーマンスを両立させており、TDP200Wの電源でCPUの性能を最大限引き出すことで、持ち運び先での様々な作業を可能にしています。

>>>HP ZBook Fury G1i

HP ZBook 8 G1i

  • 図版

ZBook Fireflyの後継モデルとして登場した、モバイルワークステーションのエントリーモデルであるHP ZBook Fury G1iは、14インチと16インチの2種類が用意されています(上記写真右側、14インチ)。また本機種よりユーザーの要望を叶え、優先LANポートを搭載しており、NPUを内蔵するインテル® Core™ Ultra プロセッサー(シリーズ2)の採用により、複雑で重い処理を行う業務から一般的な業務まで、幅広く活躍できるモバイルワークステーションです。

>>>HP ZBook 8 G1i