近年、政府は成長戦略の一環として「健康経営®」を提唱している。従業員の健康維持・増進に関する支出を、コストではなく投資ととらえる考え方だ。健康は業務の生産性向上に深く影響するため、多くの企業が健康経営に取り組んでいる。

これに加えて製造業界は、法令で定められた有害とされる業務に従事している労働者または特定の物質を取り扱う労働者を対象に、特別な健康診断が義務付けられている。そのため健康診断の運営に手間がかかるなど、業界特有の課題を抱えている。本記事では、健康管理システム「HM-neo」を導入し、現場の健康管理の問題を解消した製造業のケースにクローズアップした。

製造業特有の多様な健康診断にまつわる課題とは

従業員個々が持てる力を100%発揮できる環境を整え、生産性向上を実現しようというのが健康経営の目指すところだ。その前提として、従業員の病気やケガを予防、あるいは精神面の不調を予見して、健康な状態で働き続けられるようサポートしていく必要がある。

そのうえで、労働安全衛生法が定める健康診断やストレスチェックを確実に実施し、日頃の健康状態を管理することが重要になるのだ。そう考えたとき、一般的なオフィスワークと比べて従業員の健康管理が難しいとされるのが製造業である。

工場などで健康に有害な影響がある業務に従事する従業員には、一般的な健康診断に加えて労働安全衛生法で義務付けられた「特殊健康診断」を受けさせなければならない。健康に有害な影響がある業務とは、特定の薬品・化学物質などを扱ったり、粉じんが発生する場所や気圧の高い環境で作業をしたりする労働を指す。さらに、多量の高熱・低温物体を扱ったり、著しく暑熱もしくは寒冷な場所で作業を行ったり、危険をともなう業務に就く従業員は、「特定業務従事者健康診断」を受けさせる必要もある。

このように、製造業界では労働環境や作業内容に即して法令で定められた検査や、業務歴・既往歴の調査、さらに業務によっては従事しなくなった後も継続的に健康診断が必要となり、それらのデータを長期保管しなくてはいけない。従業員数が多い製造業の場合、管理はさらに煩雑になるだろう。

総務人事部門は、多種類の健康診断を抜かりなく運営するため、計画・スケジュール設定、予実管理や結果のデータ集計と保管などの業務に多くの時間を費やさざるを得ない。

その一方で、保健師や産業医といった産業保健スタッフ側にも影響が出るケースもある。保健師や産業医は、健診結果をもとに面談、保健指導、就業制限を実施しているが、業務歴や健康診断などの情報がバラバラになっていると、その管理や取りまとめに時間が割かれてしまう。これらの業務の負荷が高いと通常業務にも支障をきたしてしまい、その結果本質的な従業員の健康管理が行えていない状況に陥る企業も少なくない。

特殊健康診断対応に追われていたY社の人事部員

Y社は5,000人を超える従業員が働く製造業だ。一部の作業工程で薬品や有機溶剤を使用するため従業員によって受けるべき健康診断が異なる。

人事部の労働厚生部門で働くYさんは、従業員の健康管理業務を担当しており、計画・実施やデータの入力・集計・管理など多岐にわたる。従業員ごとの作業内容を把握し、それに即した健康診断を受けさせなければならない。Y社には特定化学物質健康診断、有機溶剤健康診断、じん肺健康診断などの特殊健康診断の対象となる作業があったのだ。

また、1人で複数の特殊健康診断対象物質を扱っている場合は、その物質に応じた健康診断を受ける必要がある。さらにこういった特殊健康診断の周期は一般健康診断のように1年に1回ではなく、半年に1回が原則となっており、そのほか雇用時や配置換えの際などに行うべきものとなっている。そのため、受診の周期も従業員ごとに管理しなければならず、それをふまえて計画を立てて、的確に実施案内をし、受診漏れがないようにする必要があるのだが……これがなかなかに大変な作業だった。

なかでも、業務歴の調査は手間のかかる作業だ。Y社の人事部では、従業員の配置・異動については把握しているものの、業務歴は各部署や事業所のシステムに登録されているため、人事データとは連携されていなかったのだ。そのため、特殊健康診断に際してはまず各従業員の業務歴を部署ごと、事業所ごとにデータをピックアップして表計算ソフトで人事データと紐付ける作業が発生していた。なにしろ5,000人以上が在籍しているため、データ量は膨大で困難を極めていた。

Yさんの本来の業務は、健康診断から得られた結果をもとに各従業員の健康状態を把握し、産業医や産業保健師のアドバイスを得て、心身の健康に問題のある従業員に対し改善に向けた施策を行うことだ。

ところが前述した健診計画業務に時間をとられ、本来時間を費やしたい健康施策の時間を確保できないのが悩みになっていた。健康診断データをじっくり見れば把握できたであろう健康問題に気づくことができず、それが直接の理由とはいえないものの、ある従業員が疾患を患い退職してしまったケースもあったため、なんとか運用を改善したいと日頃から考えていたのだ。そこでこの状況を改善するため、健康管理システムの導入を検討し始めた。

HM-neo導入による業務歴管理の効率化は大きなメリットに

Y社が選定したのが、NTTテクノクロスが提供する健康管理システム「HM-neo」である。HM-neoは特殊健康診断をふくめた健康診断全般に対応し、細かなデータ管理を実現できるのが強みである。5,000人という従業員規模のY社で、複雑な特殊健康診断の対応が求められていたなか、データを的確に扱うには、一元的に管理できるシステムが必須だった。

もともと健康管理システムは導入されていたのだが、業務歴の情報は人事システムでは管理されておらず、拠点ごとに紙やエクセルで管理されていたため、データ管理作業が煩雑になっていたのだ。

従業員の業務内容をHM-neoのシステム内で簡単に管理・登録できることで情報の管理が容易になった。また、健診計画の策定においては、システム内で特殊健康診断も含めて個々の従業員が受けるべき健康診断を、自動的に割り当てられる機能を活用した。これによって健康診断対象者の業務歴管理と健診計画に費やす時間が大幅に削減され、時間の捻出ができるようになったという。加えて、作業時間・残業時間やストレスチェック、ワクチン接種、既往歴、海外渡航歴といったあらゆる情報も一元管理できるようになったことで、健康問題の早期発見が可能となり、保健指導の質も向上させることができた。

また、しばしば改正される健康診断にまつわる法令をシステムでキャッチアップが可能だ。法令順守を徹底できるようになったことで、健康管理を運営する立場として安心感が得られたという。

さらにHM-neoには従業員が自身の健康診断の結果などを閲覧できる機能も搭載されている。製造業の現場では、従業員がそれぞれ1台のパソコンを持っているとは限らないが、スマートフォンからシステムにアクセスできるので、手軽に情報を閲覧したり、自身のスマホからストレスチェックに回答したりといったことも可能になる。

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NTTテクノクロスには、健康管理ソリューションを30年にわたり提供してきた実績を持ち、そこで培ってきた独自のノウハウがある。このノウハウは各企業の課題解決に向けた提案や、システム導入・運用サポートにも活かされるので、効率的な健康管理業務の実現に有効であるのはもちろん、経営層が求める法令遵守への対応、さらにはその先の健康経営に向けても有意義なメリットを期待できるはずだ。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

NTTテクノクロス株式会社
総合健康管理システムHM-neo

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