働き手不足が深刻化する中、企業は業務効率の向上を迫られているが、業務部門では紙ベースの非効率な業務プロセスが課題となっている。中でも営業部門では、発注書や請求書のミス対応に追われて本来の業務に支障をきたし、経理部門では月末の請求処理の負担が増加。ミスや遅延が取引先の信頼を損ねるリスクを高めているのが実情だ。さらに、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応が不可避となる中、デジタル化の遅れは取引継続や法令遵守に重大な影響を及ぼしかねない状況である。
企業間取引、受発注業務をデジタル化する仕組みとしては、DXというキーワードが世の中に浸透するより遙か以前から、EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)が使われてきた。ただし10年以上前に導入したEDIシステムを運用し続けているという企業も多く、取引先の要求や法改正などに対応できていないケースもめずらしくないのが現状だ。老朽化したEDIシステムは、取引先の要求に応えられないがために業務部門の負担を増やし、さらにそれを保守・改修するための情報システム部門の負担も増やしている。まさに両部門に横たわる大きなボトルネックといっても過言ではない。
このため、多様なプロトコルやデータ形式、最新の法令に対応した「次世代EDI」へのリプレイスで、前述した業務部門の課題解決を図る企業は増加傾向にある。しかし、老朽化した設備を把握している構築当時のエンジニアはすでに不在の場合が多い。そのため、ブラックボックス化したEDIシステムの刷新は極めて困難なミッションで、情シス部門のリソースが足りず、対応が後手にまわってしまうケースも多い。
本稿では、受発注業務のデジタル化という業務部門の課題と、老朽化したEDIシステムのリプレイスという情シス部門の課題を抱えるA社が、EDIアウトソーシングサービスの採用により解決を図った事例を紹介する。情シス部門の運用負荷を増やすことなく、業務部門が抱える取引先ごとの多様な要望に応える。従来の非効率な業務プロセスから解放される次世代EDIを効率的かつセキュアに運用するための最適解とはどんなものだろうか 。
業務部門・情報システム部門で顕在化した業務課題
解決のアプローチとして老朽化したEDIのリプレイスを検討
新規事業の開拓や既存ビジネスの拡大を図るため、全社的なDXを推進しているA社。さまざまな業務システムやアプリケーション、クラウドサービスを積極的に活用し、デジタル化によるビジネスモデルの変革を目指している。その最中で、企業間取引のデジタル化を担うEDIシステムの老朽化が業務効率化を阻む課題となっていた。10年以上前に構築したEDI設備を扱えるエンジニアはもはや社内に在籍しておらず、多様化を続ける取引先との接続方式やフォーマット要件に対応できないといった課題が顕在化。運用やメンテナンスにかかるリソースやコストも増大しており、他の領域でのDX推進に注力してきた情シス部門にとって大きな負担となっていた。
一方、事業の拡大にともない新規顧客との取引が増加していた業務部門は、取引先ごとに異なるフォーマット・伝送方式への対応に追われていた。従来のEDIシステムで対応しきれない事象が生じた際には、データの手入力や手作業による請求書発行作業が発生。既存の業務プロセスに限界を感じている状態だ。イレギュラーな対応により、チェック作業で営業部門や経理部門の負荷も増大。入力ミスも頻発し、差戻し対応などに追われて本来の業務に注力できない担当者も少なくなかったという。特に取引先ごとが指定するフォーマットに合わせる作業や、取引先によっては発生する紙の請求書を印刷・封入・投函する作業は大きなストレスとなっており、請求書発行業務をシステム化し、業務効率を改善したいという声が高まっていた。
このような業務部門の課題を解決するためのアプローチとしても、老朽化したEDIのリプレイスは有効な一手となる。ところがA社の情シス部門は、前述したとおりリソース不足、かつスキル不足(既存EDIの知見を有する担当者の不在)。新たなEDIシステムの構築は難易度が高く、既存EDIの保守にすら手が回らない状況のなか、最新技術への対応やセキュリティ強化、法令対応、BCP対策などEDIに求められる多様な要件を定義することは困難だ。さらに老朽化しているとはいえ、稼働中のEDIを一から構築するのはコスト面の負担も大きく、経営層を納得させる費用対効果が提示できず、予算を確保できない状況が続いていたという。
次世代EDIシステムへのリプレイスという難易度の高いミッションに 導入・運用をトータルで支援するEDIアウトソーシングサービスを採用
こうした状況のなか、自社でEDIシステムを構築するのではなく、アウトソーシングでEDIを利用するというアプローチに着目したA社は、複数のEDIアウトソーシングサービスを比較検討。最終的にオージス総研が提供するEDIアウトソーシングサービス「eCubenet(イーキューブネット) 」の導入を決定した。
導入の決め手としてまず挙げられるのが、多くの伝送フォーマットに対応していることだ。業務部門においてこれまで取引先によってはイレギュラーな対応を強いられていた点も、対応可能なフォーマットや伝送方式の範囲が拡大することで、イレギュラー対応件数が減少。相手方にEDI設備がない場合でも、デジタル化したデータを紙やFAXに変換して取引先に受け渡すなどの多様な手段があるため、スムーズなやり取りを実現した。また、それでも対応できない特殊な要件が発生した際も、情シス部門からオージス総研の担当者に相談が可能に。取引先からの要望に対して慌てる必要がなくなった。
また、次点の決め手としては、オージス総研のコンサル力も挙げられる。オージス総研は、大阪ガスのシステム開発部が前身だ。技術力やサービス自体の完成度はもちろん、導入検討時から同社の意を汲んだ適切な提案をもらえたこと、運用後も含めたワンストップのサービスであることが採用の後押しになったという。
「本質的な問いを立てる力と、必ず答えを導き出す力で、ビジネスの進化を加速する」というパーパスのもと、企業に寄り添うパートナーとして伴走型のビジネスを展開するオージス総研。A社の業務部門におけるデジタル化、いわゆるDXはEDIのリプレイスで解決できることを説明した。社内の稟議を通すところから支援を行い、予算の確保、プロジェクトの立ち上げにおいても重要な役割を果たしてくれたとA社の情シス部門は喜びを口にする。
オージス総研のEDIアウトソーシングサービスは、クラウドベースのEDIシステムであるeCubenetをベースに、導入時の移行支援からシステム構築、運用後のトラブル対応・メンテナンスまでをトータルでサポートする。EDIシステムとしては、企業間の受発注や請求などの取引に用いる多様なデータ伝送をカバーし、取引先の要件に応じて最適なデータ授受手段を選択することが可能。セキュリティの担保や特殊な要件や法令への対応も経験豊富なオージス総研のエンジニアに任せられるため、取引先とのやり取りを安心して行えるようになる。クラウド型のため定期的なリプレイスが不要で、常に最新機能を活用できることも見逃せないポイントだ。業務部門の効率化や情シス部門の運用負荷軽減に加え、コストの平準化も実現できるなど多くのメリットを享受できる。クラウドサービスのメリットとオージス総研のコンサルテーション力の相乗効果で実現する、安全でスムーズなEDIシステムの導入・運用は競合サービスにはない強みといえる。
プロジェクトはヒアリング→サービス提案・見積り→契約→導入準備(サービス設定)→移行・テスト→本番運用開始といった流れでスムーズに進行。各取引先との仕様調整や接続テストを含めてオージス総研のエンジニアが全面的に支援し、本番環境での最終確認を経て、約半年で既存EDIからの移行を実現している。
業務の効率化と運用・保守の負荷軽減・コスト削減を実現
取引先の要求に応えられるシステムを構築し、企業の信頼度も向上した
このような経緯で、EDIシステムのリプレイスに成功したA社。すでに業務部門、情シス部門ともに確かな導入効果が得られている。業務部門では課題であったアナログ的な作業が激減し、手入力作業を70%削減。反復作業や誤入力が減ることで、受発注にかかる処理時間を50%短縮し、業務の効率化を実現した。 eCubenet導入前は、業務部門で毎月400件以上の請求書を手作業で入力し、内容確認にも膨大な時間がかかっていた。導入後、請求書の自動取り込み機能により入力作業から解放されたという声もあがった。 請求書の封入・送付作業も不要になり、本来の業務に注力できるように。さらに取引先が要求するフォーマットや伝送方式にも柔軟に対応できるようになり、企業としての信頼度向上にもつながっているという。
情シス部門においては、設備のメンテナンスやシステムの更新といった作業が不要となり、EDIシステムの運用負荷が大幅に軽減。運用・保守のコストを削減できたという。また、伝送エラー時の原因調査や復旧といった時間と手間がかかる作業もオージス総研に任せられるようになるなど多くのメリットを享受している。その一方で、今後発生しうる法令改正によって、従来のEDIでは対応できない範囲が増えてくることも考えられるだろう。 その点は、過去オージス総研が行った電子インボイスやPeppolへの迅速な対応実績を踏まえると、不安は払拭される。まさに、「老朽化しないEDI」といっても過言ではないだろう。セキュリティや最新規格への対応もスムーズで、システム周りの改修に費やしていたリソースを、新たなビジネスの創出など本来の意味でのDXに注ぎ込めるようになった。
本プロジェクトの成功を踏まえ、A社では今後もEDIシステムを軸とした業務部門・情シス部門のDXを推進していく予定だ。伴走型のパートナーとしてプロジェクトを牽引したオージス総研とも、継続的な連携を実施する。情シス部門では、データ伝送におけるトラブル対応や社内の問い合わせ対応、法令改正への対応などリソースがかかる作業の継続的なサポート最新技術を効果的に活用するための提案、業務部門では新規取引先の要件対応や、業務効率のさらなる向上を実現するための支援に期待を寄せている。
スモールスタートも可能なオージス総研のEDIアウトソーシングサービスが
全社的なDXの実現と、それにともなう企業競争力の向上を後押しする
全社的なDXで競争力を高めたいと考えている企業にとって、EDIシステムを効率的かつ安定的に運用するための仕組み作りは喫緊の課題といえる。業種や規模を問わず、35年以上にわたりEDIサービスを提供してきた実績を持つオージス総研。その経験とノウハウが惜しみなく投入されたEDIアウトソーシングサービスは、次世代EDIへのリプレイスにおける最適解となるはずだ。
EDIアウトソーシングサービスであれば、A社のように老朽化したEDIシステム全体を刷新しなくとも、1つの取引先から適用し、段階的にEDIの活用範囲を拡大していくスモールスタートも可能。既存EDIシステムの課題解決を図りたい、あるいはDXや業務効率化を推進するための具体的なアプローチを求めているのならば、ぜひ一度、オージス総研に相談してみてはいかがだろうか。