学校法人立命館(以下、立命館)大阪いばらきキャンパス(以下、OIC)に、立命館と日本マイクロソフトの拠点「Microsoft Base Ritsumeikan」が誕生して1年が経った。
マイクロソフトが提供する製品・サービスを活用し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現やスタートアップ人材の育成に寄与するBase=発信基地である「Microsoft Base」が教育機関に設置されるのは全国初の試みだっただけに、開設前から大きな話題を呼んでいたが、実際どのように運営されてきたのだろうか。
今回は、再びキーマンたちを直撃し、「Microsoft Base Ritsumeikan」の現在地や今後の展望について話を伺った。
1年かけて運営基盤を構築。利用者は2,000名を突破
日本の教育機関に初めて設置された「Microsoft Base Ritsumeikan」の運営は、試行錯誤の連続だったと、運営を担当するカコムス株式会社の小原氏は振り返る。
「立命館大学さまのキーフレーズ『TRY FIELD』を体現する場所として、どのような価値を創造していくのか、学生さまや教職員の方々、企業さま、自治体さまや地域の方々など、関係者が多岐にわたるなかで、当社はスタッフが常駐し、ハブとなって邁進してきました。当初は手探りの状態でしたが、立命館大学さまやマイクロソフトさまとも密に議論を重ねながら、1年かけて運営基盤を構築できた認識です」(小原氏)
特に注力してきたのはイベントの開催だという。マイクロソフトの協力を得ながら、リアルな体験型イベントだけでなく、ハンズオンセミナーも次々に開催し、施設を利用した学生の数は累計で2,000名を超えた。朝山氏も「ようやく発信基地になれた」と同意する。
「なかには『マイクロソフトって、何をしている会社なの?※1』と疑問を持つ学生さまもいらっしゃいましたが、さまざまなセミナーに参加することでマイクロソフトさまが有する最新技術を目の当たりにすると、ファンになって何度もリピートしてくれるようになりました」(朝山氏)
※1 日本マイクロソフトについて詳細はこちら
直近では、より付加価値の高い人材の輩出を目指し、マイクロソフト公認認定資格「AZ-900」の取得を伴走支援する制度もスタートした。これらの開催を通じて「Microsoft Base Ritsumeikan」に手応えを感じているのは、マイクロソフトも同様だ。
「例えば、生成AIをテーマにしたセミナーでは『世界がどう変わるのかが具体的に知れてよかった』『このような話は聞いたことがなかった』とポジティブな感想をいただけたことが印象的でした。全国に『Microsoft Base』は27箇所※2ありますが、教育機関に設置されているのは『Microsoft Base Ritsumeikan』が唯一ですので、将来有望な学生さまとつながれること自体に大きな意義を感じています」(阪口氏)
※2 公開時点の拠点数。施設一覧はこちら
また、門戸は学生や教職員たちに対してだけ開かれているわけではない。Wi-Fi完備の「Microsoft Base Ritsumeikan」は、コワーキングスペースとして誰でも利用可能。開設から3か月ほどが経過したあたりから、地域の企業や自治体も参加できる相談会やセミナーも開催した。学生のみならず、大勢の人たちが「Microsoft Base Ritsumeikan」を活用し始めている。三宅氏は、この取り組みを支えているカコムスの運営体制について、後述のように評した。
「スタートダッシュがうまくいったと感じています。カコムスさまは大学がスピード感をもって計画を進めたり、状況に応じて変更したりできるように、手厚くサポートしてくださいました。学生や教職員の反応を逐一チェックしながら、柔軟にハンドリングしてくださった印象がございます。常駐いただいているカコムスさまには顔が見える安心感がありますし、マイクロソフトさまの最先端かつ多彩な情報やツールは信頼に足るものです。おかげで、学生や教職員、地域の方々に寄り添った運営ができています」(三宅氏)
他学部の学生同士や学生と企業・自治体など、接点のなかった出会いを日常的に創造
そんな「Microsoft Base Ritsumeikan」では、これまでに接点のなかった出会いが数々創造されている。
「まず、学部や回生、ゼミの垣根を越えた学生同士の出会いが生まれています。理系の学生と文系の学生が、互いを補い合いながら社会課題解決を目指す動きも見られるようになりました。それだけでなく、起業のアイデアを持つ学生が、マイクロソフトさまやカコムスさまなど、ビジネスの第一線で活躍する大人に気軽に相談でき、指導やアドバイスを受けられるのも『Microsoft Base Ritsumeikan』ならではの出会いと自負しています」(三宅氏)
そして、それは学内に留まらないと三宅氏は続けた。
「『Microsoft Base Ritsumeikan』ができたばかりの頃は大学生向けのイメージを持たれていたのですが、共創を掲げて地域に開放している様子が浸透していくうちに、企業や自治体の皆さまには驚きをもって受け入れられるようになりました。『DXを学びたい』という企業や自治体の方々がお越しになったり、学外の学会や協議会から『勉強会を開きたい』とのご要望を頂戴したりと、あらゆる層のプレイヤーが徐々に集まっています」(三宅氏)
「日々運営に携わる当社スタッフも、こういった光景を何度も目にしている」と、小原氏も補足する。所属の異なる学生たちが生成AIを用いたビジネスモデルについてワークセッションしたり、学生と社会人が並んで動画セミナーを受講したりするのは、もはや日常茶飯事だ。学生と学生、学生と企業や自治体の結びつきは日に日に深くなっている。「Microsoft Base Ritsumeikan」があってこその成果だが、朝山氏は立命館大学の学生の主体性や積極性が牽引している側面にも触れた。
「スタートアップに関心を寄せる学生さまも多く、積極的な自主性をすごく感じます。以前、学生団体からの発案で学生さま同士のマッチングイベントを開催しましたが、その運営はすべてお任せしました」(朝山氏)
カコムスがあえて見守るスタンスに徹したのは「Microsoft Base Ritsumeikan」開設のもとになった立命館大学のキーフレーズ「TRY FIELD」とも合致する。
「『Microsoft Base Ritsumeikan』の周りには、大阪府さまや茨木市さまなどの自治体のフロントデスクと機能する『社会共創デスク』や、学生たちが起業や社会課題解決に取り組む活動拠点『SEEDS(シーズ)』、350インチの大型LEDビジョンを備える『TERRACE GATE(テラスゲート)』があり、学生たちは複合的に活用しようとしています。マイクロソフトさまのツールをはじめ、やりたいことを具現化できる環境を整えていますが、その使い方は学生次第。自由な発想で、大いに挑戦してほしいと考えています」(三宅氏)
「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」をミッションとするマイクロソフトも、立命館大学の考え方には共鳴している。阪口氏は「『ここに来れば、何かできるかもしれない』とOIC在籍の学生さまや周辺の企業・自治体の方々を中心に周知されたので、ますます拡大させていきたい」と力を込めた。
「Microsoft Base Ritsumeikan」を起点にして「人」を巻き込む。日本の教育を変える可能性も
阪口氏の言葉を受け、三宅氏が「Microsoft Base Ritsumeikan」の展望を語ってくれた。
「『Microsoft Base Ritsumeikan』はOICにありますが、今年以降は衣笠キャンパス(KIC)やびわこ・くさつキャンパス(BKC)の学部・研究科に在籍する学生や院生にも活用してもらえるように推進していきます。そのうえで、ゆくゆくは学生や教職員と、企業・自治体との共同研究や産学連携をさらに後押していきたいと考えています」(三宅氏)
「Microsoft Base Ritsumeikan」を起点にして「人」を巻き込む。三宅氏が示したビジョンについて、宮崎氏は「日本の教育を変えるのではないか」と指摘した。
「『何歳になっても学び続ける』という姿勢が従来の教育では定着しづらく、日本ではリカレント教育が普及していません。しかし、『Microsoft Base Ritsumeikan』で学ぶ社会人たちの姿を間近に見る学生さまは『自分も学び続けよう』と触発されて、日本の教育が好循環に入っていくように思うのです。AI時代に求められる問いを立てる力や仮説を検証する力、言語化能力は大学でこそ身につきます。大学の価値が見直されようとしている今、教育の変革に向けて提言できるようになるまで発展させていきたいです」(宮崎氏)
一方で、附属や系列の小学校・中学校・高校を対象にしたセミナーを開催したところ、マイクロソフトの資格取得やAIの使い方について、児童や生徒、その保護者から問い合わせが殺到したそうだ。
三宅氏は「オール立命館で『Microsoft Base Ritsumeikan』を教育リソースに入れ込み、充実させていける余地は多分にある」と自信を覗かせた。
集う人の数が増えれば増えるほど、可能性がどんどん膨らむのは間違いないだろう。カコムスは惜しまないサポートを約束した。
「次のステップとして、企業さまや自治体さまの課題を学生さまがDXを用いて解決する継続型のプロジェクトを立ち上げたいと考えています。引き続き、共に社会をより良くしていくDX人材を育成・輩出するお手伝いをしていきたいです」(小原氏)
「まだまだネットワークを広げていく必要があります。『出張Microsoft Base Ritsumeikan』と銘打って他キャンパスを訪問する企画も検討中です。リアルな拠点がある利点を活かしつつ、オンラインも駆使しながら、人と人とをつないで立命館大学さまのビジョン実現に貢献していきます」(朝山氏)
立命館、マイクロソフト、カコムスが三位一体となり、開設1年で基盤を作ってきた「Microsoft Base Ritsumeikan」。すでに無数の出会いを創造しているが、それらはいわば“種”にほかならない。他キャンパスの学生や企業・自治体などが今後さらに集結すれば、まだ見ぬイノベーションの花を咲かせることだろう。
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