愛知県の三河港は、輸入完成自動車の取扱台数が27年日本一位という、まさに日本最大の陸揚げ拠点だ。その三河港で、総合埠頭株式会社は、自動車の陸揚げをはじめとする港湾運送事業や通関業を手掛けている。同社はかねてより課題となっていた連絡体制の整備をきっかけにビジネス版LINE「LINE WORKS」を導入し、働き方改革を推進している。
台風など自然災害時の緊急連絡・安否確認を目的にツールを模索
総合埠頭は2020年で設立50周年を迎えた。本拠を置く三河港では、国内において年間で取り扱う輸入完成自動車の半数、約17万台を陸揚げしており、同社はそのほぼ半分にあたる約8万台を扱っている。そのほか、石膏原石、飼料用トウモロコシなどを三河港に陸揚げする仕事が主要業務だ。2019年にはバイオマス燃料となるヤシガラの取り扱いもスタートした。
同社は、そういったさまざまなお客様から信頼される会社を目指す一方で、社員に対しては働きやすい環境を提供できるよう努めてきた。2017年には女性活躍推進法に基づく厚生労働大臣の認定「えるぼし(認定段階3)」を、2020年には経済産業省の健康経営優良法人認定制度に基づく健康経営優良法人2020の認定を受けており、社員のスキルアップや女性の登用、健康経営にも積極的に取り組む、認定経営優良法人であり、豊橋市の「とよはし健康宣言事業所」の最優秀賞を受賞している。
自動車についてはフォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、ベントレー、ランボルギーニという世界に名だたる5ブランドを扱う。同社の強みは各顧客専用のプライベート岸壁を用意していること。たとえばフォルクスワーゲン車については、専用岸壁で陸揚げしたあと、専用の橋“オーバーブリッジ”を通って隣接する工場まで運ばれる。 港湾での荷役など現場作業が中心となる同社において、長年課題となってきたのは災害やトラブル時における緊急連絡の仕組みを整備することだったと、現場部門でリーダー役を務める港湾部 兼 車両部 部長の服部剛氏は話す。
「港で作業を行うので、台風など自然の影響を受けますし、事故やトラブルが起こるケースもあります。現場が高潮に浸かってしまったこともありました。従来はそういった場合の緊急連絡網ができていなかったため、もしもの時に指示がうまく伝わるか不安な状態が続いていました」(服部氏)
伝言ゲームになりがちな連絡体制はスピード感に課題があり、実際にこれまでも、協力会社で休日に発生した港湾作業でのトラブルが社内で速やかに報告が上がらないことがあり、会長が協力会社から直接話を聞いて初めて事態を知ったケースがあったという。もちろん連絡手段として、作業現場では会社貸与の携帯電話が使われ、メールも導入されていた。しかし、連絡が行き届いていないケースがあったと総務経理人事のバックオフィス業務から情報システム導入まで幅広く担当する管理部 管理グループ 主任の鬼頭美美氏が続ける。
「帰宅後や非番時だと、個人の携帯電話や自宅の固定電話に連絡しなければなりませんが、プライベートにつながる電話を仕事で使うことに抵抗がある社員もいます。また、電話では記録が残らないので『言った、言わない』でもめることもありました。さらにいえば、電話だと画像の添付ができません。とはいえメールで連絡しても休日はPCを会社に置いて帰りますし、勤務中でも見ない人は見ません。読んだかどうかを確認できないので、連絡が行き届いていないケースがありました」(鬼頭氏)
公私をきっちり分けつつ、確実に連絡を取り合える方法がないか。同社ではその模索を、台風シーズン前になると毎年行っていたという。
「2017年には安否確認ツールを新規に入れ、そのツールで緊急連絡もやってみようという話になりました。ただ、緊急時にしか使わないのでは使い方に慣れないうえコストパフォーマンスも良くないのでそのツールは1年で立ち消えになり、翌年は別のツールを探しました」(鬼頭氏)
試験導入で体験した、簡単な操作と情報管理の良さ
検討を進めるなか、2018年の台風シーズンにLINE WORKSを知り、まずは管理部のメンバーでトライアル的に利用を始めた。他社製ツールとチャット機能の使い勝手を比較したところ、LINE WORKSが最も社内で好評だったうえ、会社のメールアドレスでアカウントを作れるため管理もしやすかったので、全社導入に向けまずは管理職に展開した。管理部 管理グループの髙橋香緒里氏はこの試験導入で次のように思ったという。
「何よりもLINEと操作が似ていて使い勝手が良く、ITが苦手な人にとっても“ゼロから覚える新しいツールだ”と身構えることはありませんでした。導入後の運用も簡単で、とにかく身近なものとして使えたという印象です。プライベートの連絡先に仕事の連絡が来ることに抵抗があった社員も、会社用アカウントで使えるので受け入れやすかったと話していました」(髙橋氏)
一方、社員から導入を提案されたマネジメント側ではどのように考えたのだろうか。
広浜全洋社長はこう語る。
「管理側からすると情報セキュリティが心配ですから、最初はメールのままでいいのでは、と考えました。しかし話を聞いてみると、メールはセキュリティ面で決して安心できるものではなく、受信者が読んだか読まないかもわからないので情報管理も難しいことを理解しました。LINE WORKSを実際に試してみるとセキュリティ面の安心感があり、既読・未読がわかりトラブルの連絡をスムーズに行うことができたので導入を進めました」(広浜氏)
続けて、服部氏も「港湾現場の作業員をまとめる立場として、現場の日々の情報共有も円滑になることが期待できたので、導入には前向きでした」と話す。
「現場では社員が毎日入れ替わって業務にあたるため、その日の朝礼で前日の申し送りを行っていました。LINE WORKSを使い始めてからは、オンライン上の連絡で申し送りが済んでしまうので朝礼をする必要がなくなったと同時に、昨日起きたことが当日の朝にならないとわからないというタイムラグが発生することがなくなりました」(服部氏)
利用目的のひとつでもあった安否確認について、導入初期はアンケート機能を活用していたが、人力での管理が非効率に感じたという同社。有料プランのチャットボット機能を利用すれば安否確認がさらにスムーズになることがわかったため、2019年7月、無料プランから有料プランに切り替え、全社に展開した。
コロナ禍を機に一気に浸透が広まる
こうして本格的に利用がスタート。2019年秋時点から安否確認を中心にグループの連絡ツールとして、あるいは社員旅行に関するアンケートや集合時間などの情報周知、旅行しおり共有の用途などで使われ始めていたものの、まだまだ業務連絡ではメールがメインだったと鬼頭氏は振り返る。
「管理部からの連絡はLINE WORKSを使うようにしたのですが、最初は社員が慣れていなかったので、LINE WORKSで送った同じ内容をメールでも送るようにしていました。ですからこの期間は、管理部の業務の手間は少し増えてしまっていました」(鬼頭氏)
そのような状況で2020年に入り、新型コロナウイルスが発生。緊急事態宣言が出され、同社も実施したことのなかった在宅勤務を迫られた。こうして、4~5月にかけては半数出勤・半数在宅勤務を実践することになる。
「社員の体調管理のためにLINE WORKSのアンケート機能を利用しました。毎朝、規定の時間までに熱の有無など定型項目に回答してもらう形です。また、社用メールは出勤しなければチェックできないので、必然的に出退勤の連絡もLINE WORKSで行うようになりました。これで社員も開く習慣ができたのでしょう、現在は、社内連絡ではメールを併用せず、LINE WORKSにほぼ一本化することができています」(鬼頭氏)
また、広浜社長は「全社員に対する体調管理が非常に上手くいきました」と話す。
この10月から、再び全社員が週に1回の在宅勤務を始めている。この取り組みの狙いは感染拡大防止というより、アフターコロナや大型の自然災害も見据えた働き方改革の推進だ。緊急事態宣言を経て、出社できないと仕事が止まってしまう、という状況への危機感が強まった。事務系の全社員にノートPCを配布し、リモートワークの体制を整えるとともに、カレンダー機能の活用を始めている。
「出社する人と在宅する人の間での業務引き継ぎに手間がかかっては在宅勤務も意味がありません。そこでカレンダー機能を使い、簡単な業務日報を書いてもらうことにしました」と鬼頭氏。最初はノート機能の利用を考えたが、自分たちに合う使いやすさに重点を置いてカレンダーへの入力に決めたという。
「業務日報をつけることが業務にならないように、と意識しました。時間のかかる報告書ではなく、やっていることがシンプルに共有できればよかったので、カレンダー上に記録する形をとっています。他部署のカレンダーも簡単に確認できます。誰かに業務が集中しているといった状況も可視化できるので、属人化の解消やバランスのとれた業務配置、さらには人事評価の見直しなどに活用できるのではないかと期待しています」(鬼頭氏)
働き方改革に向け、さらなる活用のフェーズへ
LINE WORKSを使う日常が定着してきた同社では、ここまでで、実際にどのような効果を感じているのだろう。現場を率いる服部氏は次のように話す。
「たとえば現場のフェンスが老朽化しており修繕が必要であるといった情報を共有するだけでも、これまでは事務所にカメラを取りに行って、現場に戻り写真を撮ってPCに取り込みメールに添付して…という無駄な時間や手間が生じていたわけです。それに比べてLINE WORKSはスマートフォンでその場で撮影・送信できるので、リアルタイムの情報共有が可能になりました」(服部氏)
管理部の髙橋氏は、事務作業の効率が上がったことを強調する。 「メールでは宛名や『お疲れさまです』『お願いします』といった堅苦しい決まり文句が必要でしたが、トーク(チャット)では用件だけを気軽に送れるようになり、スタンプでもやり取りできるので、作業が楽しくなりました。電話と違い記録に残りますから、連絡内容をあとから手軽に確認できます。健康診断など全体へのお知らせには掲示板(ホーム機能)も利用しています。読んでいないメンバーもわかるので助かります。カレンダーの活用で、会議の時間変更や参加・不参加の確認なども簡単に行えますし、開始時間直前のリマインドもアプリから自動通知が届きますので、会議を忘れている社員を呼び出すといった業務も減り、非常にラクになりました」(髙橋氏)
情報システム部門を持たずに改革を進める鬼頭氏・髙橋氏はこう話す。
「改善方法に迷っている会社は多いと思いますが、まずはチーム単位くらいから試してみたらいいと思います。LINE WORKSを使っている会社が増えて、社外の方との連絡の効率化にもつながっていったらいいなと思いますね」(鬼頭氏・髙橋氏)
また、最後に広浜社長は次のように語った。
「在宅勤務で課題となる労務管理や、社内申請書などの効率化にも活用を拡げていけるのではと考えています。使い勝手やさまざまな機能の価値は、実際に体験した者にしかわかりません。LINE WORKSをベースに活用することで、社員同士のコミュニケーションを重視しながら更なる働き方改革を進められるのでは、と思っています」(広浜氏)
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