最近増えている「Copilot+ PC」。普通のPCと何が違うのか気になっている人もいるだろう。これは、Microsoftが2024年6月に発表したAI PCの基準を満たす製品のこと。
CPUに内蔵されたAI特化型プロセッサーのNPU(Neural network Processing Unit)によってクラウド経由ではなくローカルでのAI処理に強いのが最大の特徴だ。では、Copilot+ PCによって何が可能になるのか。ビジネスのどんな場面で役に立つのか。マウスコンピューターのノートPC「MousePro G4-I7U01BK-E」を例に、紹介していきたい。
※無償アップデートによるCopilot+ PCへの対応は、執筆時点(25年3月4日)では、Windows側がテスト段階でしたが、3月末公開のアップデートを手動で適用することで一部機能が使用可能になっています。なお、全機能に対応するアップデートは後日予定されています。
NPUのメリット、Copilot+ PCを活用できるアプリやサービスは?
Microsoftが定めるCopilot+ PCのシステム要件は16GB DDR5/LPDDR5のメモリ、256GB SSD/UFSのストレージに加えて、重要となるのが40TOPS以上の処理性能を持つNPUを搭載していること。なぜNPUが重要なのか。AI処理はCPUやGPUでも実行でき、現在では高速な並列処理を得意とするGPUを活用することが多いが消費電力が大きいのが課題だ。
しかし、NPUはAI処理を高速かつ低消費電力で行えるのが大きな強み。NPUにAI処理を任せることで、CPUとGPUに余裕ができ、別の作業を並行して進めやすくなるというメリットもある。
これまでNPUに対応するアプリの少なさが課題だったが、Windows 11のアップデートによってCopilot+ PCを活用できるアプリやサービスが拡充されつつある。ここではその代表的なものを紹介しよう。
※無償アップデートによるCopilot+ PCへの対応は、執筆時点(25年3月4日)では、Windows側がテスト段階でしたが、3月末公開のアップデートを手動で適用することで一部機能が使用可能になっています。なお、全機能に対応するアップデートは後日予定されています。
●Microsoft 365 Copilot
生成AIをWordやExcelといったOfficeアプリ上で使える機能(利用には有償ライセンスが必要)。現在はクラウド経由で処理されるが、NPUにも対応予定となっている。
●コクリエイター
Windowsの「ペイント」アプリに搭載される生成AI機能。手書きのラフスケッチと言葉(プロンプト)を組み合わせることで画像を生成する。プロンプトだけの画像生成よりも自分が望むイメージに仕上げやすいのが便利だ。
●リコール
定期的にデスクトップのスクリーンショットを保存し、この画像情報をNPUによってインデックス化を行い、後から検索できるようにするもの。例えば「赤い折れ線グラフ」などざっくりした言葉で過去にExcelなどで作ったグラフやWebサイトで見たグラフを候補として表示できる。現在はプレビュー版が提供されている。
●Windows Studio エフェクト
Webカメラの映像に対して背景をぼかしたり、自動的に自分を中心にする自動フレーミング、視線をカメラ方向に補正するアイコンタクトといった効果をNPUで処理できる。これらの効果はMicrosoft TeamsなどのWeb会議アプリにそのまま適用が可能だ。
●イメージクリエーター/リスタイル
Windowsの「フォト」アプリに搭載されている画像生成機能。テキストから画像を生成するイメージクリエーターと既存の画像からプロンプトや選択したスタイルで変換するリスタイルが用意されている。
●ライブキャプション
音声をリアルタイムに翻訳して画面上に表示する。NPUによって高速に翻訳が可能だが、現在は英語の表示にしか対応していないため、日本語の音声に英語字幕をつけたい、といった用途に向いている。
ビジネスシーンにおいての有効な活用方法
AI処理に強いCopilot+ PCだが、ビジネスシーンでまず役立つのは大規模言語モデル(LLM)*だろう。
*テキスト生成、翻訳、要約、質問応答など、さまざまな言語関連のタスクに利用できるモデル。
現在MicrosoftではNPUへの対応を進めているが、まだ完全に環境が整っていないこともあり、今回は手軽にLLM環境を構築できる「LM Studio」アプリを利用した。LLMは日本語に対応、商用利用も可能なELYZA社の「Llama-3-ELYZA-JP-8B」を使用している。
自分の代わりにメール文章の作成や企画のアイデア出しを
LLMは多彩な使い方が可能だが、分かりやすいのはメールの文章作成や企画のアイデア出しだ。例えば、「ライターにCopilot+ PCについて解説する原稿を2週間の納期で依頼するビジネスメールの文章を作成してほしい」と入力すれば、依頼に必要と思われる内容をしっかりと盛り込んだ文書を出力する。もちろん、内容の微調整は必要だが、手間をかなり減らせるのは確かだ。
このほか、「Copilot+ PCの活用方法について企画書を提案してほしい」と入力すれば、タイトルや目的、メリットなどを箇条書きにしてくれる。付け足しは必要になるが、アイデア出しとしては非常に有効だ。例えば1度目の質問で思った回答ではなかったときは、再度具体的にもしくは方向性を変えるなどして問いかければ、より精度が高まった回答が得られる。AIは疲れないので、いくらでも文章を作ってくれるから心強い。 また、資料などの長文の要約や調べ物にも便利。現在は主にGPUで処理されるが、NPUに対応すれば、より低消費電力でLLMを利用できるようになるはずだ。
Web会議中、背景にぼかしの入れ忘れを防ぐ
Windows Studio エフェクトは、NPUによってWebカメラの映像に効果を追加する機能だが、カメラの設定で有効化しておけば、Microsoft TeamsやZoom、Google MeetなどWeb会議アプリに関係なくその効果が反映されるのが非常に便利だ。Web会議アプリは相手の都合に合わせて複数使うことも多いだけに、Windows Studio エフェクトを使えば、背景にぼかしを入れ忘れたといった事故を防げる。NPUで処理されるので、CPUとGPUに負荷がかからないのもよいところだ。
社内の提案資料に使うイメージ画像を手軽に生成
フォトに搭載されるイメージクリエーターは、プロンプト*から手軽に画像を生成できる。社内の提案資料に使うイメージ画像がほしいといったシーンで有効だ。ただし、イメージクリエーターやペイントのコクリエイターは個人利用を想定した機能となっている点は注意が必要となる。
*特定のタスクや目的を達成するために、AIやコンピュータに対して与える指示や入力のことを指します。
軽い薄い高性能とAI機能以外も注目の「MousePro G4-I7U01BK-E」
ここまでのAI機能に関してMousePro G4-I7U01BK-Eを使って紹介してきた。Copilot+ PCに準拠しているので優れたAI処理性能を持っているのはもちろんだが、それ以外のスペックも充実している。搭載されているCPUの「Core Ultra 7 プロセッサー 258V」(8コア8スレッド)は、オフィスワークはもちろん、クリエイティブ、ゲーミングもこなせる汎用性の高さを持つ。
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■MousePro G4-I7U01BK-E (239,800円~/税込)
【基本スペック】CPU:インテル® Core™ Ultra 7 プロセッサー 258V、グラフィックス:インテル® Arc™ グラフィックス 140V、メモリ:32GB (CPU内蔵32GB / デュアルチャネル)、M.2 SSD:500GB (NVMe Gen4×4)、サイズ:約W314×D224×H18.3mm(折り畳み時/突起部含まず)
特にGPUの「インテル Arc グラフィックス 140V」は、内蔵型GPU*としてはかなり高い性能を持ち、写真・画像の編集、軽微な動画編集などのクリエイティブ作業も対応可能だ。
*コンピュータの中央処理装置(CPU)に、グラフィックス処理ユニット(GPU)が内蔵されているタイプのことを指します。グラフィックス機能がCPUの内部に組み込まれているため、独立したグラフィックスカードをがなくても簡単なクリエイティブ作業が可能です。
なお、メモリは32GBがCPUに統合されており、後から増設はできない。32GBあれば基本的に困ることはないだろう。ストレージはNVMe Gen4x4対応と高速な500GBのSSDを搭載している。
本体に目を向けよう。ディスプレイのサイズは14型と見やすいサイズを確保しながら、約946gという強烈な軽さを実現。
ボディの厚みはわずか18.3mmと薄く、高い性能を備えながら手軽に持ち運べる。バッテリー駆動時間も動画再生で約6.0時間、アイドル状態で約19.0時間(いずれもJEITA 3.0)と長く、モバイルノートPCとしても優秀だ。
ディスプレイの解像度はWUXGA(1,920×1,200ドット)で、映り込みのないノングレア仕様。リフレッシュレートは一般的な60Hzとなっている。
インタフェースは左側面にThunderbolt 4、HDMI出力、USB 3.2 Gen 2 Type-C、右側面にmicroSDカードスロット、USB 3.2 Gen 1、ヘッドセット端子を備えている。有線LANは非搭載。HDMIとThunderbolt 4を組み合わせることで、外部ディスプレイへ2画面同時出力も可能で、本体のディスプレイを合わせれば3画面のマルチディスプレイ環境を構築できる。ワイヤレス機能はWi-Fi 7とBluetooth 5に対応。本体のサイズは約W314×D224×H18.3mmだ。
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左側面はUSB 3.2 Gen 2 Type-C、HDMI出力、USB 3.2 Gen 2、Thunderbolt 4
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右側面にmicroSDカードスロット、USB 3.2 Gen 1、ヘッドセット端子
カスタマイズしての注文が可能なマウスコンピューターらしく、MACアドレスパススルー機能付き有線LANアダプタや、外出時に通信できるLTEモジュールを追加できるのも大きな特徴。このほか、標準で3年間無償センドバック保証が付属。MousePro Gシリーズは最大で5年間まで延長可能なのに加えて、補償内容を拡張するサービス「破損盗難保証サービス」に加入で、「予期せぬ事故による破損」だけでなく「災害」「盗難」に対しても保証という手厚さがあるのも見逃せない。
これからノートPCを買うならCopilot+ PCがオススメ
NPUを活用するアプリが着実に増えていている。ビジネスの効率化にAIはどんどん取り入れられていくと考えられるが、セキュリティの面からサーバー型ではなく、PC内で処理するローカル型が中心になるはずだ。そういった点から今後ノートPCを買うならCopilot+ PC準拠したものがよいだろう。さらにモバイル性能も重視するなら、1kgを大きく切るMousePro G4-I7U01BK-Eはうってつけの存在だ。