アメテック傘下のクレアフォームから、より速く、より高精度に、より使いやすく進化したポータブル3Dスキャナー「HandySCAN 3D MAXシリーズ」が発売された。その進化と新機能、そして活用できる現場について、セールスカントリーマネージャーの織田源太氏に話を伺った。
ポータブル3Dスキャナーの先駆者、クレアフォーム
アメテックはアメリカにルーツをもつ複合企業であり、電動機器、精密機器、分析機器、各種計測機器において100以上のブランドを持つ。クレアフォームは、そんなアメテックの事業部の一つとして産業用のポータブル3Dスキャナーを取り扱っている。
クレアフォームはもともと、2002年にカナダ・ケベック州のレヴィで設立された会社だ。「必要な時に必要な場所で」「飛行機に持ち込めるサイズ」「だれが操作しても高速でばらつきのない精度」を実現するポータブル3Dスキャナーの先駆者として、画期的な製品を提供してきた。
2013年にアメテック傘下となってからも、精度、携帯性、使いやすさを3本柱とした先進的な開発マインドは変わっていない。同社の3D測定技術および3Dエンジニアリングサービスは、自動車、航空宇宙、製造、重工業、発電といった産業や、研究および教育、NDT(非破壊検査)など幅広い分野で活用され、陰ながらわれわれの生活を支えている。
PCやカメラの技術革新によって、クレアフォームの3Dスキャナーはますます3次元座標測定機としての活用の幅を広げつつある。近年は、より小型の3Dスキャナーやスマートフォンを用いた3Dスキャンアプリも登場しているが、製造現場での信頼性はいまだ他社の追随を許さず、とくに自動車業界でのシェアは非常に高い。
そんなクレアフォームから、大型パーツ向けのポータブル3Dスキャナーの最新モデル「HandySCAN 3D MAXシリーズ」が発売された。その特徴について、クレアフォーム事業部のセールスカントリーマネージャー、織田源太氏に伺っていこう。
高速・高解像度を実現したHandySCAN 3D MAXシリーズ
「HandySCAN 3D MAXシリーズ」(以下、MAXシリーズ)は、大型パーツの3Dスキャニングに主眼を置いた製品だ。持ち運びが可能なサイズで、かつ小型対象物向けの3Dスキャナーと同等の精度を実現した製品だという。
「今回特にこだわったのがスピードです。その結果、より大きな対象物を三次元測定することが可能となりました」と織田氏は自信を持って述べる。
一般的に、大型対象物をスキャニングする際はデータが荒くなり、スキャンスピードが速くなればなるほどそれは顕著に表れる。だが、MAXシリーズは1~15メートルの大型対象物を想定しつつも、スキャンスピードと高解像度を両立させている。
その秘密は、38本のレーザーラインによって実現される最大225万測定値/秒の広いスキャンエリアにある。そのスキャン範囲は最大2.0×2.4メートルという広さで、総容量4.4立方メートルのスキャンが可能だ。さらに、フレックスボリューム機能により、測定距離は最小0.3メートルから最大2.5メートルまで調整が行える。これによって、近距離では高品質、遠距離では高速なスキャンが行えるというわけだ。
また、ダイナミック・リファレンス機能と容積精度の最適化機能により、ユーザーの習熟度に寄らず高精度な測定を行えることも大きな特長。データはリアルタイムキャリブレーション機能によって歪みを抑えながら測定され、VDI/VDE 2634パート3規格に基づく精度は0.075ミリ、容積精度は0.100ミリ+15マイクロメートルを実現している。
培ってきた知見を元に、新たな機能として高解像度モードも搭載された。これはスキャニングをしながら、指定部位だけ、より高解像度でデータを取得できるモードだ。
AIを活用したトラッキング機能の強化
MAXシリーズは使い勝手の面でも進化を遂げている。なかでも注目したいのが、スキャンエリア拡大とAIを活用したトラッキング機能の強化だ。例えば、これまで参照点(トラッキングポイント)が10点必要だったものが、4点で済むようになっている。ユーザーからすると事前準備や事後処理の作業が4分の3減ることになるため、現場においては大きな変化と言える。
「例えば自動車メーカーさんでは内装のスキャニングに活用できると思います。内装は細かく参照点を設けなければならず、それでも上手くスキャンできない場合があるため、これまでは参照点を必要としないモデルと併用してDataが取得されていました。しかしMAXシリーズを導入することで、より少ない参照点で広い範囲を高精度にスキャンできます」(織田氏)
また、AIを使ったトラッキング機能のわかりやすい使い方としてクリッピング機能がある。これはクリップカードと呼ばれる参照点を対象物の周囲に置くことで、スキャン範囲を指定するもの。例えばクリップカードを3枚使用すると面と認識して、その面から下のデータはスキャンしない。4枚使用すると立方体と認識して、その外のデータはスキャンしないといった設定が行える。
ツールではなく“進化した目”として使って欲しい
MAXシリーズの使い方としてクレアフォームが想定しているのは、主にリバースエンジニアリングによるCAD化と、CADから製造した製品の品質管理だ。また、製品に触れずとも造形物の質感を捉えメッシュ化できることから、資産の保全という使い方も考えられる。
クレアフォームは今後、AIを使ってこのような用途における自動化を進めていくことを検討しているという。
「現在、リバースエンジニアリングにおいては対象物をスキャンし、その3Dデータを人の手でCAD用のソフト化しています。これをスキャンした時点でCAD化できるようにすることを最終的には目指しています。また、品質管理においては属人化を解消したいと思っています。例えば、参照点を貼る場所はスキャナーを扱う人の技術と経験によって成り立っていますね。それをソフトウェア側から“ここに貼ってください”と提示するなど、だれもが簡単に扱えるようにしたいと考えています」(織田氏)
現在、日本のユーザーは製造業が中心だが、MAXシリーズの用途は多種多様だ。例えば、さまざまな形状、連続する形状の細かいパッチの傾きをすぐに算出して視覚化することができるため、インフラ系の表面検査にも使えるだろう。実際、海外ではパイプラインの修繕・管理などにも活用されているという。
「MAXシリーズは3Dスキャナーというツールですが、ツールというイメージに捕われず、“進化した目”としてご活用いただきたいと思っています。『どんな形状になってるんだろう』『ねじれや歪みはないだろうか』『想定した流線型のデザインは正しく出せているだろうか』…。業種によらず、3次元的な把握をしたいというニーズのある企業様には、ぜひ一度使っていただきたいと思っています」
なお、新製品の発表と合わせてサポート体制の強化も行われる予定だ。クレアフォームではリペアセンターとテクニカルサポートセンターを千葉県成田市に構えており、一部を除いてカナダに製品を運ばずとも修理が行えるという。これは日本企業への支援を非常に重視していることの現れであり、今後はさらにその姿勢を強めていくという。
3Dスキャナーが活躍する現場は、これからますます増えていくはずだ。製品に興味を持った方は、ぜひ一度クレアフォームにデモを依頼してみてほしい。
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