AIとデータの活用を強力に支援するプラットフォーム「Snowflake AIデータクラウド」を提供し、グローバル規模で企業・組織のデータドリブン体制構築を支援し続けているSnowflake。同社が展開する製品群の最新アップデートや国内のカスタマー事例を紹介する年次イベント「SNOWFLAKE WORLD TOUR TOKYO 2024」が9月11日~12日の2日間にわたり開催された。本稿では、9月12日に東京・ANAインターコンチネンタルホテルで開催されたDay1から、基調講演(KEYNOTE)の内容と、Snowflakeが実施しているデータクラウド分野におけるアワード「Data Drivers Awards 2024」表彰式の模様をレポートする。
データドリブンに取り組むカスタマー・パートナーが集結、KEYNOTE冒頭でもっとも先進的な企業・技術者を発表
グローバル約30の都市を回る「SNOWFLAKE WORLD TOUR」。待望の東京開催では、事前登録者が5,000人を超えるなど注目度は高く、満席のセッションが多数出たことで9月11日にDay0が追加開催されるなど好評を博した。
多くのカスタマー、パートナー企業も参加した本イベント。9月12日に開催されたDay1のKEYNOTEは、Snowflake合同会社 社長執行役員 東條 英俊氏の登壇で幕を開けた。
「今回のイベントでは、私たちの製品に関するアップデートや最新のテクノロジーについても紹介していきますが、国内における顧客企業への支援の詳細もお伝えしていきたいと思います」と講演を始めた東條氏は、同社が実施するアワード「Data Drivers Awards」の日本における受賞者を発表した。
Snowflakeを使って先進的な取り組みを行っている、あるいは大きなビジネス課題をSnowflakeのプラットフォームで解決したという企業・エンジニアを6つのカテゴリで表彰する本アワード。2024年の「Collaboration」カテゴリでは、三菱商事株式会社が日本とアジア・パシフィック地域で同時受賞したと東條氏は話す。
「三菱商事様は、非常に多くのグループ会社を有しておりますが、Snowflakeのデータ共有、データシェアリング機能を活用することで、グループ内でのデータ共有を推進し、データ活用の価値を創出されています」(東條氏)
続けて東條氏は、最上位のアワードである「Data Drivers of the Year」と、4つのカテゴリの受賞企業・個人を紹介した。
「データドリブンを体現する企業を表彰する『Data Drivers of the Year』は、塩野義製薬様が受賞されました。同社はデータサイエンスの分野に力を入れており、HaaS(ヘルスケア・アズ・ア・サービス)企業への転身を図っていくなかで、Snowflakeの基盤を用いてデータ利活用を加速させています。続いて、自社にデータクラウドを導入した先駆的な技術者を表彰する『Data Hero of the Year』では、トヨタ自動車の大栄 義博氏、戦略リーダーとして、データを活用したビジネス価値の創出に貢献した個人を表彰する『Data Executive of the Year』では日清食品ホールディングスのCEO 成田 敏博氏が受賞されています。さらにデータ活用を通じて社会に貢献した企業を表彰する『Data for Good』ではAgoop様、革新的なデータドリブンアプリケーションを開発した企業を表彰する『Powered by Snowflake』ではGROWTH VERSE様が受賞されています。皆様、本当におめでとうございます」(東條氏)
エンタープライズAIの実現を支援する「Snowflake AIデータクラウド」で、AI活用を阻む3つの課題を解消
Data Drivers Awardsの受賞者を発表した東條氏に続いて登壇したのは、Snowflakeの最高経営責任者(CEO)であるスリダール・ラマスワミ氏だ。
「私たちは、今まさにエンタープライズAIの時代を迎えようとしています。AIが簡単で、効率的で、そして何よりも信頼される時代、ビジネスの未来に集中し、その先を行くことができる時代です。私たちは、『Snowflake AIデータクラウド』で、この未来を実現するためのお手伝いをしていきます」(スリダール氏)
Snowflake AIデータクラウドは、2つの方法でエンタープライズAIを実現するとスリダール氏。「1つはAIを活用したデータプラットフォームであり、データ・ワークフローをインテリジェントに取り込み、管理し、最適化することができます。そしてもう1つは、従業員のデータを使って現在開発中の高度なAI製品を構築できる、データ駆動型のAIプラットフォームです」と話を続ける。
「AIはデータプラットフォームに変貌を促します。ビジネス全体のあらゆるペルソナに対してAI機能が組み込めるようになり、Copilot機能によりデータアナリストやエンジニアなど、データを扱うすべての人たちに力を与えるはずです。AIは企業のあらゆるビジネス機能を増強し、変革し、まったく新しいビジネスモデルを生み出す可能性を有しています。その実現にはAIプラットフォームが不可欠であり、それは企業データを中心に構築される必要があります。私たちSnowflakeは、その実現を支援していきます」(スリダール氏)
スリダール氏は、AI技術を用いたデータ活用を推進するには、解決しなければならない課題が3つあると語り、「複雑性への対応」「コストの制御」「セキュリティとプライバシー」の3つを挙げた。
「さまざまなソースでより多くのデータを管理するようになると複雑さが増大します。サイロ化されたデータ、サイロ化されたツールは、欲しい洞察へのアクセスを妨げ、これを解決しなければAI戦略を含むデータ活用の取り組みが遅れてしまうか、あるいは軌道に乗せることさえ難しくなります。私たちはこうした課題を解決し、お客様がもっとも重要なこと、すなわちデータを中心としたビジネス戦略の実行に集中できるようにするための支援を行っています。 また、コストの増大も大きな課題です。自社でインフラを管理するのは非常にコストがかかり、専門的な人材も必要になります。Snowflake AIデータクラウドは、お客様のすべてのワークロードのためのシングルプラットフォームです。私たちはマネージド・インフラストラクチャを提供し、大規模なオンデマンド・コンピューティングを瞬時に実現。そしてサーバーレスAIも提供します。私たちのアプローチは、お客様が爆発的なコスト増を恐れることなく、さまざまなアーキテクチャをイニシアティブに活用できることを保証します。 3つ目の課題はセキュリティとプライバシーです。プライバシーに関する規制は増え続けており、AIはセキュリティの脅威だけでなく、新たなコンプライアンス・リスクも生み出しています。私たちは設立当初からセキュリティとガバナンスを優先してきました。昨今では、Horizonの一連の機能の一部であるTrust CenterのGA(一般提供)を開始し、お客様のビジネスを保護し、潜在的な脆弱性から保護するための環境を実現しています」(スリダール氏)
最後にスリダール氏は、エンタープライズAIの実現を支援するSnowflake AIデータクラウドでビジネスを変革したいのならば、カスタマーやパートナー企業の話を聞くことが大切と語り、カスタマーによる対談セッションにバトンを渡した。
2つの対談セッションから見えてくる、データドリブンの取り組みにおいてSnowflakeが担う役割
スリダール・ラマスワミ氏の講演に続き、本KEYNOTEでは2つの対談セッションが進められた。1つ目は、CCCMKホールディングス株式会社の撫養 宏紀 氏、三井住友カード株式会社(SMCC)の白石 寛樹 氏とSnowflake 浮田 竜路氏による対談。2024年4月22日にCCCMKの展開するTポイントと、SMCCグループのVポイントが統合され、会員数1.3億人の日本最大規模のポイントサービスが誕生した事例と、そのなかでSnowflake AIデータクラウドが担った役割について話が展開された。
この取り組みでは、CCCMKとSMCCの両社が、それぞれ異なるクラウドサービスを利用しているクロスクラウド環境での基盤構築が大きなチャレンジとなった。Snowflake AIデータクラウドを活用することで、それぞれのクラウド上でセキュアな環境をスピーディに構築でき、さらに開発コスト・運用コストを従来の方式の1/10に抑えることに成功したという。両社は、顧客のベネフィットを最優先に考えながら、AIドリブン・データドリブンで新たな価値を創出していきたいと語った。
2つ目の対談セッションでは、株式会社JERA 執行役員 ICT推進統括部長の藤冨 知行 氏と、Snowflakeの松本 淳一氏が登壇した。JERAは、2050年にCO2の排出量ゼロを実現する「JERAゼロエミッション2050」の取り組みを開始。その実現に向けてDXプロジェクト「Digital Power Plant(DPP)」を立ち上げ、発電所運営に関するデータを集めてAIで分析・予測・効率化を行い、全発電所員がデータを等しく時間、空間を超えて活用できる環境を構築した。その基盤として採用されたのがSnowflakeだ。
「弊社は国内で26の発電所を稼働させていますが、DPPのおかげで、働き方が大きく変わりました。情報をリアルタイムに収集してSnowflakeで一元管理することで、発電所運営の属人化を解消。さらにEKAというAIによる支援システムも使い始めており、必要な情報が容易に得られるようになりました」(藤冨氏)
DPPの導入効果はすでに現れている。これまで年間10日程度発生していた計画外停止による損失がゼロとなり、アプリによって自動的に算出されたパラメータを制御システムに設定することで熱効率を向上。CO2を年間4.5万トン、燃料費を約1億円削減することに成功しているという。
脱炭素、CO2の削減は全企業体の共通の課題であり、その実現にはデータ活用が不可欠と藤冨氏。業界・事業者の垣根を超えてデータ活用可能な未来を実現したいと展望を口にし、Snowflakeのプラットフォームに期待していると話して対談セッションを締めくくった。
「Data Drivers Awards 2024」6つのカテゴリの受賞企業・技術者が集結した表彰式
改めて、「Data Drivers Awards」は、Snowflakeによる、データクラウド分野におけるトップクラスのアワードだ。データドリブンな取り組みにより人々の暮らしを一変させたり、新たなデータエコノミーを構築したりと、革新的かつ先駆的なテクノロジー企業や技術者を6つのカテゴリで表彰する。2023年度はREVISIO株式会社、2022年度は株式会社NTTドコモが、最上位部門のアワード「Data Driver of the Year」を受賞した。今年度の受賞企業・技術者及び授賞理由は以下の通り。