サーバー管理も「as a Service」の時代に

現在のビジネスは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やセキュリティリスクへの対処、効率的な運用という多様かつ困難な課題に直面している。そうしたなか、あらゆるシステムの基盤となるサーバーの利用方法も多様化しているが、これに伴いサーバー管理の複雑化という課題を抱えることとなった。

たとえば、大規模な仮想化統合基盤におけるサーバー管理においては、サーバーのリソースを効率的に管理することは困難であり、また、複数の店舗や事務所・事業所を持つ企業では、さまざまな拠点・場所にサーバーが散在しているケースも多く、サーバー管理やメンテナンスなど貴重なIT部門の負荷が増大する一方にあるのだ。

日本ヒューレット・パッカード合同会社 コアプラットフォーム事業統括 サーバー製品本部 製品部 カテゴリマネージャー 日野 創氏

日本ヒューレット・パッカード合同会社 コアプラットフォーム事業統括 サーバー製品本部 製品部 カテゴリマネージャー 日野 創氏

「このような課題を解決するのが、HPE GreenLake Edge-to-Cloudプラットフォームで提供するHPE GreenLake for Compute Ops Management(以下、Compute Ops Management)です」

そう話すのは、日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE) コアプラットフォーム事業統括 サーバー製品本部 製品部 カテゴリマネージャーの日野創氏だ。

Compute Ops Managementは、クラウドベースのサーバー管理サービスであり、多様なクラウドサービスを展開するハイブリッドクラウドプラットフォーム「HPE GreenLake Edge-to-Cloudプラットフォーム」にて提供されている。

HPEは「2022年末までに全てをサービスで提供する『Everything as a Service企業』になる」と公表し、2022年6月「as a Serviceカンパニーへの転身を完了した」と宣言している。この流れを受けて、とくにハードウェア、サーバー、ストレージ、ネットワークといった製品分野でas a Service化を強化することを目的に、新たに「HPE GreenLake Edge-to-Cloudプラットフォーム」の提供を開始している。

日野氏は、この「HPE GreenLake Edge-to-Cloudプラットフォーム」について、従来の「HPE GreenLake」との違いを次のように語る。

「従来のHPE GreenLakeでは、ハードウェアやソフトウェア、構築、保守、運用をすべてas a Serviceの従量課金で提供するフルマネージ型のサービスでした。一方、今回のHPE GreenLake Edge-to-Cloudプラットフォームではハードウェアやソフトウェアのみをas a Serviceで提供するセルフマネージド型のサービスとなります。お客様やパートナー企業の中には、構築や運用は自社で行いたい、よりシンプルな購入プロセスで導入したいといったニーズがありますので、これまで以上に様々なご要望にお答えするべく、”よりお手軽に使ってもらえるas a Service”として位置づけております」

そのなかでも、今回とくに注目したいのが、最初に挙げた「サーバー管理」の課題を解決することができる「Compute Ops Management」だ。

「Compute Ops Managementを利用することで、エッジ、SMB、データセンター外など散在するHPE ProLiant サーバーを、クラウド形式の“as a Service”としてどこからでも簡単に一元管理することが可能です。HPE ProLiant サーバーの標準機能として搭載されている HPE Integrated Lights-Out 5 (iLO 5) と、インターネットを介して直接接続するため、中継サーバーを別途用意する必要はありません。そのため、インターネットに接続できる環境があれば、国内だけでなく世界中に配置されたサーバーをクラウドから一元管理することができる点が大きな特長です」(日野氏)

  • HPE GreenLake for Compute Ops Managementの特長 説明図

このような特長から、Compute Ops Managementを導入することにより、企業は管理サーバーの導入コスト・運用コストを削減することが可能となり、また専任エンジニアがいなくても簡単に管理ができるサーバー管理環境を実現できるのだ。提供方法については、いわゆるサブスクリプションでの提供だけではなく、買い切りでの定期支払も可能であるため、企業ごとのニーズにあわせて導入方法を選択できる。

いち早く国内パートナー2社が実稼働環境で実証検証を実施

このように、サーバー管理にまつわる課題を解決する特長を備えたCompute Ops Managementだが、実際にどういった効果が期待できるのか、HPEのパートナーであるSCSKと横河レンタ・リースでは、国内での本格リリースに先立ち事前の評価検証を実施した。HPEでは、こうした評価版検証プログラムをグローバルで実施しており、各国からフィードバックを得ながらサービスの改善につなげている。

まず、SCSKでは5月末より2週間ほどの期間をかけて、千葉の検証室にサーバー1台(DL360 Gen10 Plus)を置いて検証用ネットワークに接続してCompute Ops Managementの検証を実施した。

主な検証内容は以下の通りとなっている。


  • GUIによるサーバーの情報取得 
  • ステータス、ファームウェアバージョン等
  • GUIによるサーバーの操作 電源ON/OFF他
  • 障害検知/障害復旧検知
  • ファームウェアアップデート

  • SCSKによるHPE GreenLake for Compute Ops Managementの事前検証内容
■図版引用:SCSK検証レポート/検証概要(https://www.next-up.scsk.jp/com01
引用日:2022年10月31日
SCSK株式会社 プラットフォーム事業グループ ITエンジニアリング事業本部 サーバ&ストレージ部 技術第一課 チームリーダー 事業グループ統括本部 サーバ技術部 第一課 課長 佐々木 有吾氏

SCSK株式会社 プラットフォーム事業グループ ITエンジニアリング事業本部 サーバ&ストレージ部 技術第一課 チームリーダー 事業グループ統括本部 サーバ技術部 第一課 課長 佐々木 有吾氏

SCSK プラットフォーム事業グループ ITエンジニアリング事業本部 サーバ&ストレージ部 技術第一課 チームリーダー 事業グループ統括本部 サーバ技術部 第一課 課長の佐々木有吾氏は「これからサーバー管理はどのように変化していくのか、情報をいち早く収集し、お客様に還元したいという想いから、今回の事前検証を実施させていただきました。OSを搭載する前の状態でも検証できたのは特に貴重な機会だったと思います」と振り返る。

一方の横河レンタ・リースでは、管理対象サーバーとしてHPE ProLiant DL360 Gen10を3台と1Gbpsのベストエフォート型通信回線を用いた検証環境を武蔵野 オフィスに用意し、実運用を想定した3つのシナリオに基づいて、実際にCompute Ops Managementの操作を行った。

主な検証内容は以下の通りとなっている。


  • サーバーの管理やメンテナンスに対してどのように活用できるのか
  • 既存のサーバー管理ソリューションであるHPE OneView とはどう違うのか
  • ファームウェアのアップデートがどれぐらい早くなったのか

横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 システム事業本部 エンジニアリング部 担当部長 青木 利行氏

横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 システム事業本部 エンジニアリング部 担当部長 青木 利行氏

横河レンタ・リース 事業統括本部 システム事業本部 エンジニアリング部 担当部長の青木利行氏はこう語る。

「Compute Ops Managementについては弊社としても非常に興味がありましたので、事前検証のお話をいただいた際、いち早く手を挙げさせていただきました。実際にサーバーの管理やメンテナンスに対してどのように活用できるのか、既存のサーバー管理ソリューションであるHPE OneView とはどう違うのか、ファームウェアのアップデートがどれぐらい早くなったのかなど、さまざまな側面から検証を行うようにしました」

Compute Ops Managementの検証は2022年6月半ばにスタートし、対象サーバーの登録から始まり、障害が発生した際のハードウェアステータス、ファームウェア更新とシナリオに沿って進められていった。

  • 横河レンタ・リースによるHPE GreenLake for Compute Ops Managementの事前検証内容

エッジ環境のサーバーも容易に一元管理が可能だと実感

Compute Ops Managementの検証結果を受けて、佐々木氏は次のように語る。

「遠隔地に散らばった複数のサーバーを同時に管理、操作できるため、サーバー管理にスピード感をもたらすとともに、ファームウェアのアップデート等にも非常に有効だと実感できました。設定にかかった時間もわずか30分ほどだったので驚きましたね」

また、横河レンタ・リース 営業統括本部 ITS&システム営業推進本部 システム営業技術支援部の阿部裕樹氏は次のように続ける。

横河レンタ・リース株式会社 営業統括本部 ITS&システム営業推進本部 システム営業技術支援部 阿部 裕樹氏

横河レンタ・リース株式会社 営業統括本部 ITS&システム営業推進本部 システム営業技術支援部 阿部 裕樹氏

「国内そして世界中のどこであってもサーバーの設置場所は問わずに一元管理できるため、管理者の負担を大幅に軽減できると感じました。昨今ではデータセンター外のいわゆる“エッジ”に散在するサーバーが急増しており、その管理の負荷もまた増大する一方にあります。しかしCompute Ops Managementであれば、そうしたエッジ環境のサーバーもまとめてかつ容易に管理できるため、管理者はより本質的な業務へと注力することができるようになるはずです」

さらに阿部氏はその導入の容易さや操作性の高さなどを高く評価する。

「そもそも中堅・中小企業の多くは、コスト的にも人材リソース的にも管理サーバーを設置する余裕がありません。しかしCompute Ops Managementであれば、クラウドサービスであるため管理用のサーバーも必要ありませんし、各種セキュリティ基準にも準拠しているので安心して利用できることでしょう。UIについてもシンプルかつ直感的であり、特別な研修など受けなくともすぐに使えるため、とりわけ中堅・中小企業にはメリットが大きいと思います」

そうした一方で、大量のサーバー環境においてもCompute Ops Managementは大きな効果を発揮することがうかがえたという。

佐々木氏は「管理対象のサーバーには 多種多様な要素に関するタグをつけられるので、大量のサーバーを管理するケースであっても、タグで検索して対象を絞り込むなど、とても効率よく作業が行えることでしょう」と話す。

エッジコンピューティングにDR…高まるCompute Ops Managementのニーズ

今後のCompute Ops Managementのニーズについて佐々木氏は「これからエッジコンピューティングがますます盛んになっていくのは間違いありませんので、そこにCompute Ops Managementに対する大きなニーズが生まれてくると確信しています」と語る。

青木氏は「BCP対策のためのDRサイトを設置する企業も増えているので、そうしたケースでのニーズも相当なものとなると見ています」と期待を寄せる。

そして両社ともに、HPEとのパートナシップを最大限に活かしながら、Compute Ops Managementをこれから利用しようとしているすべての企業に向けて、それぞれのニーズに細かく応じたサービス&サポート展開を行っていくことを表明した。

  • 左から、横河レンタ・リース青木氏、阿部氏、SCSK佐々木氏、日本ヒューレット・パッカード日野氏

    左から、横河レンタ・リース青木氏、阿部氏、SCSK佐々木氏、日本ヒューレット・パッカード日野氏

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