企業がパブリッククラウドサービスを利用することのメリットとは何か。それは簡単・迅速に導入できること、膨大なサイズのデータを預けられ、どこからでもアクセスできること、そして煩雑な保守・メンテナンスを必要としないことなど様々だ。ところが最近、これらメリットに陰りを落とす動きが出てきた。この動きとは果たして何なのか。

本稿では、その詳細とデメリットの回避策を、データ保護の分野でグローバルに製品・サービスを提供しているSynology Inc.の日本支社、Synology Japan株式会社 代表取締役社長のMike Chen氏に聞いた。

  • (写真)Mike Chen氏

    Synology Japan株式会社 代表取締役社長 Mike Chen氏

G7広島サミットにも採用され、高いパフォーマンスを発揮

2000年に設立されたSynology Inc.は、現在、日本支社であるSynology Japanを含め、世界に6拠点を持つグローバル企業だ。主力製品であるNAS(Network Attached Storage)をはじめ、HDD、SSD、監視カメラなど、様々な製品・サービスを通して企業の「データ保護」を支援している。

2023年のG7 広島サミットでは、各国メディアの活動拠点となる国際メディアセンターで、Synology NASがメインの配信サーバーとして選ばれた。「収録しながら編集した映像も配信したい」という追っかけ編集などの要件もあり、I/Oインテンシブなワークロードにも対応できるラックマント型オールフラッシュのSynology FS6400が採用された。国の威信をかけた非常に重要なイベントで、遅延やコマ落ちなどが許されず、高水準のパフォーマンスと信頼性が求められるプロジェクトであったが、同製品は最後まで一度もコマ落ちすることなく、期待通りのパフォーマンスを発揮した。このように、国際的なサミットの成功に貢献したというエピソードからも、同社製品の品質の高さが伺える。

  • (写真)G7広島サミット

容量無制限を撤廃するパブリッククラウドサービス

さて、冒頭で触れた「パブリッククラウドのメリットに陰りを落とす動き」とは何なのか。Chen氏はまず、現代企業のほとんどがクラウドに依存していることを説明した。

「世界的に、企業データの半数以上はクラウドに存在し、グローバル企業のほとんどがクラウドストレージを利用しているとも言われています。社員や顧客のデータ、企業の財務データ、知的財産など機密性の高いデータがクラウド上に保存されており、そのボリュームは拡大を続けています。また、IDCの調査では、クラウドストレージに対する支出は2026年までに13%増加して1,351億ドルに達するとされています(※1)

日本でも、72.2%の企業が何らかのかたちでクラウドを利用している。利用目的として多いのは「ファイル保管・データ共有」だ(※2)。膨大なサイズのデータを預けられ、どこからでもアクセスできるというクラウドのメリットを活かした利用方法だ。

※1 出典:Spending on Compute and Storage Cloud Infrastructure Continues Strong Growth as Supply Chain Delivery Improves in the Third Quarter of 2022, According to IDC(IDC Corporate)
※2 出典:「通信利用動向調査」令和4年度版(総務省)

しかし最近、大手パブリッククラウドストレージサービスのプロバイダーが、次々と容量無制限プランの撤廃を打ち出している。データボリュームが急増し続け、容量無制限のストレージを提供することが困難になっているのだ。こうした動きは今後、他のクラウドサービスでも進むと考えられ、パブリッククラウドを利用し続けようとする企業にとって暗雲になりかねない。

「すでに多くの重要なデータをクラウドに保存している企業は、ストレージ利用のために新たなコストを支払うか、別のサービスへの移行を迫られるでしょう。クラウドインフラを切り替えるには、高額な費用のほかダウンタイムや業務の中断が生じるリスクもあります」(Chen氏)

クラウドストレージを、パブリックからプライベートにする選択肢

その解決策としてChen氏は、プライベートクラウドストレージが1つの選択肢になると言う。企業内に置いたオンプレミスの専用ファイルサーバーでプライベートクラウドを構築し、ストレージとして利用するのだ。こう聞くと、「社内ネットワークでファイルサーバーを運用する」という旧来のケースとの違いが分かりにくいかもしれないが、Synologyが提供するプライベートクラウドストレージ ソリューションは、Synology NASに標準搭載されているライセンスフリーのアプリケーション「Synology Drive」を利用できるという点で、大きな違いがある。

Synology Driveとは、大手の商用パブリッククラウドサービスが提供しているのと同様の機能を網羅したソリューションで、パブリッククラウドのように、いつでもどこからでも安全にプライベートクラウドのデータにアクセスできるだけでなく、同期やバックアップ、データ暗号化などを簡単に行える機能を備えている。それだけでなくSynology NASでは、データ管理・保護、コラボレーション、監視など、企業のITに関する課題を包括的に解決するアプリケーション約120種類がライセンスフリーのパッケージとして提供されるため、円滑なデータ活用、負担の少ない保守管理が可能となる。

  • (図版)Synology Drive

    クロスプラットフォームのデータ管理と共有、チームの共同作業を実現する「Synology Drive」

またChen氏はセキュリティ対策についてもこう話す。

「オンプレミスというと、セキュリティ面での懸念をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、Synologyはセキュリティ強化を最優先事項としており、開発段階から製品の運用段階まで徹底的なセキュリティ対策を追及しています。開発段階では、米国標準技術局(NIST)が提唱するソフトウェア開発セキュリティフレームワークとサプライチェーンリスクマネジメントを実施し、製品のセキュリティを確保しています。実際にエンドユーザーのお客様が製品を運用する段階では、多要素認証、ランサムウェア対策として強力なイミュータブルスナップショットなど、高度なセキュリティ対策を提供しているため、安心して運用いただけます」(Chen氏)

  • (画像)Secure SignIn

    2要素認証やパスワードレスのログインを可能にする「Secure SignIn」

初期投資は必要となるが、このような環境をライセンスフリーで自社内に備えることで、従量課金のクラウドストレージを使い続けるのに比べ、ランニングコストを下げることができる。

またパブリッククラウドストレージでは、プロバイダーで定められた運用ルールに従わなければならないため、データ活用が制限されるケースもあるが、自社内に構築したプライベートなシステムであれば、そうした問題はない。データ活用の自由度や機密性を、自社でコントロールできるわけだ。さらに今後、パブリッククラウドサービスの仕様・プランに、さらなる変更が加えられたとしても、プライベートクラウドを採用していれば、それに振り回されることなく、ビジネスを安定的に遂行することが可能だ。

  • (写真)Mike Chen氏

「このプライベートクラウドストレージソリューションのように、当社はハードウェアとソフトウェアを一体化して提供することで、個人から大企業まで、幅広いユーザーの『データ保護』を実現することをミッションにしています。スマートフォンひとつあれば、様々なアプリケーションを利用していろいろなことができるように、当社のNAS、そして当社から提供するライセンスフリーのパッケージソフトがあれば、データ周りの業務をほとんど網羅できます。ぜひ当社製品に注目いただければと思っています」(Chen氏)

本記事を読んで、Synology製品に関心をお持ちの方は、同社が年に1度開催する「Synology Solution Day」への参加をおすすめする。当日は直接ソリューションを体験できるほか、他の参加者と情報交換ができる機会になると、Chen氏は言う。

「弊社のビジネス向けソリューションをより深く知ってもらうため、『Synology Solution Day』というイベントを大阪と東京で開催します。弊社ソリューションの柱となるストレージ、生産性、データ保護、監視について、不変ストレージやAIなどの最新の技術と一緒にセミナー形式でご紹介します。展示コーナーでは、セミナーで紹介したアプリケーションのソリューションが展示されますので、実際にその場で操作したり体験したりすることができます。また、東京会場ではペタバイト級の超大容量ストレージを構築できる大型モデル、オールフラッシュのラックマウント型モデルなども静態展示予定です」(Chen氏)

  • (画像)Synology Solution Day

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[PR]提供:Synology Japan