時代の要求に対応するためにオンプレミスからクラウドへ
良質な国産家具を提供するメーカーとして知られるカリモク家具株式会社。同社を中心とするカリモクグループは、1940年に愛知県刈谷市で長年続く材木屋を引き継いで創業した木工所を始まりとしている。資材調達から製造、販売までを一括体制で管理し、「ハイテク&ハイタッチ」という製造コンセプトで高度な機械技術と熟練職人の技を巧みに融合させることで、大量生産によるコスト効率向上と製品に込められた細やかな手仕事による高品質を両立させているのが特徴だ。
カリモクグループでは、リモートワークの推進に伴うグループウェアのクラウドへの移行を3年ほど前より検討しており、マルチデバイス対応やファイルサーバーの移行などが課題とされていた。なかでもメール受信容量の増加に対する既存グループウェアのサーバー運用に限界を感じていたという。
「メールボックス容量として1GBを割り当てていました。グループ全体1200アカウントの容量を設計し、人によっては申請を受けて容量を増やすという運用だったのですが、社会的にメールに添付されるデータ容量も大きくなっているなか、どれくらいサーバー容量が必要なのかという設計がだんだんできなくなってきます。それがクラウド化を考えるきっかけでした」と語るのは、グループの企画開発・マネジメントを担うカリモク皆栄株式会社の情報システム課 課長 藤原秀仁氏だ。
これまでクラウドについては、IaaSとしての活用はしていたが、デザイン関連の業務など大容量メールを扱うシーンは多く、必要となるサーバー容量は無限に増えていく……。こうした実情に対し、藤原氏ら情報システム課では、グループウェアのクラウドへの切り替えを希望し、経営層に向けた提案を繰り返してきた。
「監査時に毎年乗り換えを提案していました。効率化でアピールしたり、コストダウンを訴えたりと毎年書くことを変えているうちに、粘り勝ちのような形で乗り換えが決まりました」とカリモク皆栄株式会社 情報システム課 主任 正木省吾氏も現場で強い問題感が出る前にクラウドへの移行に踏み出せた経緯を語った。
導入の容易さとブラウザベースの活用がGoogle Workspaceの魅力
導入にあたっては比較検討を経て、導入の容易さが重視された結果、Google Workspaceが選定された。
「比較検討していたグループウェアは導入ハードルが高いと聞いていたのですが、会社のセキュリティポリシーの立案と、それに見合ったサービス設計を非常に厳格にしなければなりません。それに比べてGoogle Workspaceは明日から使えるくらい管理者設定の簡易さがあります。あまり厳しく設計してしまうと将来の引き継ぎも難しくなるので、できるだけシンプルに運用できるサービスがいいと考えました」と藤原氏。
現場からモバイル活用のニーズが高まっており、営業職を中心にiPhoneを貸与もしている状態で、モバイル対応を強化したいという意向にもGoogle Workspaceが合致した。
「Google Workspaceはブラウザベースで、どんな端末でもブラウザさえあれば使える、個別にアプリをインストールする必要がないのも魅力でした」と正木氏。
シンプルで要望に応えるシングルサインオンでサテライトオフィスを選定
Google Workspaceの導入にあたっては、導入ベンダーを複数比較。会社貸与のiPhoneとBYODを並行しているなか、認証まわりの強化が特に意識された。アクセス可能な端末を制限する機能と、認証をシンプルかつ効率的にできるシングルサインオン機能を重点的にテストする中、サテライトオフィスの「サテライトオフィス・シングルサインオン for Google Workcpace」が需要に合致すると選定された。
これに加えて、社外と機密情報を安全に送受信するために「サテライトオフィス・大容量ファイル転送 for Google Workspace」もZIPファイル禁止と合わせて活用しているという。
「既存のグループウェアにはあるけれど、Google Workspaceにはない機能を補うものとしても、サテライトオフィスのアドオンを活用しています。検索ではなく組織図からアドレスやカレンダーを確認したいという需要が高いので、サテライトオフィス・組織カレンダーとサテライトオフィス・組織アドレス帳を利用しています」とユーザーの利便性を確保するためのアドオン活用であることを正木氏は説明する。
さらに、ツール変更時に出るユーザーの不満へ対応するためのアドオン活用でもあるが、Googleの動的グループと組み合わせることでメンテナンスの負担軽減にも繋がっているという。
時間をかけた導入と浸透でツール統合と高いユーザー満足度を両立
カリモクグループでの移行期間は約6ヶ月。旧来のシステムと並行運用している期間でもあるが、設定に苦労した時間でもあるようだ。
従来からの完全移行ではなく、ワークフローと承認メールを維持しながらGoogle Workspaceへの移行を行っているため、メールルーティングの段階的な実施が求められ、移行作業が複雑になったという。
「苦労はありましたが、Gmailはカスタマイズ性が高いためユーザーにとって使いやすい環境が実現でき、満足度が向上しました。慣れたツールを使い続けたいという意見は当然出ますが、従来のシステムでは難しかった長時間会議がGoogle Meetで可能になったこ と、Google Workspaceの機能連携やセキュリティ強化といった点が、スムーズな移行を後 押ししました。全体では半年から1年の時間をかけて浸透をはかりましたが、ツールによって契約更新時にスパッとやめる、必要なアカウントを少数だけ残すなど対応しました」と藤原氏は移行時の工夫を語る。
またドキュメント管理サーバーをGoogleドライブに統合するにあたってアクセス権限の設定などは現在も最適化を続けている。Googleドライブのマイドライブからのファイル共有は社内専用に限定した上で、外部との共有に利用する共有ドライブは情報システムへの申請を必要とするなどデータ共有に一定のハードルを設けることで情報流出リスクを軽減しているという。さらにGoogleフォームを使ったアンケートやGeminiなどの生成AIサービスも、社内の個人情報保護ルールに基づいたガイドラインを作成するなど、新しいツールや技術の活用にも積極的だ。
丁寧な対応とGoogleの連携機能で業務効率化も実現
新たなガイドラインの策定、段階的な導入、ユーザー要望に応えたアドオンの追加導入に加えて、社内向けに初期設定や操作マニュアルをGoogleサイトで作成するなど丁寧な導入が行われた。その結果、十分な導入効果が得られているようだ。
「Google Workspaceは各ツールの連携がスムーズで非常に便利です。例えば、GmailからGoogleカレンダーへの予約作成が可能なだけでなく、参加者の空き状況確認や会議URLの発行、招集メール送信も一括で行えます。おかげで会議設定の時間が大幅に削減され、業務全体の効率化ができました。Gmailのフィルタリング機能も、プロモーションや通知が自動振り分けされることで重要なメールに集中でき、生産性向上につながりました」とGoogle Workspaceを評価する藤原氏。
サテライトオフィスのアドオンについても「大容量ファイル転送機能は、Gmailにボタンが直接表示されるのですぐに使い始められます。今後は生成AIの活用も考えており、サテライトAIの議事録作成や画像生成について検証しています。社内需要があれば利用を推進する予定です」と藤原氏は評価している。
手軽に導入・試用できるサテライトオフィスのアドオン群はスモールスタートに最適
カリモクグループ全体のインフラ・端末まわりについて藤原氏は戦略とマネジメントを、正木氏は運用管理を主に担当している。その双方が高く評価しているのが、サテライトオフィスのアドオンが低コストかつシンプルな導入が可能であることだ。
「はじめから高価なツールを入れても使い切れないですが、ある程度シンプルなツールを使っていくうちに足りないものが見えて、ステップアップを考える。自分たちもレベルを上げていかないと、と専用ツールを探す。その最初の選択肢としていいツールを作ってもらえていると思います。以前は何かを入れようと思うと半年から1年かけるのが当たり前でしたが、システム導入がシンプルになり、スピード感が違います」と藤原氏。
正木氏も「まず入れて、ステップアップするという使い方に最適です。社内掲示板やポータルサイト、ワークフローなどもすぐに使えそうです。まず使ってみてから、不要だった、もっと高度なものが必要だという見極めができる。基本的に安価で、やりたいことが最低限できるというのがいいですね」と手軽さとコスト感を高く評価している。
Google Workspaceを中心に据え、不足する機能はまずアドオンで補いながら必要に応じて専門ツールへのステップアップや組み合わせを模索するやり方を選択している立場からの導入アドバイスとして「現状を踏襲することにこだわりすぎると、スピード感のある移行が難しくなります。変化が続く環境においては今後も新しいサービスがどんどん登場します。クラウドサービスの特性を活かし、スモールスタートで適切なサービスを選定しながら移行を進めることで、シンプルに実行できると思います」と正木氏は語った。
Google Workspaceを中心に専門ツールの活用や統合を推進
今後の展開としては、できるだけGoogle Workspaceへの統合を進めつつ、Google Workspaceと連携しやすい専門ツールを組み合わせた形に発展させて行きたいという意向だ。
「現在もワークフローには従来のグループウェアを利用していますし、使い慣れているからと従来のツールを使い続ける方もいます。これらをGoogle Workspaceへ統合することで、将来的にはコスト削減に つながると考えていますが、今はどちらも使えないといけない状況です。また、生産現場ではクラウドではなくファイルサーバーでなければ困る仕事もありますし、SFAのようなGoogle Workspaceではまかなえない仕事もあります。専用ツールと組み合わせて生産性向上をはかる中で、その中心にGoogleを据えて考えるようになるでしょう」と藤原氏は展望を語った。
カリモクグループでは新たなアドオンの導入や生成AIの活用にも意欲的なだけに、現場の変化は続きそうだ。システム部門と現場の双方に負担がかかる状況でもある。
「いろいろなものを統合したり変更したりを続けているので、現場にしてみれば常に何かが変化しているというストレスがあるかもしれません。譲れる部分は譲り、要望に対応することで納得感のある形で進めて行きたいですね」と藤原氏。その細やかな対応にサテライトオフィスが多彩なアドオンで貢献できそうだ。