DXを推進するにあたってシステムを導入したが、組織やデータ共有の壁が立ちはだかり、プロジェクトが進まない——こうした状況に心当たりはないだろうか。DXを成功させるためには、データ活用の基盤を整備するだけでなく、組織風土、人材まで含めて組織全体を変革していく必要がある。

10月28日に開催されたビジネス・フォーラム事務局×TECH+フォーラム「DX Day 2021 Oct. 探索するDX経営」では、ドーモ 取締役会長 高橋慎介氏をモデレーターに、日立物流 IT戦略本部 副本部長 兼 デジタルビジネス推進部長 佐野直人氏、西日本旅客鉄道(JR西日本) デジタルソリューション本部 担当部長 小山秀一氏が、データドリブン組織を構築しDXを進めていくための考え方について、自社の事例を紹介しながらディスカッションした。

  • 左から、ドーモ 取締役会長 高橋慎介氏、西日本旅客鉄道 デジタルソリューション本部 担当部長 小山秀一氏、日立物流 IT戦略本部 副本部長 兼 デジタルビジネス推進部長 佐野直人氏

DXの真っ只中にある日立物流とJR西日本

今回登壇した2社は、データ活用のためのプラットフォームである「Domo」を活用してデータドリブン組織の構築を進めている。Domoは、点在するデータをつなぐ機能、多様かつ大量のデータを整理・加工する機能、それらのデータをリアルタイムに可視化するダッシュボード機能、インサイトを共有して意思決定に役立てるコミュニケーション機能他、7つの機能がありそれらをワンプラットフォームで提供する。これらは組織のヒト・データ・カルチャーの変革に大きく貢献するものだ。

日立物流では、倉庫に機械を導入しスループットを最適化するデジタルツイン構想や、IoT装備による輸送の安心安全の確保・効率化などに取り組む。また、サプライチェーンのデジタル化によって取得したデータを活用し、「SCDOS」というサプライチェーン最適化ソリューションも提供している。こうしたデジタル化を進めていくうえで中核となるデータ基盤の整備をこの3年間で推進してきたという。

一方、流通・ホテル・不動産・旅行など多種多様な事業を運営するJR西日本は、2020年10月にDX推進に向けた社内横断組織となるデジタルソリューション本部を設置。顧客体験の向上、データを活用した鉄道システムの再構築、従業員体験の再構築という3点を軸に、データ利活用基盤の整備やルールづくり、人材育成に取り組んでいる。西日本エリアに在住する既存顧客との接点、およびそこから得られるデータを利活用して、リアルとデジタル両面から多種多様なサービスを提供していきたい考えだ。

DXを阻む、組織・人材・風土の壁

高橋氏の「これまでのプロジェクトで苦労した点、今後乗り越えたい点は何か」という問いかけに対して、小山氏はJR西日本の状況を踏まえながら次のように答える。

「壁は大きく分けて3つある。1つは『組織の壁』。従来は大量輸送・大量移動のサービスを軸に事業を展開してきたが、多種多様なニーズに対応するためには個々のお客様へサービスを提供する必要がある。これは、組織横断で取り組まなければならない課題。これまで縦割組織のガバナンスには注力してきたが、横の組織連携はまだ十分でないのが実情。

2つめは、『人材の壁』。社内の人材はデータ分析や活用を目的に採用されていない。一方で、社内には多様なバックボーンを持つ人材がおり、データ分析に関する外部のコンペで上位にランクインするようなメンバーもいる。こうした人材を活用し、各事業ごとにデータドリブンな施策を打っていける人を増やしていきたい。

3つめは、『風土の壁』。鉄道業界は安心安全なオペレーションが求められるため、データを活用し不確実なことを予測しながら打ち手を考えていくという風土は浸透していない。トライアンドエラーを繰り返しやすいカルチャーを根付かせる必要がある」(小山氏)

これに対し、佐野氏は「どの会社でも3つの壁があり、順風満帆には進まない」と同意したうえで、「トップダウンで思いきって既存組織を壊せない限りは、小さく始めて成功事例を広げ、データを使うことに対する好奇心や共感を抱いてもらう取り組みをボトムアップで進めていくことが重要」と助言した。

続いて、日立物流における取り組み状況について佐野氏が次のように紹介した。

「ここ3年間でデータ活用の基盤をつくってきたが、我々も決して簡単に進められているというわけではない。トライアンドエラーで小さく始めて、失敗の都度学ぶことを繰り返した。こうした取り組みは、当初あまり認知されていなかったが、データ基盤が整備され、主要倉庫のデータをDomoから確認できるようになるといった効果が現れはじめると、経営層が対外的に宣伝してくれるようになるなど喜んでくれる人が増え、全社に広げていくことができた。

これまでは、自社や既存のお客様を中心に展開してきたが、今後はお客様とよりシームレスなデータ交換をしながら、サプライチェーン全体が抱える課題までを解決できるソリューションプロパイダになっていきたい」(佐野氏)

こうした2社の状況に対し、高橋氏は「日立物流、JR西日本とも、荷主や顧客のリクエストに個々に対応していくことが大切。2社とも『個』に対応するために、データの分析が重要になってきている」とコメントした。

人材と使いやすいツールを揃え、データ活用の基盤をつくる

次に、「データドリブン経営や組織づくりに関して、どのようなポイントを抑えることが成功の鍵となるか」という高橋氏の問いかけに対しては、それぞれ次のように回答した。

「(コロナ禍で移動自粛が求められており)状況はかなり厳しいが、悲観していても仕方がない。今こそ変化を前向きに捉えて、変化対応力を磨いていく時期。変化に対応するためには、予兆を捉えるためのデータをしっかり分析することが必要となる。データを起点に打ち手を考え、将来の外部環境の変化に先取りして対応できるようになっていくことが何より重要」(小山氏)

「どの会社もDXに取り組んでおり、早く成果を出したいという思いがある一方で、なかなか進まないのが現実。特に我々の仕事は物を動かすという事業が中心にあるため、すべてがデジタルで成り立っているわけではなく、デジタル化による大きな変化はすぐには起きない。当社も3年掛けてようやくベースができたという段階で、人材育成まで含めて考えると、さらに時間が掛かることは当然。データを使ってお客様に何が提供できるのかといった意識をすべての社員が持てるようなムーブメントを会社全体に根付かせられるように、現場の教育も今後3年程度掛けて行っていく予定」(佐野氏)

2人の話を聞いた高橋氏は「1つの鍵となるのは人材。日本企業の場合、デジタルやIT化をSIerに丸投げしてきた文化がある。しかし、DXは事業責任者が主導権を取って推進していかなければならないため、人材育成は重要なテーマとなる。人材および使いやすいツールを準備することで、まずはデータ活用の基盤をつくることがDXの起点となる」とコメント。「企業変革には、データドリブン経営が重要。データの活用によって意思決定の自動化、および民主化が図られることで、企業の成長につながる」と、データドリブン経営の重要性を述べた。

今回の講演に登壇した2社が導入しているDomoについては、HPブログで関連イベント情報や導入事例、データ利活用のヒントなど、詳しい情報を見ることができる。また、30日間の無償トライアルも用意されている。顧客に寄り添うビジネスモデルへ変革していくために、Domoのプラットフォームの活用をぜひ検討してみてほしい。

[PR]提供:ドーモ