20年使った自社システムからGoogle Workspaceに転換

株式会社あらたは、日用品・化粧品において日本最大級の規模をもつ卸商社だ。産業社会・地域社会に貢献することを念頭に全国各地の有力卸売企業が結集して2002年に設立。ドラッグストアやホームセンターなどを中心に全国約4.5万店舗で扱われる約10万点のアイテムを取り扱っている。

その業務を支えるグループウェアとして、以前は自社開発したものを利用していたという同社は、2023年はじめに新たなグループウェアへの乗り換えを検討しはじめたという。

「20年ほど前に合併したうちの1社が作ったものを全社展開していたのですが、機能拡張を試みても仕様書が残っていないため対応が難しいという課題がありました。そのほか、モバイル対応もフィーチャーフォン向けの画面をスマートフォンでも見られるだけに留まっていた点、ファイルを見るにもいちいちダウンロードの手間がかかる点なども改善の余地があり、このまま使い続けていいのだろうかと考えていたのです」と語るのは株式会社あらた 執行役員 IT改革DX推進本部 本部長の山田英幸氏だ。

改善要望に応えるためには都度半年から1年の時間がかかり、金銭的にも人的にも大きなコストがかかってしまう上、現場の求める速度が出せないという状況でもあった。

「自社開発システムを使い続けることを含め、Microsoft 365やLINE WORKSとともにGoogle Workspaceなどを並べて比較検討しました。最終的には社員参加のコンペで『シンプルで使いやすい』という声が多かったことに加え、コスト面も考慮しGoogle Workspaceへの乗り換えを決めました」と山田氏。

60種のアドオンとコストの組み合わせでサテライトオフィスを選定

Google Workspace導入を決定した後には、導入ベンダーの比較検討も行われた。5社のサービスを比較した中で、特に魅力を感じたのがサテライトオフィスだったという。

「Google Workspaceでは掲示板や回覧など足りない機能があります。Googleサイトで作ることも考えましたが、当時は我々もよくわからない段階でした。そのようななかでサテライトオフィスの持つアドオンで追加できる機能群が魅力的だと感じました。60種ほどのアドオンがあり、Google Workspace本体価格と併せて考えると他社よりも安く希望機能が揃えられると考え、選定しました」と山田氏は語る。

  • 山田 英幸 氏

導入前の検証期間として半年から1年程度をかけ、さらに導入にあたっては半年かけて徐々に機能拡大が行われた。最初に利用されたのはGoogleドライブだった。

「当時、データ共有に利用するツールが、支社や拠点単位で混在している状態でした。共有時にも手間がかかっていたので、まずGoogleドライブを導入することでローカル保存データをなくし、どこからでも簡単に共有できるようにしようと考えました。以前のグループウェアではファイル閲覧のためにそれぞれがデータをダウンロードするためにネットワークの負荷も大きくなっていたため、そこも改善したかったのです」と山田氏。

さらにチャット、カレンダー、メールと各機能が展開され、併せて必要なアドオンツールも導入された。従来環境と違う使い勝手にとまどう現場に対応しながらの導入は悩みも多かったという。

「たとえばメールは処理したら削除するという癖がついている人からすると、Gmailでは削除したはずのメールが残っているように見えます。そういう細かい使い勝手の問合せに対応したり、メールとチャットと回覧の使い分けに悩んだりと、どのような運用を行っていくか、今までの文化をどのように置き換えて行くかは悩みどころでしたし、今でも課題は残っています」と山田氏は導入の苦労を語った。

アドオン活用でセキュリティ強化、細かな不足・不満も解消

株式会社あらたでは、サテライトオフィスのアドオンを積極的に活用している。その中でも、Google Workspace導入決定時から強く感じていたのがセキュリティ面の強化の必要性だという。

「従来のシステムはオンプレミスだったので、社外からはアクセスできないという安心感がありました。Google Workspaceを使うにあたってはインターネット上に公開されている環境なので不正アクセスなどが懸念点でした。そのため、クラウドに移行したとしても社外からは入れない、会社から貸与したiPhoneからだけ使える、というような制限は必要だと考えていました。このニーズに合致したのがサテライトオフィスのシングルサインオンとクライアント証明書でした」と語るのは株式会社あらた システム本部 マネージャーの佐藤学氏だ。

現在は「サテライトオフィス・シングルサインオン for Google Workspace」で社内の経費精算やドキュメント管理システムを連携させ、安全でスムーズなアクセスを実現。さらに「サテライトオフィス・クライアント証明書 for Google Workspace」を利用することで利用端末の制御も行っている。

  • 佐藤 学 氏

「社内ポータルを作りたいというのも今回の刷新にあたっての要望だったのですが、Googleサイトだと静的なコンテンツになります。ユーザーが掲示物を投稿したり、回覧物を表示したりするには不足を感じていたので、ドキュメント管理とMyポータルガジェットを活用しています」と佐藤氏は「サテライトオフィス・Myポータルガジェット for Google Workspace」と「サテライトオフィス・ドキュメント管理 for Google Workspace」の利用について語った。

「サテライトオフィス・会議室管理 ⁄ 在席管理 ⁄ エリア監視 for クラウド」も会議室の利用管理のために本社の全会議室を対象に導入され、活用されているようだ。

「以前から会議室のスケジュール管理はしていましたが、予約しているだけで使っていない状態を解消したいという要望が総務部門から出ていました。サテライトオフィスのアドオンにちょうどいいものがあったので、試行錯誤しながら導入に至りました」と佐藤氏。空予約の自動解除などで空き会議室不足の解消に一役買っているという。

さらに導入後、早い段階で必要を感じて追加されたのが「サテライトオフィス・組織&グループカレンダー for Google Workspace」と「サテライトオフィス・組織アドレス帳 for Google Workspace」だ。一旦はGoogle Workspaceのアドレス帳を利用させる形で進めたものの、現場からの問合せが相次ぎ対応することになった結果だ。

「導入を進める中で、名前検索では同姓同名もいてわからない、どうにか組織名から探せないのかと相談されました。合計1万人ほどいますから、検索だけでは扱いづらかったのです。混乱を避けるため、階層表示は必要だと判断して追加導入しました」と山田氏は導入当初の試行錯誤した様子を語った。

順次導入で社内浸透を実現、使いやすさに現場活用も拡大中

「保守的なところがあるので、グループウェアが変わるとなるとあれはどうなるんだ、これはどうするんだ、というように不安が強く出ます。まずやってみよう、とはなかなかなりません。そのため順番にツールを入れて慎重に拡大して行きました」と山田氏。利用の多いメールの乗り換えは特に時間をかけて慎重に進めるなどした結果、現場ユーザーからは好評なようだ。

「Google Workspaceの利用については現場の評判はいいですね。アドオンは一部設定が少し不便かなと思う部分はありますが、活用が進んでいます。たとえば、カレンダーについては多くの社員から使いやすいと好評でした。グラフィカルなUIでタップすればパッと表示されるのは便利ですね。ただ手軽なチャットと慣れたメール、返信が書き込める回覧の使い分けはまだ進行中です。特に営業職で回覧が非常に多く使われるなど特徴も見えていますし、使い慣れるうちに便利なやり方へ変わって行くとは思います」と山田氏は語る。

広報部門が社内報のデジタル化に利用するなど非IT部門でもGoogleサイトを業務に使いこなす例が出て来ている。従来ツールの置き換えという範囲を超えて積極的な活用を始める動きも出てくるなど、現場への浸透は進んでいる状態だ。

さらに現状ではドキュメント制作等にMicrosoft Officeが使い続けられているが、これも将来的にはGoogle Workspaceへの統合が検討されているという。

「Officeに頼り続けると二重投資になるので、Googleスプレッドシートなどを活用すべきだと思っています。他社とのやりとりはどうしてもExcelファイル等が主なので完全な統合は無理でしょうが、内勤ならば対応できるはず。社内業務ならばChrome OSとGoogle Workspaceの組み合わせでもできるのではないかと個人的には考えています。現状はまずGoogleスプレッドシート等を使ってみませんかという段階なので、今後広めるための活動をしていかなければならないですね」山田氏はこれからの取り組みについて語った。

多彩なアドオンから必要機能を自由に選択! 生成AIの活用にも意欲的

「導入時には苦労もありましたが、すべてを通して運用性・操作性が一貫していること、自動的にバージョンアップされて最新機能が自動的に利用できること、AIなどの最新機能も実装されたり無料で評価できることなど、総合的に見て導入してよかったなと感じています。アドオンの利用などで他にいろいろなものを導入する必要がないのもいいですね」と山田氏。

今後の展開としては脱PPAPを目的に「サテライトオフィス・大容量ファイル転送 for Google Workspace」の導入を検討中であり、さらなる機能拡大にも積極的だ。特に注目しているのが生成AIの進化だという。

「メールやチャット、回覧などにある情報の中から、本当に急いで見る必要があるものをわかるようにしてあげたい。できれば今日あなたの仕事はこれで、この順番ですというところまで出したいですね。これをAIで上手く処理できたらいいなと思っています。QAチャットボットやRAGについても自社でどう使えるのか研究中です」と山田氏は積極的な活用を進めている。

教育用動画を用意し年に数回見る機会を作るよう働きかけるなど、社内への普及や利用拡大に向けての取り組みにも熱心に取り組む立場から、山田氏はGoogle Workspaceの導入を検討する企業に向けたアドバイスとして「Google Workspaceはいいツールなので、利用検討はぜひお勧めします。ただしMicrosoft Officeとの使い分けや統合などいくつかのハードルがあるので、自社にとってどういう姿がいいのかしっかり考える必要があります。不足する機能はサテライトオフィスのアドオンを利用すればワンストップでやれるのがいいですね。60種もあるアドオンを自由に選択して利用できる、いい意味での大雑把さが頼もしいです」と語った。

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