三菱UFJトラストシステムは、三菱UFJ信託銀行が2022年4月に開始した、インターネットによる金銭信託の直接販売サービス「monefit(マネフィット)」を開発。サービス提供の基盤として「Salesforce Service Cloud」「Salesforce Experience Cloud」を活用し、短期間かつ低コストでのサービスリリースを実現した。「monefit」では、Salesforceのほか、「LIQUID eKYC」「Google Authenticator」といったサービスも活用。Salesforceの開発、および周辺サービスとのインテグレーションはテラスカイが担当した。

最新技術を柔軟に取り入れたシステム開発を促進

デジタル技術、社会構造の変化といった環境下で劇的な変革期のただ中にある金融業界。2020年来のコロナ禍以降は、販売戦略、顧客とのコミュニケーション戦略は、店舗窓口による「対面」だけでなく、これまで以上に、Webやスマートフォンアプリといった「デジタル」な接点を意識したものへの転換が求められている。

こうした背景のもと、三菱UFJ信託銀行は、インターネットを通じた金銭信託の直接販売サービス「monefit」の提供を、2022年4月28日より開始した。金銭信託は、銀行が顧客から預かった金銭を運用し、その収益を配当として顧客に還元する仕組みの金融商品である。「monefit」は、ネットショッピングのように、アカウントの作成でスマートフォンから金銭信託を購入することができるサービスだ。

三菱UFJトラストシステム ITイノベーション推進部 次長 太田 香里 氏

三菱UFJトラストシステム株式会社 ITイノベーション推進部 次長 太田 香里 氏

「monefit」の開発を担当したのは、システム化の企画・開発・運用等、三菱UFJ信託銀行の多様な業務をITで支える三菱UFJトラストシステムだ。同社では、monefitの開発にあたり、セールスフォース・ジャパンが提供する「Salesforce Service Cloud」および「Salesforce Experience Cloud」を活用。開発パートナーとしてテラスカイを選定し、低コストかつ短期間でのサービスリリースを実現した。

三菱UFJトラストシステムでmonefitの開発を担当したのは、2017年7月に設立された攻めのIT(いわゆる「モード2」)でDX具現化の役目を担う「ITイノベーション推進部」だ。同部で次長を務める太田香里氏は「新しい技術や、デジタル化時代にマッチした金融ビジネスのあり方を、自分たちで学びながら、作り出せるチームとなることをミッションに、社内でも若い社員を中心とするメンバーで組織されました。現状、100名ほど所属していますが、その半数ほどは入社5年目までのメンバーで構成されています」と話す。

三菱UFJトラストシステム ITイノベーション推進部 川邊 将史 氏

三菱UFJトラストシステム株式会社 ITイノベーション推進部 川邊 将史 氏

今回、monefitのプロジェクトを主導したのは、入社9年目の川邊将史氏。ITイノベーション推進部の中では、中堅メンバーとして若手を率いながら活躍する1人だ。川邊氏は、入社後の3年間、本店や全国の支店で使われるリテール系業務システムの開発に携わった。ITイノベーション推進部の設立以降は、同部で資産形成オンラインサービスや、「Dprime」と呼ばれる情報銀行サービスの開発などを手がけてきた。

川邊氏は同部への配属についてこう話す。

「部の多くのメンバーに共通することですが、私自身もなるべく最新の技術に対するアンテナを高くし、それらをどのように活用すれば、新ビジネスやサービスの企画、既存ビジネスの付加価値向上につながるかということを、常に考えるようにしています。新しいやり方は、自分たちで学び、実践しながら身につけていくしかありません。ITイノベーション推進部は、そうした文化を社内に根付かせていく役割も担っています」

「低コスト」で「迅速」な開発を目指しSalesforceを活用

monefitの開発にあたり、三菱UFJトラストシステムが期待されたのは、可能な限り「低コスト」で、かつ「迅速」に、サービス提供を実現することだったと川邊氏は言う。

「当初は、これまでの金融業界の慣習にならい、システムを全て自前で作るという選択肢もありましたが、開発にかかるコストと期間は膨大になり、monefitのビジネス戦略に合わなくなることが明白でした。そこで今回は、サービスの申込受付、本人確認、多要素認証といったプロセスに関わる多くの技術要素について、既存のサービスを活用することで、ビジネスニーズに合ったシステムを実現する方針を決定しました」(川邊氏)

monefitでは、情報管理の基盤として「Salesforce Service Cloud」、顧客がアクセスするフロントエンドに「Salesforce Experience Cloud」、ユーザー認証に「Google Authenticator」、そして申し込み時の本人確認にLIQID社の「LIQUID eKYC」が、それぞれ採用されている。

  • システム図 イメージ

Salesforce上の開発と、周辺サービスのインテグレーションに関しては、テラスカイを開発パートナーとして選択した。三菱UFJフィナンシャル・グループは、Salesforceが日本でサービスを開始した初期からの大規模ユーザーとして知られる。monefitのプロダクトオーナーである三菱UFJ信託銀行でも、事業領域ごとのSalesforce導入実績は多くあった。しかし、お客さまが直接利用する金融商品取引サービスの構築に、Salesforceを利用するのは初の試みだったという。

「Salesforce活用の取り組みの中で、三菱UFJトラストシステムとしても、これまでにテラスカイとは直接的、間接的な接点がありました。今回のmonefit開発プロジェクトにおいて、われわれが提示した要件に対し、テラスカイから出された提案は、開発期間とコストの両面で、十分に納得できるものでした。また、今回は顧客向けのサービス基盤としてSalesforceを活用し、外部サービスとも連携するなど、技術的に新しい試みがいくつかありましたが、テラスカイの提案では、その際に想定されるリスクについて、われわれだけでは見落としかねない部分まで指摘されており、安心して開発を任せることができそうだと感じました」(川邊氏)

スピード開発と金融業界に求められる品質とを両立

monefitの開発プロジェクトは、2021年5月にスタートした。最初の約4カ月で、連携サービスのPoC、要件定義、基本設計を進め、秋には実際の開発がスタートした。開発と並行して、単体テスト、統合テスト、受け入れテストが進められ、プロジェクト開始から約11カ月で完了。このうち、テラスカイによる実質の開発期間は、2~3カ月程度だったという。

課題とされていた「低コスト」かつ「迅速」なサービスインを実現するために、三菱UFJトラストシステム側が意識したポイントは「Salesforceの標準機能をできる限りそのまま利用すること」、そして「社内の基幹システムとの連携は疎結合にすること」の2点だったという。

「標準機能をそのまま利用する」点では、テラスカイのSalesforce開発におけるスキルとノウハウが、非常に役立ったと川邊氏は評価する。

「ユーザーからは細かいカスタマイズの要望が多数あったのですが、開発期間とコストの圧縮、さらには運用開始後の保守性を高めるという観点からも、できるだけSalesforceの標準機能に準じて使えるように調整を行いました。その際、テラスカイに相談すると、“こういう使い方をしたいのであれば、こういうやり方がある”という提案を、実際に動くプロトタイプを作って提示してくれたため、ユーザーに対する説得力が高く、調整もスムーズに進みました」(川邊氏)

「基幹システムとの連携を疎結合にする」というのは、開発コストと期間を圧縮するだけでなく、monefit関連のシステムと基幹システムの、どちらか一方で発生する変更やトラブルが、他方へ与える影響を最小化することを意図した方針だったという。これについては、取扱商品の拡充のようなビジネスニーズに対応していくうえで必要な機能強化を、2次開発以降のフェーズで検討していくという。

monefitの開発は当初のスケジュールに対して遅れることなく進み、2022年4月のサービスリリースを迎える。初期障害もなく、プロダクトオーナーにも高く評価された。monefitで販売された新商品の売上も、当初の目標をクリアし、グループビジネスへの貢献も十分に実現できたという。

同社では、このプロジェクトの成功要因のひとつとして、システムの要件定義に先がけ、プロダクトオーナーとの十分な議論の中でビジネス要件を明確にしてから、開発を進めたことを挙げている。ペルソナ設定、カスタマージャーニーマップ、インセプションデッキといった、近年のプロダクト開発に必須とされるツール群を用い、開発の進行中にも、常に関係者間で合意したゴールを共有できていたことが、最終的なプロダクトの満足度を高めることにつながったという。こうしたプロジェクトの進め方は、同社の品質管理部門からも、新規サービス開発のリファレンスとなる好事例として社内向けに紹介されている。

「今回のプロジェクトで、テラスカイとは1年弱ほど一緒に仕事をしましたが、スキルの専門性や、課題を事前に予測し解決する能力が際立っていると感じました。特に驚いたのは、そのスピード感です。Salesforce上でシステムを作っていくテクニックとスピードが驚くべきもので、時には、われわれ側でのテストが追いつかないこともあるほどでした。テラスカイのスピード感のある開発と、われわれの強みである金融業界で求められるシステム品質をしっかりと担保するプロセスの組み合わせがうまく噛み合ったことが、プロジェクトの成功要因だと思います」(川邊氏)

グループ企業全体での高度なSalesforce活用を推進

三菱UFJトラストシステムでは、今回の「monefit」を成功事例のひとつとして生かしつつ、三菱UFJ信託銀行およびグループ企業における、より高度なSalesforce活用を促進したいと話す。

「たとえば、これまで部署ごとに導入されてきたSalesforceを、標準のワークフロー基盤に集約することで、データを全社規模でうまく管理、活用できるような仕組み作りも検討していきたいですね」(太田氏)

Salesforce活用レベルの向上を目指すにあたり、パートナーとしてのテラスカイには大きな期待をしているという。

「テラスカイは、これまでの実績の中で、Salesforceの使いこなしにおける“ベスト”と“バッド”双方のプラクティスを多数ご存じだと思います。その知見を元に、われわれがSalesforceで実現していきたいシステムのビジョンに対して“それならこうすればできる”“それはやめたほうがよい”といった、率直なアドバイスをもらえたら嬉しいです。テラスカイには、今後も目先の案件への対応だけでなく、より長期的、将来的な視点を持って提案やアドバイスをしてくれる、良きパートナーであり続けてほしいと思っています」(川邊氏)

  • 左から三菱UFJトラストシステム ITイノベーション推進部 齊藤 慎吾氏、太田 香里氏、池ヶ谷  鮎奈氏、川邊  将史氏

    左から三菱UFJトラストシステム株式会社 ITイノベーション推進部 齊藤 慎吾氏、太田 香里氏、池ヶ谷 鮎奈氏、川邊 将史氏

※「Salesforce」「Service Cloud」「Experience Cloud」は、Salesforce.com, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です。
※「Liquid eKYC」およびLiquid eKYCのロゴは、株式会社ELEMENTSの商標または登録商標です。
※「SVF Cloud」およびSVF Cloudのロゴは、ウイングアーク1st株式会社の商標または登録商標です。
※「Google Authenticator」およびGoogle Authenticatorのロゴは、Google LLCの商標または登録商標です。
※「monefit」およびmonefitのロゴは、三菱UFJ信託銀行株式会社の商標または登録商標です。

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